圧力の単位として見かけるmmHgとTorrは、医療機器、真空装置、気象観測、半導体製造など幅広い場面で使われています。
表記は異なるものの、数値がほぼ同じため、違いを意識しないまま扱っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、厳密な測定、換算、仕様書の確認では、mmHgとTorrの定義の違いを理解しておくことが大切です。
この記事では1TorrとmmHgの関係、Paやatmへの変換方法、用途ごとの確認ポイントまで、計算例を交えながらわかりやすく解説します。
mmHgとTorrの違いと結論

それではまずmmHgとTorrの違いと結論について解説していきます。
数値上はほぼ同じ単位
mmHgは水銀柱ミリメートルと呼ばれる圧力単位で、水銀柱を何mm押し上げる圧力かという考え方に由来します。
一方のTorrは、気圧研究で知られるトリチェリの名前に由来する単位です。
現在の国際的な定義では、1Torrは正確に101325分の1気圧として定められています。
この値をPaに直すと、1Torrは約133.322Paです。
一般的な実務では1mmHgも約133.322Paとして扱われるため、数値だけを見れば1mmHgと1Torrはほぼ同じと考えて差し支えない場面が多いでしょう。
日常的な換算では1mmHgと1Torrは同じ数値として扱えます。
ただし厳密には、mmHgは水銀柱に基づく単位、Torrは標準気圧から定義された単位という違いがあります。
定義に生じるわずかな差
歴史的なmmHgは、水銀の密度、重力加速度、温度などの条件を基準にした物理的な高さの単位でした。
水銀は温度変化で体積や密度が変わり、重力加速度も場所によってわずかに異なります。
そのため、測定条件を細かく定めずにmmHgを厳密な単位として使うと、基準の取り方による差が生じます。
Torrはこうした揺れを避けるため、標準大気圧との関係で固定された単位です。
1atmを760Torrとする定義により、真空技術や研究分野で安定した換算がしやすくなっています。
用途による表記の傾向
血圧計、眼圧計、呼吸器関連の装置では、mmHgという表記が現在も広く定着しています。
血圧が120mmHgと表示されるように、人体に関する圧力ではmmHgが理解されやすいためです。
真空ポンプ、蒸着装置、リーク試験、研究論文では、Torrが使われることがあります。
ただし真空領域ではPa、kPa、hPa、mbarも頻繁に登場するため、単位だけで圧力の大きさを判断しない姿勢が必要です。
図面、仕様書、測定記録では、単位記号を含めて数値を確認する習慣が重要になります。
1TorrとmmHgの関係
続いては1TorrとmmHgの関係を確認していきます。
標準大気圧を基準にした換算
標準大気圧は1atmであり、Paでは101325Paです。
Torrでは1atmが760Torrに相当します。
したがって、101325を760で割ると、1Torrは約133.322368Paになります。
この値は単なる近似ではなく、Torrの定義から導かれる基準値です。
1Torr = 101325Pa ÷ 760
1Torr = 約133.322368Pa
760Torr = 1atm = 101325Pa
mmHgも実務上は同じ係数でPaへ換算されることが多く、換算表では1mmHg = 133.322Paと記載されます。
小数点以下まで精密に扱う必要がなければ、TorrとmmHgを同じ倍率で計算しても大きな問題にはなりにくいでしょう。
760という数値の意味
760という数値は、標準大気圧が標準重力下で水銀柱およそ760mmを支えることに由来します。
トリチェリの実験では、水銀を満たした管を逆さにすると、管内の水銀柱が一定の高さで止まる現象が観察されました。
管上部にはほぼ真空の空間ができ、外側の大気圧が水銀を押し上げることで高さが保たれます。
この水銀柱の高さが、圧力を理解するための基本的なイメージです。
760mmHg付近が1気圧に対応すると覚えると、圧力の規模をつかみやすくなります。
水銀柱による圧力の考え方
圧力は、面積あたりに加わる力を示す量です。
水銀柱の高さが増えるほど、下側には水銀の重さによる大きな圧力が加わります。
同じ高さの液柱でも、水より密度が大きい水銀はより大きな圧力を生みます。
そのため、1気圧を水柱で表すと約10.3mですが、水銀柱では約760mmになります。
水銀は密度が高いため、比較的短い管で大気圧を測定できる利点がありました。
現在は電子式の圧力センサーが主流ですが、水銀柱という考え方は単位の背景を理解する手がかりになります。
Pa・atm・hPaへの変換方法
続いてはPa・atm・hPaへの変換方法を確認していきます。
Paへの換算式
Paはパスカルと読み、国際単位系で採用されている圧力の単位です。
1Paは1平方メートルあたりに1ニュートンの力が働く圧力を表します。
TorrまたはmmHgからPaへ変換する場合は、133.322368を掛けます。
反対にPaからTorrへ変換する場合は、133.322368で割る計算です。
TorrをPaへ変換する式
圧力Pa = 圧力Torr × 133.322368
PaをTorrへ変換する式
圧力Torr = 圧力Pa ÷ 133.322368
例えば10Torrは約1333.22Paです。
100Torrであれば約13332.24Paとなり、kPa表記では約13.332kPaになります。
計算時には途中で丸めすぎず、最終表示の桁数で四捨五入すると、誤差を抑えやすいでしょう。
atmとhPaへの換算
atmは標準大気圧を表す単位で、1atmは760Torrです。
したがってTorrをatmへ直すときは、760で割ります。
hPaはヘクトパスカルで、天気予報の気圧表示でよく使われる単位です。
1hPaは100Paなので、1Torrは約1.33322hPaに相当します。
| 単位 | 1Torrに相当する値 | 主な使用場面 |
|---|---|---|
| Pa | 約133.322Pa | 工業規格、計測機器、技術資料 |
| kPa | 約0.133322kPa | 空圧機器、配管、設備管理 |
| hPa | 約1.33322hPa | 気象、気圧の比較 |
| atm | 約0.00131579atm | 化学、物理、基準圧力 |
| mmHg | 実務上ほぼ1mmHg | 血圧、医療、真空表示 |
気象で使われる1013hPa前後の気圧は、760Torr前後に対応します。
単位をまたいで比較する際は、基準となる1atm = 101325Pa = 760Torrを覚えておくと便利です。
実務で使いやすい換算例
真空装置の表示が0.5Torrで、仕様書の基準がPaの場合を考えてみましょう。
0.5に133.322368を掛けるため、約66.7Paです。
また、圧力センサーの表示が500Paの場合、500を133.322368で割ると約3.75Torrになります。
小さな圧力ほど桁の読み違いが起きやすいため、mTorrやkPaなどの接頭語にも注意が必要です。
換算例
0.1Torr = 約13.3Pa
1Torr = 約133.3Pa
10Torr = 約1.333kPa
100Torr = 約13.33kPa
単位変換サイトや表計算ソフトを利用する場合も、入力値の単位と出力単位を必ず見直してください。
特にmbarとbar、mTorrとTorrを取り違えると、結果が10倍から1000倍ずれることがあります。
mmHgとTorrの使用場面
続いてはmmHgとTorrの使用場面を確認していきます。
医療分野におけるmmHg
mmHgは、血圧の表記として最も身近な圧力単位の一つです。
最高血圧120mmHg、最低血圧80mmHgのような表示は、多くの人が目にした経験があるでしょう。
眼圧、人工呼吸器の設定、酸素分圧、気道内圧などでも、mmHgが使われる場合があります。
医療の現場では数値の連続性と慣習が重要であり、PaよりもmmHgのほうが直感的に伝わるケースがあります。
ただし、機器ごとに単位表示が異なる可能性があるため、表示単位を確認せずに数値だけ比較しないことが必要です。
真空分野におけるTorr
Torrは真空技術でよく使われる単位です。
真空とは単純に空気がない状態ではなく、基準となる大気圧より圧力が低い状態を指します。
1Torrよりも低い圧力を扱う分野では、mTorrという表記が見られます。
1mTorrは1000分の1Torrであり、約0.133Paです。
真空ポンプ、蒸着、スパッタリング、電子顕微鏡、半導体プロセスでは、圧力の違いが製品品質や成膜状態に影響することがあります。
真空の数値は小さいほど圧力が低いことを示します。
ただし真空度という言葉は分野で表現が異なるため、Torr、Pa、mbarのどれで表示されているかを先に確認することが重要です。
化学と工業分野における単位
化学実験では蒸気圧、沸点、反応容器内の圧力などを扱います。
古い文献や海外のデータシートではTorrやmmHgが残っていることがあり、SI単位への変換が必要になることもあります。
工場設備ではPa、kPa、MPaが主流ですが、真空チャンバーや分析装置ではTorr表記が併用される場合があります。
仕様の確認では、圧力の絶対値なのか、大気圧との差であるゲージ圧なのかも大切なポイントです。
同じ100kPaでも絶対圧とゲージ圧では意味が異なるため、単位換算だけで判断しないようにしましょう。
圧力単位の換算時の注意点
続いては圧力単位の換算時の注意点を確認していきます。
絶対圧とゲージ圧の区別
絶対圧は、完全真空をゼロとした圧力です。
一方のゲージ圧は、その場所の大気圧をゼロとみなし、大気圧からどれだけ高いか低いかを示します。
大気圧付近では、絶対圧は約101.3kPaですが、ゲージ圧は0kPaです。
この違いを見落とすと、圧力計の数値をTorrやmmHgへ換算しても、目的に合わない値になるおそれがあります。
真空装置や配管設備では、abs、g、A、Gなどの記号が添えられているかを確認してください。
単位変換の前に確認したい項目
圧力が絶対圧かゲージ圧か、温度条件が指定されているか、表示桁数が測定精度に合っているかを確認します。
有効数字と丸め方
1Torrを133.322368Paとして計算しても、測定器の精度が1Pa単位であれば、小数点以下を長く表示する意味はほとんどありません。
測定値の信頼性に応じて、有効数字をそろえることが大切です。
例えば圧力計が10.0Torrと表示している場合、換算結果は1333Paまたは1.33kPa程度にまとめると読みやすくなります。
反対に校正記録、研究データ、設計計算では、途中計算に十分な桁数を残す必要があります。
最後の表示段階で丸める方法なら、計算途中の誤差の累積を抑えやすくなります。
温度と測定環境の影響
Torrは定義が固定された単位ですが、実際に圧力を測るセンサーには温度、湿度、配管の状態、設置環境などが影響します。
水銀柱に基づく古典的な測定では、水銀の温度変化や重力加速度も考慮対象でした。
現在の電子式圧力計でも、温度補償の有無、校正周期、センサーの種類によって測定結果が変わる可能性があります。
低圧域ではリーク、脱ガス、残留ガスの影響も無視できません。
換算式が正しくても元の測定値が不安定なら、得られる数値の信頼性は高まりません。
そのため、単位換算とあわせて、測定条件や校正状態を記録しておくことが望ましいでしょう。
mmHgとTorrの違いのまとめ
mmHgとTorrはどちらも圧力を表す単位であり、日常的な換算では1mmHgと1Torrをほぼ同じ数値として扱えます。
1Torrは正確に1atmの760分の1で、約133.322Paです。
mmHgは水銀柱の高さに由来する単位で、Torrは標準大気圧に基づいて定義された単位という点に違いがあります。
血圧や医療機器ではmmHg、真空技術や研究分野ではTorrが使われる傾向があります。
Pa、kPa、hPa、atmへ換算するときは、1atm = 101325Pa = 760Torrを基準にすると理解しやすいでしょう。
また、絶対圧とゲージ圧の違い、mTorrなどの接頭語、測定器の精度にも注意が必要です。
単位の背景と換算式を押さえておけば、仕様書の確認、設備管理、実験データの整理でも、圧力値をより正確に扱えるようになります。