ハイパスフィルターのカットオフ周波数とは?意味と周波数特性を解説!(遮断周波数)
ハイパスフィルターは、低い周波数の成分を弱め、高い周波数の成分を通しやすくする回路や信号処理です。
その性能を読むうえで欠かせないのが、通過する帯域と減衰する帯域の境目を表すカットオフ周波数です。
音響機器の低音カット、センサー信号のノイズ除去、通信回路の設計など、さまざまな場面で使われます。
本記事では遮断周波数の意味、周波数特性の見方、計算式、実際の設定時に注意したい点を順に解説します。
ハイパスフィルターのカットオフ周波数と基本原理

それではまずハイパスフィルターのカットオフ周波数について解説していきます。
遮断周波数の意味と通過帯域
ハイパスフィルターのカットオフ周波数とは、信号の通りやすさが基準値まで下がる境目の周波数です。
ハイパスフィルターでは、カットオフ周波数より低い成分ほど大きく減衰し、高い成分ほど出力側へ通りやすくなります。
英語では cutoff frequency と呼ばれ、日本語ではカットオフ周波数、遮断周波数、折点周波数などの表現が使われます。
ただし、遮断周波数は信号が完全にゼロになる地点ではありません。
一般的なフィルターでは、出力電力が通過帯域の半分になる周波数を基準とします。
電圧や振幅で見ると、その大きさは通過帯域の約0.707倍です。
この値はデシベル表示ではマイナス3 dBに相当します。
たとえば100 Hzをカットオフ周波数に設定した場合、100 Hzの音が消えるのではなく、基準となる高い周波数の音より小さくなるという意味です。
50 Hzはさらに弱まり、500 Hzや1 kHzは比較的そのまま通ります。
カットオフ周波数は、通す音や信号を選ぶための境界の目安として理解すると分かりやすいでしょう。
カットオフ周波数より低い側は阻止帯域です。
カットオフ周波数より高い側は通過帯域です。
カットオフ周波数そのものでは、代表的な一次フィルターでマイナス3 dBの減衰となります。
実際の減衰量はフィルターの次数によって変わるため、周波数だけでなく周波数特性の傾きも確認する必要があります。
高域通過の仕組みとコンデンサの働き
ハイパスフィルターの基本的な回路では、コンデンサと抵抗を組み合わせます。
コンデンサは周波数が高い信号ほど通しやすく、低い信号ほど通しにくい性質を持ちます。
交流に対するコンデンサの抵抗成分は容量リアクタンスと呼ばれます。
容量リアクタンスは周波数が高くなるほど小さくなります。
そのため、入力側にコンデンサを直列に置き、出力側に抵抗を接続すると、高周波成分が抵抗側へ現れやすい回路になります。
低周波ではコンデンサが信号の流れを妨げるため、出力電圧は小さくなります。
オーディオ機器で直流成分や不要な低音を減らすカップリング回路は、この考え方の身近な例です。
たとえばマイク入力に含まれる空調の振動や机を叩く音は低い周波数に偏りやすく、ハイパスフィルターで軽減できる場合があります。
一方で、低音楽器や話者の声の厚みまで削ると、音が細く不自然に感じられることもあります。
したがって、単に低い周波数を除けばよいのではなく、残したい信号の最低周波数を意識して設計することが大切です。
コンデンサの容量リアクタンスの式
Xc = 1 ÷ 2πfC
Xc は容量リアクタンスで単位はΩです。
f は周波数で単位はHzです。
C は静電容量で単位はFです。
周波数fが大きくなるとXcは小さくなり、交流信号が通りやすくなります。
この性質があるため、コンデンサを使った回路は直流を遮断しつつ、必要な交流信号を取り出す用途にも向いています。
マイナス3 dBと振幅比の基準
周波数特性を正しく読むには、マイナス3 dBという基準を押さえる必要があります。
マイナス3 dBは電圧比では約0.707倍、電力比では0.5倍を表す値です。
デシベルは比を対数で表す単位であり、信号の大きさの変化を広い範囲で扱いやすくするために使われます。
電圧比を表すときは20 log10、電力比を表すときは10 log10を用います。
カットオフ周波数における電力が半分と聞くと、信号が大きく失われたように感じるかもしれません。
しかし、フィルターの特性を共通の条件で比較するための基準として、マイナス3 dBは広く用いられています。
たとえば入力が1 Vで、十分に高い周波数では出力もほぼ1 Vになる一次ハイパスフィルターを考えます。
カットオフ周波数では出力がおよそ0.707 Vになります。
この地点を基準にすると、回路定数の違うフィルターでも通過帯域の広さを比較しやすくなります。
なお、チェビシェフ特性などでは通過帯域に意図的なリップルを持たせる設計もあります。
その場合は、どの値を基準にカットオフ周波数と呼んでいるか、回路仕様書や設計条件を確認する必要があります。
1 Vを基準にした振幅の例
通過帯域の出力は約1 Vです。
カットオフ周波数の出力は約0.707 Vです。
このときの電力は基準の約半分になります。
マイナス3 dBだけを見て音量の聞こえ方まで判断せず、用途に応じて周辺周波数の減衰量も確認しましょう。
カットオフ周波数の計算式と回路定数
続いてはカットオフ周波数の計算方法を確認していきます。
RCハイパスフィルターの基本式
抵抗RとコンデンサCで構成する一次RCハイパスフィルターのカットオフ周波数は、比較的簡単な式で求められます。
一次RCハイパスフィルターのカットオフ周波数は、fc = 1 ÷ 2πRCで求めます。
この式では、抵抗値またはコンデンサの静電容量を大きくすると、カットオフ周波数は低くなります。
反対に、抵抗値または容量を小さくすると、より高い周波数から通過させる設定になります。
ここでのRは抵抗値、Cは静電容量です。
ただし、実際の回路では出力先につながる機器の入力抵抗も影響します。
たとえば計算上は10 kΩの抵抗を置いていても、次段回路の入力抵抗が同程度なら、実効的な抵抗値が変わる可能性があります。
コンデンサにも公差、温度特性、周波数特性があるため、精密な設計では部品の仕様まで確認します。
特に電解コンデンサは、容量のばらつきや極性、低温時の特性に注意が必要です。
小信号の音声回路では、フィルムコンデンサや積層セラミックコンデンサが選ばれる場合もあります。
RCハイパスフィルターのカットオフ周波数
fc = 1 ÷ 2πRC
fc はカットオフ周波数で単位はHzです。
R は抵抗値で単位はΩです。
C は静電容量で単位はFです。
この式は一次のRC回路で、負荷の影響を無視できる場合の基本式です。
設計値と実測値が少し異なることは珍しくないため、必要な精度に応じて測定と調整を行います。
数値を使ったカットオフ周波数の計算例
実際の数値を入れると、抵抗とコンデンサの組み合わせが周波数にどう影響するかをつかめます。
ここでは抵抗Rを10 kΩ、コンデンサCを0.1 μFとします。
10 kΩは10,000 Ωであり、0.1 μFは0.0000001 Fです。
式に代入すると、RCは0.001になります。
2πRCは約0.00628です。
その逆数を取ると、カットオフ周波数は約159 Hzになります。
この回路では159 Hz付近で出力がマイナス3 dBとなり、それより低い周波数は次第に弱くなります。
たとえば楽曲の低域を大きく残したい用途なら、159 Hzは高めの設定に感じられるかもしれません。
一方、音声会議のマイクで風切り音や机の振動を軽減する目的では、状況によって有効な範囲になります。
計算結果は設計の出発点であり、実際に残したい信号の帯域と照らして決めることが重要です。
R = 10 kΩ = 10,000 Ω
C = 0.1 μF = 0.0000001 F
fc = 1 ÷ 2πRC
fc = 1 ÷ 2π × 10,000 × 0.0000001
fc = 約159 Hz
単位の換算を誤ると計算結果が大きくずれるため、k、μ、n、pといった接頭語は必ずFやΩの値に直してから計算すると安心です。
抵抗値と容量値による設定の違い
同じカットオフ周波数を作る方法は一つではありません。
抵抗を大きくしてコンデンサを小さくする組み合わせも、抵抗を小さくしてコンデンサを大きくする組み合わせも可能です。
ただし、部品定数を変えると、回路のノイズ、消費電流、前段や後段への負荷などが変わります。
抵抗値を極端に大きくすると、外部からのノイズや漏れ電流の影響を受けやすくなる場合があります。
逆に抵抗値を小さくしすぎると、前段回路に大きな電流を要求し、信号源を負担させることがあります。
コンデンサを大きくすると低い周波数まで通せますが、部品サイズやコスト、種類によっては歪みや漏れ電流も検討対象です。
オーディオ機器の入力回路では、信号源の出力インピーダンスと入力インピーダンスの関係も見落とせません。
センサー回路では、センサー自身が高い出力抵抗を持つことがあり、想定外の抵抗成分がカットオフ周波数を動かすことがあります。
部品定数を選ぶときの確認項目
抵抗値が前段回路に与える負荷
コンデンサの公差と温度特性
次段回路の入力抵抗
必要な周波数帯域と許容できる減衰量
理論式だけで部品を決めず、接続される機器全体を含めて判断することが、安定した周波数特性につながります。
周波数特性と減衰の傾き
続いては周波数特性のグラフから読み取れる内容を確認していきます。
ボード線図における周波数特性
周波数特性は、横軸に周波数、縦軸に利得を置いたグラフで表されることが多いです。
横軸は広い周波数範囲を扱いやすいよう、対数目盛が使われます。
縦軸は出力の比をdBで示すため、増幅や減衰を直感的に比べやすくなります。
一次ハイパスフィルターでは、低い周波数側で利得が下がり、カットオフ周波数を超えると0 dB付近へ近づきます。
周波数特性のグラフでは、マイナス3 dBとなる位置を探すとカットオフ周波数を確認できます。
たとえばカットオフ周波数が100 Hzなら、10 Hz付近では大きく減衰し、100 Hzでマイナス3 dB、1 kHz付近ではほぼ通過帯域に入ります。
ただし、グラフが0 dBを超える場合もあります。
これは増幅回路と組み合わせたアクティブフィルターで、通過帯域に利得を持たせているためです。
その場合でも、カットオフ周波数は通過帯域の利得を基準として判断します。
測定器の表示範囲や基準電圧を確認しないと、見かけ上の利得だけで誤解するおそれがあります。
周波数特性を見る際は、利得だけでなく位相の変化も確認すると、信号の時間的なずれを把握しやすくなります。
一次と高次フィルターの減衰量
フィルターの次数は、カットオフ周波数より低い領域でどれほど急に減衰するかを左右します。
一次ハイパスフィルターの減衰傾きは、1オクターブ当たり約6 dB、10倍の周波数変化である1デケード当たり約20 dBです。
二次では1オクターブ当たり約12 dB、三次では約18 dBと、次数が増えるほど傾きが急になります。
低周波ノイズをしっかり抑えつつ、近い周波数の信号を残したいときは、高次フィルターが有利です。
一方で、高次化すると回路構成が複雑になり、部品誤差や発振、位相特性にも注意が必要になります。
急峻な減衰は便利ですが、カットオフ周波数の近くにある必要な成分も影響を受けやすくなります。
たとえば人の話し声を扱う回路で低域を切りすぎると、低い声の基本周波数だけでなく、声質に関わる成分も変化します。
通信機器では、不要な低周波を抑えることが復調の安定性につながる一方、信号の波形を崩さない条件を考える必要があります。
以下の表は、代表的な次数ごとの減衰傾きの目安です。
| フィルター次数 | 1オクターブ当たりの減衰 | 1デケード当たりの減衰 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 一次 | 約6 dB | 約20 dB | 構成が簡単で穏やかな変化 |
| 二次 | 約12 dB | 約40 dB | 実用的な減衰量と設計性 |
| 三次 | 約18 dB | 約60 dB | 低域をより強く抑制 |
| 四次 | 約24 dB | 約80 dB | 急峻な分離が可能 |
次数が高いほど常に優れるわけではなく、必要な減衰量、回路の安定性、許容できる位相変化を合わせて選ぶことが重要です。
ローパスフィルターとの違いと用途
続いては関連するフィルターとの違いと利用場面を確認していきます。
ローパスフィルターとハイパスフィルターの比較
ハイパスフィルターとローパスフィルターは、通しやすい周波数帯が反対です。
ハイパスフィルターは高い周波数を通し、低い周波数を弱めます。
ローパスフィルターは低い周波数を通し、高い周波数を弱めます。
両者のカットオフ周波数は同じく境界を表しますが、どちら側が通過帯域になるかが異なります。
たとえばオーディオのサブウーファーには低域を取り出すローパスフィルターが使われます。
小型スピーカーを不要な低音から守るためには、低域を抑えるハイパスフィルターが役立ちます。
写真や映像の信号処理でも、ゆっくり変化する明るさのむらを抑えるためにハイパス処理が使われることがあります。
この場合は、音の周波数ではなく、画像内の明るさ変化の細かさを周波数として扱います。
用途によって周波数の意味する対象は変わりますが、不要な帯域を弱めるという考え方は共通です。
| 項目 | ハイパスフィルター | ローパスフィルター |
|---|---|---|
| 通過しやすい帯域 | 高周波 | 低周波 |
| 減衰しやすい帯域 | 低周波 | 高周波 |
| 音響での用途 | 低音カット、風切り音対策 | 高音ノイズの低減、サブウーファー |
| 代表的な目的 | 直流成分や低域ノイズの除去 | 高域ノイズや細かな変動の除去 |
| カットオフ周波数の見方 | 高域側への移行点 | 低域側からの減衰開始点 |
両方を組み合わせると、特定の範囲だけを通すバンドパスフィルターや、特定の範囲だけを抑えるバンドストップフィルターも構成できます。
音響機器と信号処理における設定
ハイパスフィルターの設定は、不要な低域の種類と、残したい信号の最低周波数を基準に考えます。
マイクでは、振動、風、空調、机の接触音などが低域ノイズとして入りやすい傾向があります。
これらを抑えるためにハイパスフィルターを使うと、会話の聞き取りやすさが改善することがあります。
ただし、カットオフ周波数を上げすぎると、男性の低い声や音楽の低音の豊かさまで弱くなります。
設定の基本は、不要な低域より少し上ではなく、残したい信号の必要帯域を損なわない位置を探すことです。
録音時には、ヘッドホンだけで判断せず、再生するスピーカーや最終的な視聴環境でも確認すると失敗を減らせます。
センサー信号では、測定対象の変化速度を把握してから設定します。
ゆっくり変化する温度や荷重の信号に高いカットオフ周波数を設定すると、必要な変化そのものを削ってしまう可能性があります。
反対に、急な衝撃だけを検出したい場合には、低周波のゆっくりした変化を抑える設定が有効です。
デジタル信号処理では、サンプリング周波数、演算遅延、フィルターの次数も関係します。
アナログ回路と同じ感覚で数値だけを決めず、測定や試聴を通じて目的に合う特性を確認しましょう。
ハイパスフィルターのカットオフ周波数のまとめ
ハイパスフィルターのカットオフ周波数は、低域を減衰させて高域を通しやすくする境目を表す重要な値です。
代表的な一次RC回路では、fc = 1 ÷ 2πRCの式で求められます。
カットオフ周波数では、一般に振幅が約0.707倍、電力が約半分となるマイナス3 dBが基準です。
周波数特性を見るときは、境目の周波数だけでなく、次数による減衰の傾きも確認する必要があります。
一次フィルターは穏やかに変化し、高次フィルターは不要な低域をより急に抑えられます。
ただし急峻な設定ほど、必要な信号の近くの成分や位相にも影響しやすくなります。
音響、通信、センサー回路では、残したい信号と取り除きたいノイズを具体的に分けて考えることが大切です。
まずは計算式で目安を出し、実際の信号を測定または試聴しながら、目的に合うカットオフ周波数へ調整してみてください。