確率分布を学ぶときは、公式の種類が多く見えて混乱しやすいものです。
しかし、確率変数が離散型か連続型かを分け、期待値と分散の定義を順番に確認すれば、計算の流れは整理できます。
この記事では、確率分布の基本公式、期待値、分散、標準偏差、代表的な分布ごとの計算方法まで、表と例を交えて解説します。
確率分布の公式と計算結果

それではまず、確率分布の公式と計算結果について解説していきます。
期待値と分散の基本公式
確率分布における期待値は、確率変数が平均的にどの値を取るかを表す指標です。
離散型確率変数Xが値xを取り、その確率をP(X=x)とすると、期待値E(X)は各値と確率を掛け合わせて合計します。
離散型確率変数の期待値
E(X)=Σ xP(X=x)
Σは、取り得るすべての値について合計する記号です。
分散V(X)は、値が期待値からどれほど広がっているかを示す数値です。
分散は平均からの差を二乗して考えるため、正の差と負の差が打ち消し合いません。
分散の定義式
V(X)=E{X-E(X)}²
計算用の公式
V(X)=E(X²)-{E(X)}²
実際の計算では、二つ目の公式を使う場面が多いでしょう。
まずX²の期待値を求め、そこから期待値の二乗を引くことで、分散を効率よく求められます。
離散型と連続型の公式一覧
確率分布は、値が飛び飛びに現れる離散型と、ある範囲を連続的に取る連続型に分類されます。
サイコロの目や商品の不良個数は離散型であり、身長や測定時間は連続型の代表例です。
| 分類 | 確率の表し方 | 期待値の公式 | 分散の公式 |
|---|---|---|---|
| 離散型確率分布 | P(X=x) | E(X)=ΣxP(X=x) | V(X)=Σ{x-E(X)}²P(X=x) |
| 連続型確率分布 | 確率密度関数f(x) | E(X)=∫xf(x)dx | V(X)=∫{x-E(X)}²f(x)dx |
| 共通の計算式 | 確率の合計は1 | 線形性を利用可能 | V(X)=E(X²)-{E(X)}² |
連続型では、特定の一点を取る確率は基本的に0となります。
そのため、ある区間に入る確率を積分で求める点が、離散型との大きな違いです。
期待値と分散の考え方は共通しており、合計を使うか積分を使うかが主な違いになります。
標準偏差まで含めた見方
分散はデータのばらつきを表しますが、元の単位を二乗した単位になるため、直感的に比較しにくいことがあります。
そこで、分散の平方根を取った標準偏差を使います。
標準偏差は、分散の平方根です。
標準偏差σ=√V(X)
期待値が中心の位置、標準偏差が散らばりの大きさを示すと考えると理解しやすくなります。
例えば平均点が同じ二つのテストでも、標準偏差が大きいテストでは高得点者と低得点者の差が大きくなります。
逆に標準偏差が小さければ、多くの値が平均付近に集まっている状態です。
期待値を求める計算手順
続いては、期待値を求める計算手順を確認していきます。
確率分布表からの計算方法
離散型確率分布では、最初に確率変数Xが取る値と、それぞれの確率を表にします。
次に、各値に対応する確率を掛け、その積をすべて合計してください。
| Xの値 | 確率P(X=x) | xP(X=x) |
|---|---|---|
| 1 | 0.2 | 0.2 |
| 2 | 0.5 | 1.0 |
| 3 | 0.3 | 0.9 |
| 合計 | 1.0 | 2.1 |
この場合、期待値E(X)は2.1です。
期待値は必ずしも実際に取り得る値とは限りません。
上の例ではXが2.1になるわけではありませんが、同じ試行を十分多く繰り返したときの平均が2.1へ近づくという意味です。
期待値は最も起こりやすい値ではない点に注意しましょう。
加法性と定数倍の性質
期待値には計算を簡単にする重要な性質があります。
確率変数XとYについて、E(X+Y)=E(X)+E(Y)が成り立ちます。
期待値の代表的な性質
E(aX+b)=aE(X)+b
E(X+Y)=E(X)+E(Y)
E(aX+bY)=aE(X)+bE(Y)
ここでaとbは定数です。
この性質は、XとYが独立かどうかにかかわらず使える点が特徴になります。
例えば1回のくじ引きの賞金をX、参加費を300円とすると、利益X-300の期待値はE(X)-300です。
複雑な式でも、項ごとに期待値を分けて考えれば見通しがよくなります。
期待値の具体例
公平な六面体のサイコロを1回振る場合、1から6までの目はそれぞれ6分の1の確率です。
期待値は、1から6までの合計に6分の1を掛けて求めます。
E(X)=1×1/6+2×1/6+3×1/6+4×1/6+5×1/6+6×1/6となります。
計算結果は3.5です。
サイコロに3.5の目はありませんが、長期的な平均としての中心を表しているため、矛盾ではありません。
期待値は保険料、ゲームの得点、投資の収益見込みなどを考える際にも活用されます。
分散と標準偏差の計算方法
続いては、分散と標準偏差の計算方法を確認していきます。
定義式による分散の求め方
分散を定義式で求めるときは、最初に期待値を計算します。
その後、各値から期待値を引き、二乗し、確率を掛けて合計する流れです。
確率変数Xが1、2、3を取り、それぞれの確率が0.2、0.5、0.3である場合を考えます。
この分布の期待値は2.1でした。
値が1の場合は、{1-2.1}²×0.2を計算します。
値が2と3の場合も同様に計算し、それらを合計したものが分散です。
平均との差をそのまま合計すると0になってしまうため、二乗する必要があります。
変形公式による効率的な計算
分散はV(X)=E(X²)-{E(X)}²という変形公式で求めると、表計算がしやすくなります。
まず各値を二乗し、その値に確率を掛けてE(X²)を求めます。
| Xの値 | 確率 | X² | X²P(X=x) |
|---|---|---|---|
| 1 | 0.2 | 1 | 0.2 |
| 2 | 0.5 | 4 | 2.0 |
| 3 | 0.3 | 9 | 2.7 |
| 合計 | 1.0 | 4.9 |
E(X²)は4.9であり、E(X)は2.1です。
したがって分散は4.9-2.1²となり、0.49になります。
分散の値は原則として0以上です。
分散が0となるのは、確率変数が常に同じ値だけを取る場合に限られます。
標準偏差による比較
上の例で分散が0.49なら、標準偏差は√0.49で0.7です。
この0.7は、確率変数が期待値2.1から平均的にどの程度離れているかを判断する目安になります。
分散と標準偏差の使い分け
分散は計算や理論で使われやすい指標です。
標準偏差は元の値と同じ単位で表せるため、実務やデータ比較で読み取りやすい指標になります。
平均だけで二つの分布を比較すると、ばらつきの違いを見落とすおそれがあります。
期待値と標準偏差は、組み合わせて確認することが大切です。
代表的な確率分布の公式
続いては、代表的な確率分布の公式を確認していきます。
二項分布の期待値と分散
二項分布は、成功か失敗かの二つの結果を持つ試行を、独立にn回繰り返すときに使う分布です。
例えば、成功確率pの試行を10回行ったときの成功回数は二項分布に従います。
二項分布B(n,p)の公式
期待値E(X)=np
分散V(X)=np(1-p)
標準偏差σ=√{np(1-p)}
成功確率が0.4で試行回数が10回なら、期待値は4です。
成功回数が毎回ちょうど4回になる意味ではなく、繰り返したときの平均が4回付近になることを示します。
二項分布では試行回数と成功確率を先に確認すると、公式を選びやすくなります。
ポアソン分布の期待値と分散
ポアソン分布は、一定の時間や空間の中で起こる事象の回数を扱う確率分布です。
一定時間に届く電話の件数、ある範囲に現れる不良品数などが例として挙げられます。
パラメータをλとするポアソン分布では、期待値と分散がどちらもλになります。
E(X)=λ、V(X)=λです。
平均発生回数が大きくなるほど、分散も大きくなります。
ただし、発生の独立性や平均発生率が一定であることなど、適用には条件があります。
正規分布の平均と分散
正規分布は、平均の周辺に値が集まり、左右対称の釣鐘型を描く連続型の確率分布です。
平均をμ、分散をσ²とする正規分布は、N(μ,σ²)と表されます。
このとき期待値はμ、分散はσ²です。
正規分布では、平均から標準偏差1個分の範囲に、全体のおよそ68パーセントが入るという性質が知られています。
平均から標準偏差2個分の範囲では、およそ95パーセントが入ります。
正規分布では平均と標準偏差が形を決めるため、二つの数値をセットで読み取る必要があります。
計算ミスを防ぐ確認ポイント
続いては、計算ミスを防ぐ確認ポイントを確認していきます。
確率の合計の確認
確率分布表を使う問題では、最初に確率の合計が1になるか確認してください。
離散型確率変数で各確率を足して1にならない場合、その表は確率分布として成立しません。
未知数を含む問題では、この性質を使って未知数を決めることもあります。
例えば確率が0.1、a、0.4と並んでいれば、aは0.5です。
計算を始める前の小さな確認が、後の大きな計算ミスを防ぎます。
二乗する範囲の確認
分散の計算では、二乗する範囲を取り違えやすい点に注意が必要です。
V(X)=E(X²)-{E(X)}²では、最初の項はXを二乗してから期待値を求めます。
二つ目の項は、期待値を求めた後で全体を二乗します。
E(X²)と{E(X)}²は同じではありません。
二乗の位置を括弧で明確に書くことで、途中式の誤りを減らせるでしょう。
分散計算の注意点
E(X²)は、各値の二乗を平均したものです。
{E(X)}²は、平均した値を二乗したものです。
この二つを混同しないことが、分散計算の基本になります。
条件付き確率との混同
確率分布の問題には、条件付き確率や独立性が同時に登場することがあります。
条件付き確率は、ある事象が起きたという条件のもとで別の事象の確率を考える方法です。
一方、期待値は確率変数の平均的な値を求める考え方になります。
問題文に複数の確率が出てきても、何を求める段階なのかを分けて整理してください。
分布表を完成させてから期待値や分散の公式へ進むと、計算過程がわかりやすくなります。
確率分布の公式のまとめ
確率分布の公式では、期待値E(X)=ΣxP(X=x)と、分散V(X)=E(X²)-{E(X)}²が特に重要です。
連続型の確率分布では合計の代わりに積分を使いますが、平均的な位置とばらつきを調べるという目的は同じです。
二項分布では期待値がnp、分散がnp(1-p)となり、ポアソン分布では期待値と分散がともにλになります。
正規分布では平均μと分散σ²を確認することで、分布の中心と広がりを把握できます。
期待値、分散、標準偏差を一連の流れで計算することが、確率分布を正確に理解する近道です。
確率の合計、二乗する位置、分布の種類を確認しながら、表を使って丁寧に計算してみてください。