ゴム硬度計とは?測定原理と硬さの測定方法をわかりやすく解説!校正
ゴム製品の品質を安定させるうえで、硬さの管理は欠かせません。
同じ材質名のゴムでも、配合、加硫条件、温度、測定方法によって硬さの数値は変化します。
そこで利用される計測器がゴム硬度計です。
本記事では、ゴム硬度計の測定原理、代表的な種類、正しい測定方法、校正の考え方までを、現場で役立つ視点から詳しく解説します。
ゴム硬度計の概要と測定値の考え方

それではまず、ゴム硬度計の概要と測定値の考え方について解説していきます。
ゴム硬度計の役割
ゴム硬度計とは、ゴムやエラストマーの表面を押し込んだ際の抵抗を数値化する測定器です。
一般にデュロメーターとも呼ばれ、試験片や製品の表面に押針を接触させ、押針の沈み込み量から硬さを読み取ります。
ゴム硬度は材料の弾性や圧縮特性を手軽に比較するための代表的な管理値です。
部品の受入検査、製造条件の確認、出荷検査、劣化評価など、幅広い工程で活用されています。
たとえばシール材が想定より軟らかい場合、圧縮時の変形量が大きくなり、寸法安定性や密封性能に影響する可能性があります。
反対に硬すぎる場合は、相手部品への追従性が不足し、組み付け時の負荷が大きくなることもあるでしょう。
硬さが示す物性
硬度は、材料の強度そのものを直接表す数値ではありません。
引張強さ、伸び、反発弾性、圧縮永久ひずみ、耐摩耗性などとは別の評価項目です。
ただし、配合や加硫状態が変わると複数の物性が連動しやすいため、硬度は品質変化を早期に見つける指標として有効です。
硬度が高いゴムは、一般に押し込みに対する抵抗が大きい状態を示します。
一方で、同じ硬度でもゴムの種類や配合が異なれば、耐油性や耐熱性、圧縮永久ひずみまで同等とは限りません。
硬度は合否判定に便利な数値ですが、材料性能のすべてを表す値ではありません。
仕様書では硬度だけでなく、測定規格、試験温度、試験片の厚さ、判定許容差をセットで管理することが重要です。
硬度の単位と表記
ゴム硬度は、JISやISOなどの規格に基づくタイプ名と数値を組み合わせて表記します。
よく見かける表記には、タイプAの70、タイプDの50といった形式があります。
数値が大きいほど、その硬度計の条件では押針が沈みにくいことを表します。
硬度の数値だけではなく、どのタイプの硬度計で測定したかを確認することが大切です。
タイプAの70とタイプDの70は、同じ意味ではありません。
押針の形状やばね荷重が異なるため、規格や試験条件を省略した比較は避ける必要があります。
| 表記例 | 意味 | 確認したい項目 |
|---|---|---|
| タイプA 60 | タイプA硬度計で測定した硬度値 | 試験片厚さ、測定温度、測定時間 |
| タイプD 45 | タイプD硬度計で測定した硬度値 | 対象材質、押針状態、校正状態 |
| 硬度許容差 | 規格値に対する許容範囲 | 上限値、下限値、判定方法 |
測定原理とデュロメーターの構造
続いては、測定原理とデュロメーターの構造を確認していきます。
押針の沈み込み量
ゴム硬度計は、先端にある押針を試験片へ押し当て、沈み込み量を硬度目盛に換算します。
表面が軟らかいほど押針は深く入り、硬度値は低くなります。
表面が硬いほど押針は入りにくくなり、硬度値は高く表示される仕組みです。
測定の本質は、決められた荷重条件における押し込み抵抗の比較にあります。
デジタル式では、内部のセンサーが押針の変位や荷重状態を検出し、演算した値を表示します。
アナログ式では、ばね機構と指針により硬度を読み取る構造が一般的です。
硬度値は、押針がほとんど沈み込まない状態に近づくほど大きくなります。
反対に、押針が規定の範囲まで深く沈み込むほど、小さな値になります。
ばね荷重と押針形状
デュロメーターには、押針を押し込むためのばね機構が組み込まれています。
押針の形状とばね荷重の組み合わせにより、測定に適した硬さの範囲が決まります。
軟らかいスポンジや非常に軟質なゴムに対し、硬い材料向けのタイプを使うと、適切な分解能で評価できないことがあります。
逆に、硬い樹脂や高硬度ゴムを軟質材料向けのタイプで測定すると、指示値が上限付近に集中し、差が見えにくくなります。
測定範囲の中央付近で評価できる硬度計を選ぶことが、比較しやすいデータにつながります。
接触時間と粘弾性
ゴムは粘弾性を持つ材料のため、押針を当てた直後と数秒後では表示値が変わる場合があります。
これは、瞬間的な弾性変形に加えて、時間の経過とともに材料内部の変形が進むためです。
測定値を安定させるには、接触後に読み取る時間を規格や社内標準で統一する必要があります。
測定者ごとに押し当てる速さや読み取り時間が異なると、同一試料でもばらつきが大きくなります。
ゴム硬度測定では、硬度計の種類だけでなく、押し当て時間と測定姿勢も結果に影響します。
記録票には、測定時刻ではなく接触後の読み取り秒数を残す運用が有効です。
硬度計の種類と適用材料
続いては、硬度計の種類と適用材料を確認していきます。
タイプAの用途
タイプAは、一般的な加硫ゴムや軟質エラストマーの測定で広く使われる代表的な硬度計です。
パッキン、ガスケット、ホース、ベルト、ゴムローラーなど、多くの工業用ゴム製品で採用されています。
特に中程度の硬さを持つゴムでは、タイプAによる測定が仕様書に記載されていることが少なくありません。
最初に確認すべきなのは、製品仕様で指定された硬度計タイプです。
材料の見た目が似ていても、顧客図面や検査規格で異なるタイプが指定されている場合があります。
タイプDの用途
タイプDは、タイプAでは高い数値に張り付きやすい硬質ゴム、硬質エラストマー、硬めの樹脂などで用いられます。
押針の形状と荷重条件が異なるため、より硬い材料の差を読み取りやすい点が特徴です。
たとえば高硬度のウレタン系材料や、硬質プラスチックに近い挙動を示す材料では、タイプDを選ぶ場面があります。
ただし、材料名だけでタイプを決めるのは適切ではありません。
規格、想定硬度域、製品の形状、試験片の厚さを確認したうえで選定することが必要です。
特殊タイプと測定器選定
非常に軟らかいゴム、発泡体、薄いシート、特殊形状の製品では、タイプAやタイプDだけでは評価しにくい場合があります。
このような対象では、用途に応じた別タイプの硬度計や、専用スタンド、試験片保持具を検討します。
測定面が曲面の場合、平面用の押針をそのまま当てると接触状態が不安定になり、実際の硬さ以上にばらつくことがあります。
硬度計は材料だけでなく、試験片の形状と測定場所に合わせて選ぶ必要があります。
| 対象の例 | 検討しやすい硬度計 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一般的な加硫ゴム | タイプA | 厚さ不足や曲面測定に注意 |
| 硬質ゴムや硬めのウレタン | タイプD | 規格の指定を優先 |
| 発泡ゴムやスポンジ | 専用タイプや別試験法 | 表皮の影響を受けやすい |
| 薄肉シート | 積層試験や保持具の使用 | 下地の硬さが影響しやすい |
ゴム硬度の測定手順と注意点
続いては、ゴム硬度の測定手順と注意点を確認していきます。
試験片の準備
正しい測定は、試験片の準備から始まります。
表面に油、ほこり、水分、離型剤、傷が残っていると、押針の接触条件が変化します。
測定前には、試験面を清潔な状態にし、十分に室温へなじませることが重要です。
ゴムは温度の影響を受けやすく、低温では硬く、高温では軟らかく測定される傾向があります。
試験片の温度と周囲温度を揃えることは、再現性を確保する基本です。
薄い試験片では、複数枚を重ねて必要な厚さを確保する方法が用いられる場合があります。
ただし、積層した際に空気層やずれがあると、測定値に影響するため注意が必要です。
押し当て操作
硬度計は、試験面に対して垂直に押し当てます。
斜めに接触すると、押針の沈み込み方が偏り、測定値が安定しません。
手持ち測定では、測定者の押し込み速度や荷重のかけ方で差が出ることがあります。
測定スタンドを使用すると、押し当て条件を揃えやすく、連続検査や比較試験に役立ちます。
測定の流れは、試験片を安定した台に置く、硬度計を垂直に当てる、規定時間後に値を読む、測定点を変えて複数回測る、という順序です。
同じ場所への連続測定は避け、測定点の間隔を十分に取ります。
測定回数と判定方法
ゴム製品は、表面状態や肉厚のわずかな差によって局所的な硬度差が生じることがあります。
そのため、通常は一回だけの値で判定せず、複数箇所を測定して平均値やばらつきを確認します。
測定点は端部、ゲート跡、傷、凹凸の近くを避けることが基本です。
測定値の平均だけでなく、最大値と最小値の差にも目を向けることが品質管理では重要になります。
ばらつきが大きい場合、材料配合だけでなく、成形圧力、金型温度、加硫時間、製品肉厚、保管条件などを確認します。
単に再測定を繰り返すのではなく、ばらつきの発生源を切り分ける姿勢が求められます。
測定値が規格外だった場合でも、硬度計のゼロ点、押針の摩耗、試験片温度、測定位置を先に確認してください。
製品不良と判断する前に、測定条件の異常を除外することが適切な品質判断につながります。
校正と日常点検の実務
続いては、校正と日常点検の実務を確認していきます。
校正の目的
校正とは、硬度計が正しい値を示しているかを確認し、必要に応じて調整や判定を行う管理活動です。
長期間の使用、落下、押針の摩耗、ばねのへたり、異物の付着などにより、測定器の指示値は変化することがあります。
校正は測定器の信頼性を維持し、検査結果の根拠を残すための重要な工程です。
出荷判定や顧客提出データに硬度値を使う場合、校正履歴が整備されているかどうかは特に重要でしょう。
基準ブロックによる確認
日常点検では、硬度基準ブロックを用いて硬度計の指示値を確認します。
基準ブロックには基準となる硬度値が表示されており、測定値が許容範囲内に入るかを確認します。
点検は始業前、重要なロットの測定前、落下などの異常があった後に実施すると安心です。
硬度基準ブロックも経年変化や汚れの影響を受けるため、保管環境と定期的な確認が必要になります。
日常点検の例として、硬度計の外観確認、押針の動作確認、ゼロ点確認、基準ブロック測定、記録作成を行います。
規定外の値が出た場合は、そのまま製品測定に使わず、使用停止と原因確認を行うことが大切です。
校正周期と記録管理
校正周期は、使用頻度、測定の重要度、顧客要求、社内品質規程に応じて定めます。
一般には定期校正に加え、日常点検を組み合わせる運用が効果的です。
校正記録には、測定器の管理番号、実施日、使用した基準器、測定結果、判定、担当者、次回予定日を残します。
校正証明書だけを保管するのではなく、現場の日常点検記録も継続して残すことが望まれます。
異常が発見された場合には、その硬度計で過去に測定した製品への影響を確認する必要が生じることもあります。
| 管理項目 | 確認内容 | 実施の目安 |
|---|---|---|
| 外観点検 | 破損、汚れ、押針の欠け | 使用前 |
| ゼロ点確認 | 無負荷時の表示状態 | 使用前 |
| 基準ブロック確認 | 基準値との差 | 始業前または測定前 |
| 定期校正 | 精度と機能の総合確認 | 社内規程による |
ゴム硬度計のまとめ
ゴム硬度計は、押針の沈み込み量を利用して、ゴムやエラストマーの硬さを評価する測定器です。
硬度値を正しく活用するには、材料に合った硬度計タイプを選び、試験片の温度、厚さ、測定位置、接触時間を揃える必要があります。
とくに硬度の数値と測定条件は、必ず一組で管理することが重要です。
タイプAやタイプDなどの区分、規格、判定許容差を明確にし、複数点測定によるばらつき確認も行いましょう。
さらに、基準ブロックを使った日常点検と定期校正を継続すれば、測定データの信頼性を高められます。
ゴム硬度計を単なる検査機器として扱うのではなく、材料配合や成形条件の変化を把握する品質管理の道具として活用することが、安定したものづくりにつながります。