物理学において運動方程式は、物体の運動を数式で記述する最も基本的な方法です。自由落下は運動方程式を学ぶ上で最適な題材であり、ニュートンの運動法則を理解する入り口となります。
本記事では、自由落下の運動方程式の立て方と解き方を詳しく解説し、基本的なma=mgの形から、空気抵抗を含む場合の微分方程式まで幅広く説明していきます。運動方程式を正しく立てて解く力は、物理学習の基礎となるでしょう。
それでは、自由落下の運動方程式について順を追って見ていきましょう。
運動方程式の基本形
それではまず運動方程式の基本形について解説していきます。
ニュートンの運動方程式
ニュートンの運動の第2法則によれば、物体に働く力Fと加速度aの間には F = ma という関係があります。これが運動方程式の基本形です。
ここで、mは物体の質量、aは加速度を表します。この式は「物体に力を加えると、力に比例した加速度が生じる」ことを意味しているのです。
運動方程式は、物体にどのような力が働いているかを正確に把握し、それらをベクトル的に足し合わせることで立てられます。力の向きと大きさを正しく認識することが重要でしょう。
自由落下における力
自由落下する物体には、重力のみが働きます。質量mの物体に働く重力の大きさはmgであり、向きは鉛直下向きです。
下向きを正の方向とすると、重力は+mgと表されます。空気抵抗などの他の力を無視すると、物体に働く力の合計はmgだけとなるのです。
【自由落下に働く力】
重力:F = mg(下向き)
その他の力:なし(理想的な自由落下)
合力:F = mg
自由落下の運動方程式 ma = mg
ニュートンの運動方程式 F = ma に、自由落下で働く力 F = mg を代入すると、ma = mg という式が得られます。これが自由落下の運動方程式です。
両辺をmで割ると、a = g となります。つまり、自由落下する物体の加速度は常に重力加速度gに等しいのです。
この結果は質量mに依存しません。1kgの物体も100kgの物体も、同じ加速度gで落下することを示しているでしょう。これがガリレオが発見した「落体の法則」の数学的表現なのです。
| ステップ | 式 | 説明 |
|---|---|---|
| 運動方程式 | F = ma | 基本形 |
| 力の代入 | mg = ma | 重力のみが働く |
| 両辺をmで割る | g = a | 加速度はg |
運動方程式の立て方
続いては運動方程式の立て方を確認していきます。
座標系の設定
運動方程式を立てる最初のステップは、座標系を設定することです。自由落下では、通常、鉛直下向きを正の方向とします。
座標軸の原点は、落下開始位置や地面など、問題に応じて適切に設定します。座標系を明確にすることで、力や速度の符号が決まるため、非常に重要なステップなのです。
力の図示と分析
次に、物体に働くすべての力を図に描きます。これを自由体図(フリーボディダイアグラム)と呼びます。自由落下では重力mgだけを描けばよいでしょう。
各力について、向きと大きさを正確に把握することが重要です。力の向きが座標軸の正の向きと一致すれば正、逆向きなら負の符号をつけます。
複数の力が働く場合は、すべての力をベクトル的に足し合わせて合力を求めます。自由落下では合力は単にmgとなります。
運動方程式の記述
力の分析が終わったら、F = ma の形で運動方程式を立てます。左辺には合力、右辺には質量×加速度を書くのです。
【運動方程式を立てる手順】
1. 座標系を設定する(正の向きを決める)
2. 物体に働くすべての力を図示する
3. 各力の成分を座標軸方向に分解する
4. 合力を計算する
5. F = ma の形で運動方程式を書く
自由落下の場合、下向き正とすると、mg = ma となります。上向き正とした場合は、-mg = ma と符号が変わることに注意しましょう。
運動方程式の解き方
続いては運動方程式の解き方を確認していきます。
加速度から速度を求める
運動方程式 ma = mg から a = g が得られます。加速度aは速度の時間微分なので、a = dv/dt = g という微分方程式になるのです。
この式を積分すると速度が求まります。両辺を時間tで積分すると、∫dv = ∫g dt より、v = gt + C(Cは積分定数)となるでしょう。
初期条件として、t = 0 のとき v = 0(静止状態から落下開始)を代入すると、0 = 0 + C より C = 0 となります。したがって、速度は v = gt と求まるのです。
速度から位置を求める
速度v = gtがわかったので、これを積分すると位置(変位)が求まります。v = dx/dt = gt という関係があるため、両辺を積分します。
∫dx = ∫gt dt より、x = (1/2)gt² + C’(C’は積分定数)となります。初期条件 t = 0 のとき x = 0 を代入すると、C’ = 0 となるでしょう。
したがって、変位は x = (1/2)gt² と求まります。これが自由落下の基本公式です。
【運動方程式から公式を導出】
運動方程式:ma = mg → a = g
1回積分:v = gt + C → v = gt(初期条件より)
2回積分:x = (1/2)gt² + C’ → x = (1/2)gt²(初期条件より)
速度と位置の関係式
v = gt と x = (1/2)gt² から時間tを消去すると、速度と位置の直接的な関係式が得られます。
v = gt より t = v/g を x = (1/2)gt² に代入すると、x = (1/2)g(v/g)² = v²/2g となります。整理すると、v² = 2gx という関係式が得られるでしょう。
この式は、時間を経由せずに速度と変位を関係づける便利な公式です。落下距離がわかれば直接速度が求められます。
| 公式 | 使う場面 | わかるもの→求めるもの |
|---|---|---|
| v = gt | 時間から速度 | t → v |
| x = (1/2)gt² | 時間から変位 | t → x |
| v² = 2gx | 変位から速度 | x → v |
空気抵抗を含む運動方程式
続いては空気抵抗を含む運動方程式を確認していきます。
空気抵抗がある場合の運動方程式
実際の落下では空気抵抗が働きます。空気抵抗の大きさを速度に比例すると仮定すると、抵抗力は F = -kv と表されます(kは抵抗係数、負号は速度と逆向きであることを示す)。
下向き正の座標系で運動方程式を立てると、ma = mg – kv となります。重力mgは下向き(正)、空気抵抗kvは上向き(負)なのです。
【空気抵抗を含む運動方程式】
ma = mg – kv
m(dv/dt) = mg – kv
dv/dt = g – (k/m)v
微分方程式の解法
空気抵抗を含む運動方程式は、速度vを含む微分方程式となります。dv/dt = g – (k/m)v という形です。
この微分方程式は変数分離法で解けます。dv/(g – (k/m)v) = dt として両辺を積分すると、速度の時間変化が求まるのです。
積分を実行すると、-(m/k)ln|g – (k/m)v| = t + C となります。初期条件 t = 0 で v = 0 を用いて積分定数Cを決定し、整理すると次の解が得られるでしょう。
【空気抵抗がある場合の速度】
v(t) = (mg/k)(1 – e^(-kt/m))
= v∞(1 – e^(-t/τ))
v∞ = mg/k:終端速度
τ = m/k:時定数
終端速度への到達
時間が十分経過すると(t → ∞)、指数関数の項 e^(-kt/m) がゼロに近づくため、速度は v∞ = mg/k に漸近します。これが終端速度です。
終端速度では、重力mgと空気抵抗kvがつりあい(mg = kv∞)、加速度がゼロとなります。これ以上速度は増加せず、等速直線運動に移行するのです。
終端速度の大きさは、質量mに比例し、抵抗係数kに反比例します。重い物体ほど、また抵抗を受けにくい形状ほど、終端速度は大きくなるでしょう。
まとめ
自由落下の運動方程式は ma = mg であり、両辺をmで割ると a = g となります。この式を積分することで、速度 v = gt、変位 x = (1/2)gt² という基本公式が導出できます。
運動方程式を立てるには、座標系の設定、力の分析、F = ma の形での記述という手順を踏みます。空気抵抗を含む場合、運動方程式は m(dv/dt) = mg – kv という微分方程式となり、解くと速度は終端速度 v∞ = mg/k に漸近することがわかります。
運動方程式を正しく立てて解く技術は、物理学の基礎であり、様々な運動現象を理解する上で不可欠なスキルとなるでしょう。