「存じ上げません」の敬語(尊敬語・丁寧語・謙譲語)は?ビジネスメールでの使い方と例文も!言い換え表現も解説!
取引先や上司から質問を受けた際、知らない内容を失礼なく伝えたい場面は少なくありません。
そのときに使われる「存じ上げません」は便利な表現ですが、対象が人か事柄かによっては不自然になることもあります。
本記事では、敬語の種類、正しい使い方、ビジネスメールの例文、状況別の言い換えまで分かりやすく整理します。
「存じ上げません」の敬語一覧表

それではまず、「存じ上げません」の敬語としての位置付けと、場面に合う表現について解説していきます。
敬語分類と基本的な意味
「存じ上げません」は、相手より自分を低く表現する謙譲語です。
「存じる」は「知る」の謙譲語であり、「上げる」が付いた「存じ上げる」は、主として人物を知っている場合に用います。
そのため、「田中様のことは存じ上げません」は自然ですが、「その制度は存じ上げません」とすると、やや不自然に聞こえる場合があります。
| 表現 | 敬語の種類 | 主な対象 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 存じ上げません | 謙譲語 | 人物や会社 | 面識や知識がないこと |
| 存じません | 謙譲語 | 事柄や情報 | 知らないこと |
| 知りません | 普通語 | 人物や事柄 | 知識がないこと |
| ご存じありません | 尊敬語 | 相手 | 相手が知っていないこと |
| 承知しておりません | 謙譲語 | 業務上の情報 | 把握していないこと |
相手に対して「ご存じありませんか」と尋ねる場合は尊敬語になり、自分について「存じ上げません」と述べる場合は謙譲語になります。
誰について知っているか、何を把握しているかを意識すると、敬語の選択を誤りにくくなるでしょう。
人物と事柄による使い分け
人物、企業、団体について知らないと伝えるときは、「存じ上げません」が適しています。
一方で、商品の仕様、会議の決定事項、社内ルール、数字などの情報には「存じません」や「承知しておりません」を選ぶのが基本です。
人物に関する例文
申し訳ございませんが、その会社のご担当者様については存じ上げません。
事柄に関する例文
恐れ入りますが、その件の経緯については存じません。
ただし、実務では「その件は存じ上げません」も広く使われています。
完全な誤用とまではいえませんが、丁寧さと正確さを両立したいメールでは、対象に応じて言葉を選ぶほうが安心です。
特に社外メールでは、人物には存じ上げません、内容には存じませんという目安を覚えておくと役立ちます。
尊敬語と丁寧語との違い
「存じ上げません」には尊敬語としての用法はありません。
尊敬語は相手や第三者の動作を高める表現であり、「ご存じです」「ご存じありません」が該当します。
また、「知りません」に「です」を加えた「知りませんです」は不自然です。
丁寧に伝えたい場合でも、単純に語尾だけを整えるのではなく、敬語そのものを選び直す必要があります。
自分が知らない場合は「存じません」「承知しておりません」を使います。
相手が知っているかを尋ねる場合は「ご存じでしょうか」を使うのが、敬意のある基本形です。
ビジネスメールにおける基本表現
続いては、ビジネスメールで「存じ上げません」を使う際の基本表現を確認していきます。
謝意を添える書き方
知らないことだけを短く返すと、冷たい印象や突き放した印象につながることがあります。
「申し訳ございませんが」「恐れ入りますが」「あいにくですが」などのクッション言葉を添えると、柔らかな文面になります。
たとえば、「申し訳ございませんが、そちらの担当者様については存じ上げません」と書けば、否定を伝えながらも配慮が伝わります。
相手が困っている状況なら、回答できない理由だけで終わらせず、次の対応も示すことが大切です。
メールの基本形
お問い合わせいただきありがとうございます。
申し訳ございませんが、当該部署の担当者については存じ上げません。
確認のうえ、分かり次第ご連絡いたします。
お詫びと次の行動を組み合わせることで、単なる回答から信頼を保つ連絡へと変わります。
確認対応を約束する書き方
その場で答えられない場合は、確認先や回答予定を添えると、相手が安心しやすくなります。
「確認いたします」「担当部署へ確認のうえ回答いたします」「詳細を調査いたします」といった表現が使えます。
ただし、確認する予定がないのに定型句として書くのは避けましょう。
約束した対応を忘れると、敬語が丁寧であっても信頼を損なうおそれがあります。
| 状況 | 適した表現 | 後に続ける内容 |
|---|---|---|
| 担当者を知らない | 存じ上げません | 窓口を確認する旨 |
| 資料内容を把握していない | 承知しておりません | 資料を確認する旨 |
| 記録が見つからない | 確認いたしましたが把握できておりません | 調査方法や期限 |
| 回答権限がない | 私では判断いたしかねます | 担当者へ引き継ぐ旨 |
「分かりません」よりも、現在把握できていないという事実を伝える表現のほうが、業務上の誠実さを示しやすいでしょう。
返信文の構成
ビジネスメールでは、結論だけでなく、相手が次に何をすればよいかまで見通せる構成が理想です。
冒頭で問い合わせへの感謝を伝え、中ほどで現状を説明し、最後に対応方針を示す流れが分かりやすい形になります。
お問い合わせの件につきまして、ご連絡いただきありがとうございます。
恐縮ですが、私自身はその件の詳しい経緯を存じません。
関係部署に確認し、明日中を目安に改めてご回答いたします。
このように書けば、知らないという事実を隠さずに、責任ある対応を伝えられます。
回答期限を示す際は、実現可能な日時にすることも重要なポイントです。
状況別の例文とメール文面
続いては、相手や目的に合わせた「存じ上げません」の例文を確認していきます。
取引先への問い合わせ返信
取引先から担当者や過去の商談について尋ねられた場合、面識がない人物であれば「存じ上げません」を使えます。
相手の名前を直接知らない場合でも、呼び捨てにせず「ご担当者様」「○○様」と敬称を付けるのが基本です。
件名に関するご返信
お問い合わせの担当者様につきましては、恐縮ですが私では存じ上げません。
社内で確認いたしますので、少々お時間をいただけますでしょうか。
「私では存じ上げません」とすると、自分の知識の範囲に限った回答だと伝わります。
会社全体が知らないと断定する印象を避けられるため、窓口対応では使いやすい表現です。
上司や社内関係者への報告
上司に対しては、過度にへりくだるより、状況を明確に報告することが優先されます。
「存じ上げません」でも失礼ではありませんが、社内の業務情報には「承知しておりません」「確認が取れておりません」が自然な場合も多いでしょう。
例として、「その案件の経緯については承知しておりません。前任者に確認いたします」と伝えると、簡潔で実務的です。
謝罪が必要なケースでは、「確認不足で申し訳ございません」を加えるとよいでしょう。
ただし、自分に責任がない内容まで必要以上に謝ると、事実関係が曖昧になることがあります。
知らない理由と確認方法を冷静に伝える姿勢が、社内コミュニケーションでは特に大切です。
電話後のお礼メール
電話中に回答できなかった内容をメールで補足する際にも、「存じ上げません」は使えます。
電話で聞き取れなかったことや判断できなかったことを、そのまま放置しないことが重要です。
本日はお電話をいただき、ありがとうございました。
お尋ねいただいた○○様については、当方では存じ上げませんでした。
確認したところ、担当窓口は営業企画部でございましたので、必要に応じてご案内いたします。
電話中の曖昧な返答を、メールで正確に訂正することは失礼ではありません。
むしろ情報の行き違いを防ぎ、記録を残せるため、丁寧な仕事として受け取られやすいでしょう。
自然な言い換え表現
続いては、「存じ上げません」を繰り返さないための言い換え表現を確認していきます。
情報を把握していない場合
案件の進捗、資料の内容、決定事項などを知らないときは、「承知しておりません」が便利です。
「存じません」よりも、業務として認識していないニュアンスが明確になります。
たとえば、「その変更については承知しておりませんでした」と書けば、連絡を受けていない、または情報共有がされていない可能性も伝えられます。
| 言い換え | 向いている場面 | 印象 |
|---|---|---|
| 承知しておりません | 業務情報や連絡事項 | 実務的で丁寧 |
| 把握しておりません | 全体状況や数値 | やや客観的 |
| 確認が取れておりません | 事実関係が未確定 | 慎重で誠実 |
| お答えいたしかねます | 権限外や回答困難な内容 | 明確な断り |
「把握しておりません」は、情報が存在しないのではなく、現時点で自分が全体を確認できていないという意味合いです。
会議の進行状況や在庫数など、変動する情報にもなじみます。
回答が難しい場合
個人情報、契約内容、社内方針など、知っていても答えられない内容があります。
この場合に「存じ上げません」を使うと、事実と異なる説明になるおそれがあります。
回答できない理由をぼかしたい場合でも、「お答えいたしかねます」「確認のうえ担当部署よりご案内いたします」などを選びましょう。
知らないことと、答えられないことは別の問題です。
敬語の正しさだけでなく、説明内容が正確かどうかにも注意する必要があります。
相手に確認を求める場合
相手が情報を知っているかを尋ねるなら、「ご存じでしょうか」「ご認識いただいておりますでしょうか」を用います。
「存じ上げませんか」は、自分の動作に用いる謙譲語を相手に向ける形になるため、避けたほうがよい表現です。
例として、「本件について、すでにご存じでしょうか」と書けば、角の立たない確認になります。
より慎重に聞きたい場合は、「差し支えなければ、ご確認済みかお聞かせいただけますでしょうか」とすると柔らかい印象です。
ただし、丁寧な表現を重ねすぎると読みにくくなるため、相手との関係に応じて簡潔に整えましょう。
誤用を避けるための注意点
続いては、「存じ上げません」を使用する際に注意したい誤用と判断基準を確認していきます。
対象を取り違える表現
最も多い注意点は、人物以外の対象にも「存じ上げません」を機械的に使うことです。
「納期を存じ上げません」「仕様を存じ上げません」より、「納期は承知しておりません」「仕様は把握しておりません」のほうが自然です。
ただし、言葉は実際の使用の中で幅を持つため、一律に誤りと決め付ける必要はありません。
相手に読みやすく、意図が伝わる表現を選ぶことが何より大切です。
人への知識か、情報の把握かという違いを確認するだけで、多くの迷いを解消できます。
二重敬語と過剰表現
「存じ上げております」は適切ですが、「ご存じ上げております」のような表現は不自然です。
「ご存じ」は尊敬語、「存じ上げる」は謙譲語なので、同じ動詞の中で混ぜないようにしましょう。
また、「存じ上げませんでしたでしょうか」のように敬語と推量を重ねると、意味が曖昧になります。
伝えたい内容が現在の知識不足なら、「存じ上げません」で十分です。
過度な敬語よりも、短く正確な文章のほうが、読み手に配慮したメールになります。
断定を和らげる工夫
「知りません」と断定するより、「現時点では確認できておりません」「私の把握する限りでは存じ上げません」とすると、柔らかい印象になります。
ただし、責任を逃れるような曖昧表現を重ねるのは逆効果です。
必要に応じて、確認担当、回答予定、代替窓口を明示しましょう。
避けたい書き方
分かりませんので、そちらで確認してください。
整えた書き方
恐れ入りますが、現時点では当方で確認が取れておりません。担当部署に確認のうえ、ご案内いたします。
相手の手間を減らす一文を加えるだけで、メールの印象は大きく変わります。
まとめ
「存じ上げません」は、自分が人物や企業を知らないことを丁寧に伝える謙譲語です。
事柄や業務情報には「存じません」「承知しておりません」「把握しておりません」などを使い分けると、より自然な敬語表現になります。
ビジネスメールでは、知らないと伝えるだけで終わらせず、お詫び、確認方法、回答予定を添えることが重要です。
正しい敬語と誠実な対応を両立させることで、相手に安心感を与えられるでしょう。