取引先への請求、上司への報告、経理部門への依頼など、ビジネスでは支払いに関する連絡が頻繁に発生します。
「支払う」は日常的な言葉だからこそ、相手や場面に合う敬語を選べているか不安になる方も多いでしょう。
特に「お支払いになる」と「お支払いいたします」は、主語が誰かによって使い分ける必要があります。
本記事では、尊敬語、謙譲語、丁寧語の違いを整理しながら、メールでそのまま使える例文や自然な言い換え表現を紹介します。
「支払う」の敬語の一覧表

それではまず「支払う」の敬語について解説していきます。
最初に結論を押さえると、相手の行為には「お支払いになる」、自分側の行為には「お支払いいたします」を使うのが基本です。
誰が支払うのかを確認してから表現を選ぶことが、敬語の誤用を防ぐ最も確実な方法でしょう。
| 分類 | 基本表現 | 主語 | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|
| 尊敬語 | お支払いになる | 取引先、上司、顧客 | 相手の入金予定や支払い完了を尋ねる場面 |
| 尊敬語 | ご決済になる | 顧客、取引先 | クレジットカードやオンライン決済の案内 |
| 謙譲語 | お支払いいたします | 自分、自社 | 請求書への対応や入金予定の連絡 |
| 謙譲語 | 送金いたします | 自分、自社 | 銀行振込を行うことの報告 |
| 丁寧語 | 支払います | 自分側 | 社内での簡潔な会話や一般的な案内 |
| 丁寧な言い換え | 入金いたします | 自分、自社 | 請求金額を振り込む連絡 |
尊敬語としての「お支払いになる」
相手、取引先、顧客、目上の方が支払う行為には「お支払いになる」を用います。
「お支払い」は「支払う」に接頭語の「お」を付け、「なる」を添えて相手を立てる尊敬表現です。
たとえば、請求書の送付後に入金予定日を確認したい場合は、「恐れ入りますが、お支払い予定日をお知らせいただけますでしょうか」と書けます。
「いつお支払いになりますか」と直接的に尋ねるよりも、相手の都合への配慮が伝わりやすい表現です。
ただし、期限を過ぎた未入金について連絡する際は、相手を責める印象を避ける工夫も欠かせません。
例文
お手数をおかけいたしますが、請求書をご確認のうえ、お支払いのお手続きをお願い申し上げます。
「お支払いいただく」は、相手に支払いをしてもらうことを丁寧に表す言い方です。
依頼文では「お支払いになる」よりも、「お支払いいただく」を使うと文章が自然に収まる場合も多いでしょう。
謙譲語としての「お支払いいたします」
自分または自社が代金を支払うことを相手へ伝える際は、「お支払いいたします」が適切です。
「いたす」は「する」の謙譲語であり、自分側の行為をへりくだって示します。
「お支払いいたします」は社外メールで最も使いやすい基本表現と考えてよいでしょう。
「明日までにお支払いいたします」と書けば、支払う意思と期日を明確に伝えられます。
支払い方法まで添えるなら、「指定口座へ銀行振込にてお支払いいたします」のようにまとめると丁寧です。
なお、自社が受け取る側であるにもかかわらず「お支払いいたします」と書くと、意味が反対になるため注意が必要です。
請求書を受け取った側が使う表現は「お支払いいたします」です。
請求書を発行した側が相手の入金について述べる場合は、「お支払いいただきます」や「ご入金いただきます」を用います。
丁寧語としての「支払います」
「支払います」は「支払う」に丁寧語の「ます」を加えた表現です。
文法上は失礼ではありませんが、重要な取引先や正式なメールでは、やや簡潔すぎる印象になることがあります。
社内の同僚に対して「経費は私が支払います」と伝える程度であれば、十分に自然な言い方です。
一方、社外では「私どもでお支払いいたします」「期日までに入金いたします」と言い換えるほうが、相手への敬意が伝わります。
相手の行為に「支払います」を使う場合も、敬意が足りなく見える可能性があります。
取引先に対しては「お支払いになりますか」より、「お支払い予定についてお聞かせいただけますでしょうか」とするほうが穏やかでしょう。
支払い相手別の使い分け
続いては支払い相手別の使い分けを確認していきます。
敬語は言葉だけでなく、支払いをする人と受け取る人の関係によっても選び方が変わります。
取引先へ送る請求と入金確認
自社が請求する立場では、相手に支払いを依頼したり、入金の状況を確認したりする機会があります。
この場合、「ご入金」「お支払い」「お振込み」を使うと、金銭の話題を必要以上に直接的にしない文章になります。
| 目的 | 適した表現 | 避けたい表現 |
|---|---|---|
| 請求書を送る | お支払いのお手続きをお願いいたします | 支払ってください |
| 期日を案内する | お支払い期日は月末となります | 月末までに払ってください |
| 入金予定を聞く | ご入金予定日をご教示いただけますでしょうか | いつ払いますか |
| 入金を確認する | ご入金を確認いたしました | 払ったことを確認しました |
| 未入金を知らせる | 現時点でご入金の確認ができておりません | まだ払われていません |
入金確認の連絡では、事実を簡潔に示し、行き違いの可能性にも触れると角が立ちにくくなります。
「すでにお手続き済みの場合は、ご容赦くださいますようお願い申し上げます」という一文があると安心です。
自社が支払う場合の連絡
自社が発注者で、取引先へ代金を振り込む側なら、「お支払いいたします」や「送金いたします」が中心になります。
支払いの予定日、金額、振込先を必要に応じて記載し、相手が確認しやすい内容に整えましょう。
支払いの意思だけでなく、予定日と方法を明記することで、経理担当者の確認負担も軽くなります。
例文
ご請求内容を確認いたしました。請求書記載の期日までに、指定口座へお支払いいたします。
すでに振込を終えた場合は、「本日、代金をお振込みいたしました」と過去形にします。
振込名義が会社名と異なる場合には、「振込名義は株式会社○○となります」と補足すると、着金確認が円滑です。
顧客へ案内する場合の表現
顧客に支払い方法を案内する場合は、命令的な印象を避けながら、必要な手続きをわかりやすく示すことが大切です。
「お支払いください」だけでは事務的に感じられることがあるため、「お支払いのお手続きをお願いいたします」とすると柔らかくなります。
複数の決済手段がある場合は、選べる方法と期限を表にして示すと、問い合わせの減少にもつながるでしょう。
| 支払い方法 | 案内文の例 | 補足事項 |
|---|---|---|
| 銀行振込 | 指定口座へお振込みをお願いいたします | 振込手数料の負担者を明記 |
| クレジットカード | 決済画面よりお支払い手続きをお願いいたします | 利用可能なブランドを案内 |
| 請求書払い | 請求書記載の期日までにお支払いください | 支払期日と口座情報を確認 |
| 店頭払い | ご来店時にお支払いいただけます | 対応可能な決済方法を記載 |
ビジネスメールの例文
続いてはビジネスメールの例文を確認していきます。
定型表現を覚えておくと、請求、支払い、督促といった繊細な連絡でも落ち着いて対応できます。
支払い予定を伝えるメール
請求書を受領したことと、支払いの予定を伝えるメールでは、確認済みであることを先に示すと誠実な印象になります。
件名 請求書受領およびお支払い予定のご連絡
お送りいただいた請求書を確かに受領いたしました。
内容を確認のうえ、記載の支払期日までにお支払いいたします。
何卒よろしくお願い申し上げます。
支払いが遅れる可能性がある場合は、判明した時点で早めに連絡することが重要です。
「誠に恐縮ではございますが、社内手続きの都合により、お支払いを翌月五日に変更させていただけますでしょうか」と、事情と希望日を具体的に伝えましょう。
一方的な変更通知にならないよう、相手の了承を求める形にする配慮が必要です。
入金を確認したメール
相手からの入金を確認した際は、感謝と確認完了を短く伝えるのが基本です。
「このたびは早速ご入金いただき、誠にありがとうございます。本日、確かに入金を確認いたしました」と書けば、自然で丁寧な連絡になります。
「お支払いいただき」は相手の支払いに使う表現であり、「お支払いいたし」は自社の支払いに使う表現です。
似ているため混同しやすいものの、敬意を向ける相手が異なります。
入金確認のメールでは、金額や対象請求書を必要に応じて記載します。
複数案件がある相手には「請求書番号○○分として」と添えると、確認の行き違いを防げます。
未入金を確認するメール
未入金の連絡は、相手が単に見落としているだけの場合もあるため、強い言葉を避けることが大切です。
まずは「行き違いでしたら恐縮ですが」と前置きし、入金の確認ができていない事実と対象の請求内容を伝えます。
「○月○日をお支払い期日としておりました請求書につきまして、現時点でご入金を確認できておりません」とすれば、感情を交えずに伝えられます。
そのうえで、「お手数をおかけいたしますが、ご確認のほどお願いいたします」と結ぶとよいでしょう。
電話での確認を希望する場合にも、メールで請求書番号や金額を先に示しておくと、会話がスムーズになります。
「支払う」の言い換え表現
続いては「支払う」の言い換え表現を確認していきます。
「支払う」を繰り返さず、取引内容に合う言葉へ置き換えると、文章がより正確で読みやすくなります。
入金と振込の使い分け
「入金」は、お金が口座に入る結果に着目した言葉です。
請求する側から見れば「ご入金」、支払う側から見れば「入金いたします」と表現できます。
「振込」は、銀行口座へ送金する方法に着目した言葉です。
そのため、現金払い、カード決済、口座振替などを含む広い意味では「支払い」や「入金」を使い、銀行送金に限る場合は「振込」を使うと明確です。
入金はお金が入る結果、振込は送金する方法と覚えると、使い分けやすくなります。
決済と精算の使い分け
「決済」は、商品やサービスの代金を支払って取引を完了させる意味で使われます。
オンラインショップやカード会社からの案内では、「決済を完了する」「決済方法を選択する」といった表現が一般的です。
「精算」は、立替金、経費、交通費などを計算して差額を清算する場面に適しています。
たとえば、出張費については「経費を精算いたします」、飲食店では「お会計をお願いいたします」とするほうが自然でしょう。
| 言い換え | 意味 | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 入金 | お金を口座へ入れること | 請求書、着金確認 |
| 振込 | 金融機関を通じて送金すること | 銀行口座への送金 |
| 決済 | 代金の支払いを完了すること | カード、オンラインサービス |
| 精算 | 費用や差額を計算して処理すること | 経費、立替金、会計 |
| 送金 | 金銭を相手へ送ること | 海外送金、銀行送金 |
負担と立替の表現
費用を誰が支払うのかを示したいときは、「負担する」や「立て替える」も便利です。
「振込手数料は貴社にてご負担ください」と書けば、手数料の支払者を明確にできます。
ただし、依頼する場合は「振込手数料は恐れ入りますが、貴社にてご負担いただけますと幸いです」とすると柔らかい印象です。
「立て替える」は、いったん自分が支払い、後から返金を受ける意味を持ちます。
経費に関する連絡では、「私が一時的に立て替えておりますので、後日精算をお願いいたします」と表現できます。
支払いの方法、負担者、時期を分けて書くと、金銭に関する認識違いを減らせます。
敬語表現で注意したい誤用
続いては敬語表現で注意したい誤用を確認していきます。
「支払う」の敬語には、二重敬語や主語の取り違えなど、ビジネスメールで起こりやすい注意点があります。
「お支払いいただかれる」の誤り
「お支払いいただかれる」は、「いただく」と「れる」を重ねた不自然な表現です。
相手に支払ってもらう意味なら、「お支払いいただく」だけで十分に敬意が表せます。
相手の動作を尊敬語で述べるなら、「お支払いになる」を使います。
敬語を重ねれば丁寧になるわけではなく、かえって読みにくくなることがあります。
誤った例 ご利用料金をお支払いいただかれますようお願いいたします。
適切な例 ご利用料金をお支払いいただきますようお願いいたします。
「お支払いいたします」の主語の誤り
「お支払いいたします」は、自分または自社の行為に使う謙譲語です。
そのため、取引先の入金予定を聞くメールで「いつお支払いいたしますか」と書くことはできません。
この場合は、「お支払い予定日をお知らせいただけますでしょうか」や「ご入金予定についてご教示ください」が適切です。
謙譲語は自分側を低める表現であり、相手側には使わないという原則を意識しましょう。
部署や会社を主語にする場合も、自社をへりくだる扱いになるため、「弊社よりお支払いいたします」と書けます。
過度に直接的な督促表現
「至急支払ってください」「まだ支払っていません」といった書き方は、事情を知らない段階では強い印象を与えます。
期日管理が必要な場面でも、事実、確認依頼、希望期限の順に整理すると、丁寧さと実務性を両立できます。
例文
行き違いでしたら恐縮ですが、請求書番号○○につきまして、ご入金の確認ができておりません。
お手数をおかけいたしますが、○月○日までにご確認いただけますでしょうか。
社内規定や契約上の対応が必要な場合には、感情的な表現を避けつつ、次の手続きも明確に案内します。
相手との関係を保ちながら、必要な情報を漏れなく伝える姿勢が重要です。
支払い連絡のまとめ
「支払う」の敬語は、相手の行為には「お支払いになる」や「お支払いいただく」、自分側の行為には「お支払いいたします」を用いるのが基本です。
社外メールでは、「支払います」よりも「お支払いいたします」「ご入金いたします」としたほうが、丁寧で自然な印象になります。
請求や未入金確認では、支払いを促す言葉だけでなく、請求書番号、金額、支払期日、行き違いへの配慮を添えることが大切です。
誰が支払うのか、どの方法で、いつ支払うのかを明確にすれば、敬語表現も実務連絡も整います。
「入金」「振込」「決済」「精算」といった言い換えも場面に応じて使い、相手に伝わりやすいビジネスメールを作成しましょう。