飽和水溶液を冷やしたときや、水を蒸発させたときに結晶が出てくる現象は、理科の計算問題で頻出するテーマです。
しかし、析出量の公式だけを覚えようとすると、なぜその式になるのか分からなくなり、温度や水の量が変わる問題で混乱しやすくなります。
析出量を正確に求めるには、溶解度が水100gに溶ける物質の最大量を表す数値であることを押さえるのが出発点です。
この記事では、飽和溶液から出てくる結晶の量、計算の公式、温度変化と蒸発の違い、間違えやすい考え方までを順番に解説します。
析出量の公式と計算結果

それではまず、析出量を求める基本公式と、答えを出すための考え方について解説していきます。
析出量を求める基本公式
析出量とは、溶液に溶けていた物質のうち、温度低下や水の蒸発によって溶けきれなくなり、固体の結晶として現れた量です。
温度を下げるだけで水の量が変わらない場合、析出量は高温時に溶けていた物質の量から、低温時に溶けていられる物質の量を引いて求めます。
析出量 = 高温で溶けていた溶質の質量 − 低温で溶けていられる溶質の質量
飽和水溶液を使う問題では、高温側も低温側も溶解度から溶質の量を計算します。
溶解度が水100gあたりで示されているため、実際の水の量が100g以外なら比例計算が必要です。
このときの計算式は、溶解度に水の質量を掛けて100で割る形になります。
溶ける溶質の質量 = 溶解度 × 水の質量 ÷ 100
つまり、温度変化による析出量は、二つの温度で求めた溶質量の差です。
溶液全体の質量の差ではなく、溶質の質量の差を見ることが重要になります。
飽和溶液から析出する理由
飽和水溶液とは、ある温度で溶かせる限界まで溶質が溶けた水溶液です。
たとえば60℃で水100gに硝酸カリウムを110gまで溶かせるなら、その状態で硝酸カリウム110gを含む水溶液は60℃における飽和水溶液です。
ここから温度を下げると、多くの固体では水に溶ける量が少なくなります。
低い温度で溶けていられる限界を超えた溶質は、水溶液の中に留まれないため、結晶として分かれてきます。
この結晶として出てきた量が析出量です。
温度を下げたから物質そのものが減るわけではありません。
水に溶けた状態だった溶質の一部が、固体として見える状態に移ったと考えると理解しやすいでしょう。
公式を使う前に確認する数値
計算を始める前には、問題文から高温時の温度、低温時の温度、水の質量、各温度の溶解度を抜き出します。
次に、高温時に飽和しているかどうかを確認してください。
高温で飽和していない場合は、溶解度どおりの量が溶けているとは限りません。
実際に入っている溶質の質量をもとに、高温時の溶けている量を判断する必要があります。
| 確認項目 | 見る内容 | 計算への影響 |
|---|---|---|
| 水の質量 | 溶媒である水の重さ | 比例計算の基準になる |
| 高温時の溶解度 | 高温で水100gに溶ける最大量 | 最初に溶けている量を求める |
| 低温時の溶解度 | 低温で水100gに溶ける最大量 | 冷却後に残る量を求める |
| 飽和かどうか | 溶質が限界まで溶けているか | 高温時の溶質量の決め方が変わる |
| 水の蒸発 | 加熱中に水が減ったか | 冷却前後の水の量が変化する |
問題文にある条件を一つでも見落とすと、公式に正しい数字を入れても答えがずれてしまいます。
溶解度と飽和水溶液の関係
続いては、析出量の土台となる溶解度と飽和水溶液の関係を確認していきます。
溶解度の基準となる水100g
溶解度は、一定温度の水100gに溶ける物質の最大量をgで表した値です。
たとえば30℃で食塩の溶解度が36gなら、水100gには食塩が最大36g溶けることを意味します。
ここで注意したいのは、水100gに対する値であり、水溶液100gに対する値ではない点です。
水100gに食塩36gが溶けた飽和水溶液の全体質量は136gになります。
溶液の重さをそのまま基準にすると、溶解度の意味が変わってしまうため注意が必要です。
飽和と不飽和の違い
水溶液には、まだ溶質を溶かせる不飽和水溶液と、限界まで溶けている飽和水溶液があります。
飽和水溶液では、さらに同じ物質を入れても通常は溶けず、底に固体が残ります。
一方で不飽和水溶液では、溶解度の上限まで余裕があるため、温度を下げてもすぐに析出するとは限りません。
高温で溶質が80g溶けていても、低温で90gまで溶けるなら、冷やしても結晶は出ません。
析出が起こるかどうかは、冷却後に溶けていられる限界と、実際に溶けている量を比べて判断します。
飽和水溶液を冷やす問題では、高温時に溶けている量を高温の溶解度から求めます。
不飽和水溶液の問題では、問題文に示された実際の溶質量を優先します。
溶解度曲線の読み取り方
溶解度曲線は、横軸に温度、縦軸に溶解度を取り、温度による溶けやすさの変化を示すグラフです。
曲線上の点は飽和の状態を表し、曲線より下の位置は不飽和、曲線より上の位置はその温度では溶けきれない状態を示します。
グラフを読むときは、対象の温度から上へ進み、曲線と交わった位置の数値を読み取ります。
そして、その数値が水100gあたりの値であることを忘れずに計算へ進みます。
温度による変化が大きい物質ほど、冷却したときの析出量も大きくなる傾向があります。
曲線が急に上がる物質は、温度を上げると多く溶け、冷やすと結晶を取り出しやすい物質と考えられます。
冷却による析出量の計算手順
続いては、飽和水溶液を冷やす場合の具体的な計算手順を確認していきます。
高温時に溶けている溶質量
例として、60℃での溶解度が110g、20℃での溶解度が32gの物質を考えます。
60℃の飽和水溶液に含まれる水が200gである場合、高温時に溶けている溶質量を先に求めます。
60℃で溶けている量 = 110 × 200 ÷ 100
60℃で溶けている量 = 220g
水の量が200gなので、水100gあたりの溶解度110gを2倍にします。
この220gが、冷却前に水へ溶けている溶質の量です。
低温時に溶けていられる溶質量
次に20℃まで冷やした後、水200gに溶けたままでいられる溶質量を計算します。
冷却だけで水が蒸発しない条件なら、水の量は200gのままです。
20℃で溶けていられる量 = 32 × 200 ÷ 100
20℃で溶けていられる量 = 64g
冷却後には220gすべてを溶かしておけないため、64gを超えた部分が固体として出てきます。
冷却後に残る溶質量は、低温側の溶解度で求めるという順序が大切です。
二つの溶質量から差を求める方法
最後に、高温時に溶けていた220gから、20℃で溶けていられる64gを引きます。
析出量 = 220g − 64g
析出量 = 156g
したがって、この飽和水溶液を60℃から20℃まで冷やすと、156gの結晶が析出します。
計算を一行にまとめることもできますが、最初のうちは高温時と低温時の量を別々に書くほうが安全です。
途中式を分けると、水の量を誤って溶液の質量にしていないか、引き算の向きを逆にしていないかを確認しやすくなります。
蒸発を含む場合の計算の考え方
続いては、水の蒸発が関係する場合に、冷却だけの問題と何が異なるのかを確認していきます。
蒸発によって変わる水の量
加熱して水を蒸発させると、基本的には水だけが減り、溶質の質量は減りません。
そのため、溶解度が同じ温度でも、水が少なくなれば溶かしておける溶質量は小さくなります。
たとえばある温度で溶解度が50gなら、水100gには50g溶けますが、水80gなら最大40gまでです。
蒸発後の水の量を求めずに計算すると、析出量を大きく間違えることがあります。
蒸発前後で変化するのは水の質量であり、まずその数値を整理する必要があります。
蒸発後に飽和となる条件
不飽和水溶液を加熱して水を蒸発させると、溶液中の溶質の割合が高くなります。
やがてその温度での溶解度の限界に達すると、飽和水溶液になります。
さらに水を蒸発させれば、溶けきれない溶質が析出し始めます。
この種の問題では、蒸発後に水が何g残ったか、または何g蒸発したかが重要な条件です。
水が150gから120gへ減ったなら、蒸発した水は30gで、計算に使う水の量は120gになります。
| 変化の種類 | 水の量 | 溶質の量 | 主な判断 |
|---|---|---|---|
| 冷却のみ | 通常は変わらない | 溶液中では減り、一部が析出する | 温度ごとの溶解度差 |
| 蒸発のみ | 減少する | 全体では変わらない | 蒸発後の水の量 |
| 加熱後に冷却 | 条件により減少する | 冷却時に析出する | 冷却開始時の水の量 |
| ろ過 | ろ液では変化する場合がある | 結晶と溶液を分ける | 残った結晶の扱い |
加熱と冷却が連続する問題
加熱して飽和水溶液を作り、その後に冷やして結晶を取り出す問題では、段階ごとに条件を分けます。
加熱中に水が蒸発しないと書かれていれば、水の量は最初から最後まで同じです。
一方で蒸発がある場合は、冷却前の水の量が減っているため、その量を使って低温時の溶ける量を求めます。
加熱と冷却が続く問題では、各段階で水が何gあるかを横に書き出すと整理しやすくなります。
溶解度の値だけを追うのではなく、水の増減を確認することが正確な計算につながります。
結晶を取り出す操作では、温度低下による析出と、蒸発による濃縮が組み合わされることもあります。
設問の条件を読み、どの時点で飽和になったのかを区別しましょう。
析出量で間違えやすいポイント
続いては、析出量の問題で起こりやすい計算ミスと、正しい考え方を確認していきます。
溶液の質量を水の質量として扱う誤り
もっとも多い誤りは、飽和水溶液全体の質量を、水の質量として計算してしまうことです。
溶解度は水100gを基準とするため、溶液の質量が230gであっても、水が100gとは限りません。
たとえば溶解度が水100gに対して130gなら、飽和水溶液230gの内訳は水100gと溶質130gです。
この関係を使えば、溶液全体の質量しか与えられていない問題でも水の量を逆算できます。
溶媒の水と、溶媒に溶けた溶質を分けて考えることが基本です。
溶解度の差だけを引く誤り
高温と低温の溶解度の差がそのまま析出量になるのは、水の量が100gの場合だけです。
水が300gなら溶解度の差を3倍にし、水が50gなら半分にします。
高温時の溶解度が80g、低温時が30gなら差は50gですが、水250gでは析出量は125gになります。
水の量が100g以外であれば、差を求めた後に水の質量を掛けて100で割る方法でも計算できます。
析出量 = 高温と低温の溶解度の差 × 水の質量 ÷ 100
ただし、水が蒸発していない場合に使える式です。
析出しない可能性を見落とす誤り
低温にしたからといって、必ず結晶が出るわけではありません。
高温時に不飽和であり、実際に溶けている量が低温での溶解度以下なら析出量は0gです。
たとえば水100gに40gの溶質が溶けており、冷却後の溶解度が45gなら、そのまま溶けた状態で残ります。
問題文に飽和という言葉がないときは、最初に溶けている溶質量と溶解度を比較してください。
また、溶解度曲線で温度が下がっても値がほとんど変わらない物質では、析出量は少なくなります。
析出量は負の値にはならず、結晶が出ない場合は0gとして考えます。
析出量の公式のまとめ
析出量を求めるときは、高温で溶けていた溶質量から、低温で溶けていられる溶質量を引きます。
飽和水溶液であれば、各温度の溶解度に水の質量を掛けて100で割ることで、溶ける溶質量を求められます。
冷却だけなら水の量は変わりませんが、蒸発を伴う場合は蒸発後の水の量を使う必要があります。
特に大切なのは、溶解度が水100gあたりの値であり、溶液100gあたりの値ではない点です。
水の量、高温時の溶質量、低温時の溶質量を順番に整理すれば、複雑に見える問題も落ち着いて解けるでしょう。
公式を暗記するだけで終わらせず、なぜ結晶が析出するのかという仕組みまで理解しておくことが、応用問題への近道になります。