ビジネスメールでは、相手や自分の思考を表す場面で「考える」を使う機会が多くあります。
ただし、相手の考えを尋ねるとき、自分の判断を伝えるとき、取引先へ依頼するときでは、ふさわしい敬語表現が変わります。
「お考えです」「考えております」「検討いたします」などは似ているようで、敬意の向かう先や伝わる印象が異なります。
この記事では、「考える」の尊敬語、丁寧語、謙譲語の基本から、ビジネスメールでそのまま使える例文、状況別の言い換えまで分かりやすく紹介します。
「考える」の言い換え一覧表とシーン別の使い分け

それではまず「考える」の言い換え表現と使い分けについて解説していきます。
結論として、「考える」を敬語にする際は、誰の思考を表すのかを先に整理することが大切です。
相手の思考には「お考えになる」、自分の思考には「考えております」や「検討いたします」を用いると、自然で失礼のない文章になります。
相手の考えを表す言い換え
上司、顧客、取引先など、敬意を示す相手が何かを考えている場合は、尊敬語を選びます。
代表的な表現は「お考えになる」です。
「考えられる」も尊敬語として使えますが、可能の意味にも受け取れるため、ビジネスメールでは「お考えになる」のほうが意図を伝えやすいでしょう。
| 表現 | 主な用途 | 印象 |
|---|---|---|
| お考えになる | 相手の意見や判断を尋ねる | 標準的で丁寧 |
| ご検討なさる | 相手に判断や確認を依頼する | 改まった印象 |
| ご判断なさる | 決定権のある相手の判断を表す | 明確で事務的 |
| ご意向をお聞かせいただく | 相手の希望を確認する | 柔らかく配慮がある |
| ご見解を伺う | 専門的な意見を尋ねる | フォーマル |
| お含みおきいただく | 情報を理解してもらうよう促す | 案内や注意事項向け |
たとえば「この件についてどう考えますか」は、目上の相手には直接的に響く場合があります。
「本件につきまして、どのようにお考えでしょうか」と整えると、敬意を保ちながら意見を求められます。
相手への質問例です。
本件につきまして、どのようにお考えでしょうか。
ご多用のところ恐れ入りますが、ご意向をお聞かせいただけますと幸いです。
自分の考えを表す言い換え
自分が考える場合は、相手を高める尊敬語ではなく、丁寧語または謙譲表現を使います。
「考えております」は、現在考えていることや、一定の方針を持っていることを丁寧に伝える表現です。
一方で「検討しております」は、複数の選択肢を比較し、結論を出す前の段階に適しています。
| 表現 | 適した場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 考えております | 方針や意見を丁寧に述べる場面 | 即決の印象を与えることがある |
| 検討しております | 条件や案を比較している場面 | 回答期限を添えると親切 |
| 予定しております | 実施予定がある場面 | 未確定なら使いすぎない |
| 認識しております | 事実を理解していることを示す場面 | 意見や感想には使わない |
| 存じます | 控えめに意見を述べる場面 | 「考える」の完全な置換ではない |
| 判断いたします | 決定を行う意思を示す場面 | 権限の範囲を意識する |
自分の意見を控えめに伝えたい場合は「存じます」が役立ちます。
「この方法が適切だと考えます」よりも、「この方法が適切かと存じます」とすると、相手の意見を尊重する柔らかな印象になります。
依頼や提案で使う言い換え
相手に対応を求めるメールでは、「考えてください」をそのまま使うと、指示のように感じられることがあります。
そこで「ご検討いただけますでしょうか」「ご一考いただけますと幸いです」などへ言い換えるのが基本です。
| 元の表現 | 言い換え表現 | 適した関係性 |
|---|---|---|
| 考えてください | ご検討いただけますでしょうか | 取引先や目上の相手 |
| 考えておいてください | ご確認のうえ、ご検討いただけますと幸いです | 丁寧な依頼 |
| 考えてみてください | ご一考いただければ幸いです | 提案を控えめに伝える場面 |
| よく考えてください | ご判断の際にご参照ください | 資料や情報を添える場面 |
| 考えてもらえますか | ご検討賜れますでしょうか | 非常に改まった依頼 |
「ご一考」は、少し検討してほしいというニュアンスを持つ言葉です。
深い判断を求める案件では「ご検討」、軽い提案では「ご一考」と使い分けると、文章の温度感が整います。
「お考えください」は文法上は誤りではありませんが、相手へ考える行為を促す表現になるため、場面によっては強く響きます。
依頼のメールでは、「ご検討いただけますと幸いです」のように、相手の判断を尊重する形にすると安心です。
尊敬語と丁寧語と謙譲語の基本
続いては「考える」に関する敬語の種類を確認していきます。
敬語は、相手を高める尊敬語、自分をへりくだらせる謙譲語、言葉全体を整える丁寧語に分けて考えると理解しやすくなります。
尊敬語としての「お考えになる」
尊敬語は、行為をする相手を高めて敬意を表す言葉です。
相手が考えることについては、「お考えになる」が最も一般的です。
「部長はどのようにお考えですか」「貴社ではどのようにお考えでしょうか」のように使います。
「お考えです」は、「お考えになる」の形を簡潔にした表現として、会話でもメールでも広く使われています。
尊敬語の例です。
新しい運用方法について、皆様はどのようにお考えでしょうか。
本提案につきまして、ご検討いただけるものと存じます。
丁寧語としての「考えます」
「考えます」は、「考える」に丁寧語の「ます」を付けた形です。
自分の意見を一般的な丁寧さで伝える場合に使えます。
社内の同僚や、比較的近い関係の相手に対しては自然ですが、重要な取引先や役職者へのメールでは、やや簡素に見えることもあります。
その場合は「考えております」や「検討しております」へ言い換えると、落ち着いた印象になるでしょう。
謙譲表現としての「存じます」と「検討いたします」
「考える」そのものに対応する典型的な謙譲語は限られます。
そのため、状況に応じて「存じます」「検討いたします」「判断いたします」などを選ぶことが重要です。
「存じます」は「思う」の謙譲語に近く、自分の意見を控えめに述べたいときに適しています。
「検討いたします」は、自分側で案を吟味して対応する意思を伝える表現です。
「考えさせていただきます」は、許可を得て考える必要がある場面以外では不自然になることがあります。
単に社内で判断する意思を示すなら「検討いたします」、意見を述べるなら「存じます」を選ぶほうが自然です。
ビジネスメールにおける使い方
続いてはビジネスメールにおける使い方を確認していきます。
メールでは、敬語の正しさだけでなく、依頼、回答、保留、提案のどれに当たるかを明確にすることも欠かせません。
相手の意見を尋ねるメール
相手の考えを尋ねる際は、回答を急かしているように見えないよう、配慮の言葉を添えます。
「ご意見をお聞かせください」だけでも意味は通じますが、「差し支えない範囲で」や「ご多用のところ恐縮ですが」を加えると柔らかくなります。
件名はご提案内容に関するご意見のお願いです。
先日お送りした資料につきまして、ご確認いただけましたでしょうか。
差し支えなければ、本件についてどのようにお考えか、お聞かせいただけますと幸いです。
相手に選択を求める場合は、選択肢を示すと返答しやすくなります。
「A案とB案のいずれをご希望か、ご意向をお聞かせください」と書けば、何について考えてほしいのかが明確です。
自社の方針を伝えるメール
自社の方針を伝えるときは、確定事項なのか検討段階なのかを分けて書きます。
曖昧な段階で「実施を予定しております」と断定すると、後から変更しにくくなる可能性があります。
検討中なら「現在検討しております」、決定済みなら「実施する予定です」や「実施いたします」と使い分けましょう。
思考の段階と決定の段階を混同しないことが、信頼されるメール作成につながります。
返答を保留するメール
すぐに結論を出せないときは、単に「考えます」と返すよりも、確認事項と回答予定を添えることが大切です。
相手はいつ返事を受け取れるのか分からないと、不安を感じる場合があります。
ご提案いただき、ありがとうございます。
社内で内容を確認のうえ、慎重に検討いたします。
恐れ入りますが、来週水曜日までに改めてご連絡申し上げます。
「慎重に検討いたします」は、前向きに確認する姿勢を示せる一方で、必ず採用するという約束ではありません。
断る可能性がある案件でも使いやすい表現です。
状況別の例文と書き換え
続いては状況別の例文と書き換えを確認していきます。
同じ「考える」でも、社内連絡、顧客対応、上司への相談では適切な文面が変わります。
上司へ相談する場合
上司への相談では、自分の見解を簡潔に述べたうえで、判断を仰ぐ形が適しています。
「どうすればよいですか」と丸投げするより、自分なりの案を示すほうが主体性も伝わります。
「私はA案が適切かと存じますが、部長はどのようにお考えでしょうか」と書けば、控えめながら意見のある相談文になります。
「お考えをお聞かせください」は誤りではありませんが、「どのようにお考えでしょうか」のほうが自然に読めることもあります。
取引先へ提案する場合
取引先への提案では、相手が検討しやすい材料を先に示すことが重要です。
「ご検討ください」とだけ書くのではなく、導入による利点、費用、対応期限などを整理して伝えましょう。
たとえば「ご不明点がございましたらご説明いたしますので、ご検討いただけますと幸いです」とすれば、相手に判断を委ねる姿勢が伝わります。
依頼の前に相手の負担を減らす情報を添えることが、提案メールの印象を左右します。
社内の同僚へ連絡する場合
同僚への連絡では、過剰に堅い敬語を使う必要はありません。
ただし、依頼内容が曖昧なまま「考えておいてください」と書くと、何をいつまでに考えるのか分かりにくくなります。
「来週の会議に向けて、改善案を一つ考えてもらえますか」のように、目的と期限を具体的に書くとよいでしょう。
相手との関係によっては、「ご検討お願いします」よりも「検討をお願いします」のほうが自然なこともあります。
敬語を丁寧に整えても、依頼の目的や期限が不明確では伝わりません。
誰が、何を、いつまでに判断するのかを文章に入れると、メールの実用性が高まります。
誤用しやすい表現と注意点
続いては誤用しやすい表現と注意点を確認していきます。
敬語は丁寧にしようとするほど、二重敬語や不自然な「させていただく」が入りやすくなります。
「お考えになられる」の重なり
「お考えになる」はすでに尊敬語です。
そこへ尊敬の助動詞である「れる」を重ねた「お考えになられる」は、敬語が重なった不自然な表現になりやすいため避けましょう。
正しくは「お考えになる」または「お考えです」です。
敬意を強めたいからといって言葉を重ねすぎないことが、読みやすい文章につながります。
「考えさせていただく」の使いすぎ
「させていただく」は、相手の許可を得て行動し、そのことで自分が恩恵を受ける場合に使うのが基本です。
自社で検討するだけの場面では、相手の許可が必要とは限りません。
「検討させていただきます」よりも、「検討いたします」のほうが簡潔で自然です。
ただし、相手から明確に機会を与えられた場合には、「ご提案の機会をいただきましたので、検討させていただきます」のような使い方もできます。
「考えられる」の曖昧さ
「考えられる」は、尊敬語としてだけでなく、「可能である」「推測できる」という意味でも使われます。
「部長が考えられることです」と書くと、部長が考えるのか、考えることが可能なのか、文脈によっては分かりにくくなるでしょう。
相手の行為を明確に敬う場合は「部長がお考えになることです」と表現します。
可能性を示す場合は「そのような要因が考えられます」と書くと、意味がはっきりします。
まとめ
「考える」の敬語は、相手の思考には「お考えになる」、自分の思考には「考えております」「検討いたします」「存じます」などを使い分けることが基本です。
相手へ依頼するときは、「ご検討いただけますと幸いです」や「ご意向をお聞かせください」と表現すると、丁寧で配慮のある文章になります。
特にビジネスメールでは、敬語の形だけでなく、判断してほしい内容、回答期限、検討に必要な情報を具体的に示すことが重要です。
相手、自分、依頼の場面を見分けて言葉を選ぶことで、「考える」を含むメールは格段に自然になります。
今回の例文を参考に、相手との関係性や案件の重要度に合わせた表現を選んでみてください。