スイッチング電源を複数台使う場面では、直列接続による電圧の加算や、並列接続による電流容量の拡大を検討することがあります。
しかし、接続方法を誤ると出力電圧の偏り、逆流、過電流保護の作動、電源の故障などにつながるため、単純に配線をつなぐだけでは危険です。
本記事では、直列接続と並列接続で出力電圧・出力電流がどのように変化するのか、直列ダイオードの役割、複数出力電源の扱い、確認すべき仕様までを分かりやすく解説します。
直列接続・並列接続の基本原理

それではまず、スイッチング電源の直列接続・並列接続について解説していきます。
直列接続における出力電圧の加算
直列接続とは、複数の電源の出力を数珠つなぎのように接続し、電圧を合計して使う方法です。
たとえば、DC24Vのスイッチング電源を2台直列に接続すると、負荷に対しては原則としてDC48Vを供給できます。
この場合、1台目のプラス端子を負荷のプラス側へ接続し、1台目のマイナス端子と2台目のプラス端子を接続します。
2台目のマイナス端子は、負荷のマイナス側へ接続する構成です。
直列接続では電圧が加算され、電流容量は最も小さい電源の定格電流に制限されます。
DC24V・5Aの電源を2台直列にした場合、理論上はDC48V・5Aとして扱います。
DC48V・10Aとして使えるわけではない点が、設計時の重要な注意点です。
直列接続の基本計算例です。
DC24V・5Aの電源を2台使用する場合、出力電圧は24V+24Vで48Vとなります。
最大出力電流は5Aのままであり、最大出力電力は48V×5Aで240Wです。
電圧を高くすると、同じ電力を送る場合に必要な電流を抑えやすくなります。
配線の電圧降下や発熱を抑える目的で、直列接続が採用されることもあります。
並列接続における出力電流の加算
並列接続とは、複数の電源のプラス端子同士、マイナス端子同士を接続し、供給できる電流を増やす方法です。
DC24V・5Aの電源を2台並列に接続できれば、理論上はDC24V・10Aの出力を得られます。
ただし、すべてのスイッチング電源が並列運転に対応しているわけではありません。
出力電圧には製造上のばらつきがあり、わずかに電圧が高い電源へ負荷電流が集中することがあります。
その結果、一方の電源だけが定格付近で動作し、もう一方の電源がほとんど働かない状態も起こり得ます。
並列接続は電流を増やす方法ですが、並列運転対応品かどうかを仕様書で確認することが前提です。
電源メーカーが冗長運転や電流バランス機能を明記している製品なら、複数台での運用を検討しやすくなります。
単独使用を前提とした一般的な電源を、判断なしに並列へ接続することは避けるべきでしょう。
直列・並列接続で変わる電圧と電流
直列と並列の違いを把握するには、電圧と電流を別々に考えることが大切です。
直列では電圧が加算され、並列では電流容量が加算されるという関係が基本になります。
| 接続方法 | 出力電圧 | 出力電流 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 単独接続 | 電源1台分 | 電源1台分 | 一般的な機器への給電 |
| 直列接続 | 各電源の電圧を加算 | 最小定格電流まで | 高いDC電圧が必要な装置 |
| 並列接続 | 原則として電源1台分 | 各電源の電流を加算 | 大電流負荷や冗長構成 |
| 直列・並列の組み合わせ | 構成により加算 | 構成により加算 | 大型設備や分散給電 |
電源の出力電力は、電圧と電流を掛け合わせて考えます。
負荷が必要とする電力だけでなく、起動時の突入電流や周囲温度によるディレーティングも見込む必要があります。
直列接続に必要な絶縁仕様
続いては、直列接続を成立させるための絶縁仕様を確認していきます。
フローティング出力の確認
直列接続で最初に確認したい項目は、出力端子がフローティングであるかどうかです。
フローティング出力とは、出力のプラス端子とマイナス端子が、保護接地や入力側の接地と直接つながっていない状態を指します。
出力マイナスが内部で接地されている電源では、複数台を直列にすると意図しない短絡経路が生じるおそれがあります。
金属ケースに取り付ける装置や制御盤では、DINレール、筐体、シールド線などを通じて接地との関係が複雑になる場合もあります。
直列接続では、各電源の出力端子と接地間に許容される電圧を確認することが欠かせません。
カタログには、出力・FG間の耐電圧、出力・入力間絶縁、許容できる出力端子の対地電圧などが記載されていることがあります。
単に絶縁型電源であるという表示だけで、直列接続の可否を判断しないようにしましょう。
対地電圧と耐電圧の考え方
DC24V電源を2台直列にしてDC48Vを作る場合、上側に配置された電源の出力端子は接地に対してDC24VまたはDC48V近い電位を持つことがあります。
接続方法によっては、電源内部の絶縁部品や出力回路に通常より大きな対地電圧が加わります。
4台直列でDC96Vを作る構成では、さらに高い電位差を考慮しなければなりません。
DC24V電源を4台直列にする例です。
合計出力はDC96Vですが、各電源の出力端子が接地に対して受ける電圧は設置位置により異なります。
上位側の電源ほど対地電圧が高くなるため、出力・FG間の許容値を必ず確認します。
耐電圧試験の値と、常時印加してよい電圧は同じ意味ではありません。
短時間の試験電圧が高くても、常用条件として直列接続を許容していない機種はあります。
メーカー資料で直列運転の可否、接続可能台数、端子間・対地間の制約を確認することが安全です。
負荷の接地と配線経路
負荷側が接地されている機器では、直列接続した電源の一部が接地と接触することで回路条件が変わる可能性があります。
計測器、通信機器、PLC、センサー、モーターコントローラーなどは、信号グランドと電源マイナスが内部で結合している場合があります。
複数の機器を接続した後に初めて、意図しないグランドループができることも珍しくありません。
直列接続の配線図は、電源端子だけでなくFG、筐体、信号線シールド、外部接続機器まで含めて確認します。
テスターによる導通確認だけでは、内部回路やノイズ対策部品を含む関係を十分に把握できないことがあります。
仕様書、回路図、端子説明図を照らし合わせ、必要に応じてメーカーへ問い合わせる方法が確実です。
並列接続と電流バランス
続いては、並列接続で問題になりやすい電流バランスを確認していきます。
出力電圧差による偏流
同じ型番、同じ設定値のスイッチング電源でも、実際の出力電圧には個体差があります。
たとえば一方が24.10V、もう一方が23.90Vであれば、わずか0.20Vの差でも高い側から優先して電流が流れます。
負荷が軽い段階では高い側の電源だけが出力し、負荷が増えてから低い側が追従するような挙動になる場合があります。
この状態では、期待した電流分担が実現せず、片側の過電流保護が先に作動するおそれがあります。
出力電圧を調整できる電源であっても、手作業で完全にそろえ続けることは簡単ではありません。
温度変化、経年変化、負荷変動によって電圧特性が変わる可能性もあります。
並列接続では、電圧を合わせただけで均等な電流分担が保証されるわけではありません。
電流バランス機能や並列運転端子を備えた電源を選ぶことが、安定運用への近道です。
電流バランス機能とリモートセンシング
並列運転対応のスイッチング電源には、カレントシェア機能、電流バランス端子、ドループ特性などを備えた製品があります。
カレントシェア機能は、複数電源の出力電流を比較し、制御回路によって分担を近づける仕組みです。
ドループ特性とは、出力電流が増えると出力電圧をわずかに低下させる性質を利用し、特定の電源に電流が集中しにくくする方法です。
リモートセンシングは、負荷端子付近の電圧を検出して配線で生じる電圧降下を補償する機能です。
便利な機能ですが、並列接続時にセンシング線をどのように配線するかは、機種ごとの指定に従う必要があります。
並列運転端子、リモートセンシング端子、出力電圧調整端子は、自己流で共通接続しないことが重要です。
誤接続は発振、出力異常、保護機能の誤動作につながる可能性があります。
冗長運転と容量増設の違い
並列接続には、電流容量を増やす目的と、片方の電源が停止しても給電を継続する冗長運転の目的があります。
容量増設では、複数台が通常時から負荷電流を分担します。
一方の冗長運転では、必要電流を1台または残存電源で供給できる余裕を持たせる設計が一般的です。
たとえば負荷がDC24V・5Aであれば、DC24V・5A以上の電源を2台用意し、冗長ユニットを介して接続する構成が考えられます。
片方の電源が故障した場合でも、もう一方が負荷へ電力を供給し続けられます。
| 運転方式 | 主な目的 | 通常時の負荷分担 | 必要な検討項目 |
|---|---|---|---|
| 容量増設 | 大電流化 | 複数台で分担 | 電流バランス、配線抵抗、定格余裕 |
| 冗長運転 | 停止リスク低減 | 機種や構成による | 逆流防止、故障検出、残存容量 |
| バックアップ構成 | 瞬停・停電対策 | 通常は主電源中心 | バッテリー、切替時間、充電制御 |
目的を混同すると、必要な電源容量や保護回路の設計が不十分になるため注意しましょう。
直列ダイオードと逆流防止回路
続いては、直列ダイオードと逆流防止回路の役割を確認していきます。
逆流が起こる主な場面
複数のスイッチング電源を並列接続した場合、出力電圧の高い電源から低い電源へ電流が流れ込むことがあります。
これを逆流と呼び、停止中の電源や故障した電源の出力回路に負担を与える可能性があります。
電源の入力が切れた後も、出力側に接続されたコンデンサや他の電源から電圧がかかり続けるケースもあります。
特に冗長運転では、故障または停止した電源を確実に切り離す仕組みが求められます。
逆流防止を考慮しない並列接続は、電源が2台あっても可用性を十分に高められない場合があります。
各電源の仕様に逆電圧印加の許容条件が記載されているかも確認ポイントです。
直列ダイオードの電圧降下
直列ダイオードは、電流を一方向へ流し、逆方向の電流を遮断する部品です。
電源の出力プラス側にダイオードを直列に入れることで、他方の電源からの逆流を抑える構成が作れます。
ただし一般的なダイオードには順方向電圧降下があり、負荷へ届く電圧が低下します。
シリコンダイオードでは、条件によりおよそ0.6Vから1V程度の電圧降下が生じます。
DC24V系では小さく見える差でも、電圧範囲が厳しいPLCやセンサー、リレーには影響することがあります。
DC24V出力に順方向電圧降下0.7Vのダイオードを入れた場合です。
負荷へ供給される電圧は、おおむね23.3Vとなります。
5Aが流れると、ダイオードの損失は0.7V×5Aで3.5Wとなり、放熱設計が必要です。
ダイオードの定格電流は、通常電流だけでなく、起動時の突入電流や周囲温度で低下する許容値も踏まえて選定します。
放熱板の有無、取付方向、盤内温度も寿命と信頼性を左右します。
ショットキーダイオードと理想ダイオード
電圧降下を抑えたい場合には、ショットキーダイオードやMOSFETを用いた理想ダイオード回路が選択肢になります。
ショットキーダイオードは一般的なシリコンダイオードより順方向電圧が低い傾向にあり、発熱を抑えやすい部品です。
一方で、逆方向漏れ電流、耐圧、温度特性などを確認する必要があります。
MOSFETを使う理想ダイオード回路は、非常に小さな電圧降下で逆流防止を実現しやすい方式です。
冗長電源用の専用ユニットには、このような低損失回路が内蔵されている製品もあります。
逆流防止用の部品は、単に電流定格だけで選びません。
順方向電圧、損失、耐圧、突入電流、周囲温度、故障時の挙動まで確認して選定します。
複数出力電源と接続上の注意点
続いては、複数出力電源を使用する場合の注意点を確認していきます。
複数出力電源の独立出力
複数出力電源とは、1台の電源からDC5V、DC12V、DC24Vなど複数の電圧を取り出せる製品です。
複数の出力があるからといって、すべての出力が完全に独立しているとは限りません。
出力間で共通のマイナス端子を持つ製品、内部でトランス巻線が分かれた絶縁出力を持つ製品、片方の出力が他方の負荷状態に影響される製品などがあります。
複数出力電源の出力を直列に使う場合は、出力同士が独立しているか、メーカーが直列接続を許容しているかを確認する必要があります。
複数出力電源の端子配置だけを見て、別々の電源回路だと判断するのは危険です。
端子台の表示、回路図、各出力の定格、クロスレギュレーションの仕様を確認しましょう。
クロスレギュレーションと最小負荷
クロスレギュレーションとは、一方の出力負荷の変化が、別の出力電圧へ影響する現象です。
たとえばDC5V出力の負荷が大きく変化すると、DC12V出力の電圧も変動する場合があります。
古い設計の複数出力電源や、特定の回路方式の電源では、各出力に最小負荷が必要とされることもあります。
最小負荷を満たさないと、出力電圧が規定範囲を外れたり、リップルが増えたりするおそれがあります。
近年は最小負荷不要の製品も増えていますが、製品ごとに条件が異なります。
無負荷時、部分負荷時、最大負荷時の電圧変動を確認し、実際の装置構成で評価することが重要です。
出力の直列化と負荷配分
複数出力電源の2つの出力を直列化するときは、それぞれの出力に流れる電流が同じになる点を理解しておく必要があります。
DC12V・2A出力を2系統直列にしてDC24Vを作る場合、取り出せる電流は2Aまでです。
片側出力だけから追加の負荷を取ると、各出力に流れる電流が不均衡になり、定格超過や電圧変動の原因になります。
| 確認項目 | 確認する内容 | 見落とし時の影響 |
|---|---|---|
| 出力の独立性 | 共通マイナスか絶縁出力か | 短絡、想定外の接地 |
| 直列接続可否 | メーカーの明記と条件 | 保証対象外、故障 |
| 各出力の電流 | 出力ごとの定格内か | 過電流保護、発熱 |
| 最小負荷 | 必要負荷の有無 | 電圧不安定、リップル増加 |
| クロスレギュレーション | 他出力への影響範囲 | 制御回路の誤動作 |
複数出力を活用すると配線や設置スペースを減らせますが、単出力電源を複数台使う場合より検討項目が増えることもあります。
電源選定と安全確認の手順
続いては、直列接続・並列接続を行う前の電源選定と安全確認の手順を確認していきます。
仕様書で確認する必須項目
接続方式を決める前に、電源本体の取扱説明書とデータシートを確認します。
確認すべき項目には、定格出力電圧、定格出力電流、最大出力電力、過電流保護方式、過電圧保護、直列接続可否、並列接続可否があります。
さらに、出力端子の対地許容電圧、出力・FG間の絶縁条件、逆電圧への耐性、使用温度範囲も重要です。
直列・並列接続の可否は、似た仕様の別機種でも異なるため、必ず対象型式の資料で確認します。
電源シリーズ全体の一般説明ではなく、選定した型式の個別仕様を確認する習慣が大切です。
改造や外部回路の追加により保証条件が変わる可能性もあるため、不明点はメーカーの技術窓口へ確認すると安心です。
配線・ヒューズ・端子の設計
出力電流が増えるほど、配線の太さ、端子の定格、圧着端子の適合、ヒューズ容量が重要になります。
細い配線は電圧降下を大きくし、発熱や被覆の劣化につながります。
並列電源では、各電源から合流点までの配線長と配線抵抗をできるだけそろえると、電流分担の偏りを抑えやすくなります。
片方だけ長い配線や細い配線にすると、その経路の抵抗が増え、負荷分担が崩れる一因になります。
並列接続の配線は、各電源から負荷合流点までをできるだけ対称に近づけることが基本です。
配線長、線径、端子、ヒューズ、逆流防止部品をそろえて検討します。
ヒューズは、短絡時に配線や電源を保護するための重要な部品です。
ただし、定格を小さくしすぎると起動時の突入電流で不要動作し、大きすぎると保護の意味が薄れます。
負荷特性とメーカー推奨値を踏まえ、遮断容量も含めて選定しましょう。
試運転時の測定と異常確認
接続後は、いきなり最大負荷で運転せず、無負荷または軽負荷から段階的に確認します。
まず各電源単体の出力電圧を測定し、次に接続状態での電圧、負荷電流、電源ごとの出力電流を確認します。
並列接続では、クランプメーターや電流計を用いて、電流が極端に片寄っていないか確認するとよいでしょう。
直列接続では、各電源の両端電圧と、各端子の対地電圧を確認します。
電源本体、ダイオード、端子台、配線、ヒューズホルダーの温度上昇も見逃せません。
定常状態だけでなく、起動時、負荷急変時、入力電源の瞬停時も確認することで、実運用に近い安全性を評価できます。
異音、出力電圧の周期的な変動、保護ランプの点滅、異常な発熱があれば、ただちに停止して原因を確認してください。
スイッチング電源の直列接続・並列接続のまとめ
スイッチング電源の直列接続では出力電圧を加算でき、並列接続では出力電流容量を増やせます。
ただし直列接続では、フローティング出力、対地電圧、絶縁仕様、負荷側の接地状態を確認することが必要です。
並列接続では、出力電圧差による偏流や逆流が起こるため、並列運転対応の電源、カレントシェア機能、冗長ユニットの採用を検討しましょう。
直列ダイオードは逆流防止に役立ちますが、電圧降下と発熱が発生します。
低損失化が必要な場合は、ショットキーダイオードや理想ダイオード方式も有効な選択肢です。
複数出力電源では、各出力が独立しているか、直列接続が許可されているか、最小負荷やクロスレギュレーションに条件がないかを確認してください。
最終的には、対象型式の仕様書に従い、配線、ヒューズ、温度上昇、起動時の挙動まで測定して判断することが、安全で安定した電源設計につながります。