物理学において変位を正確に計算することは、物体の運動を理解する上で不可欠です。速度や加速度から変位を求める方法を習得することで、様々な運動問題を解く力が身につきます。
本記事では、変位計算の方法と公式、求め方を詳しく解説し、加速度からの変位、速度からの変位の計算方法について説明していきます。物理基礎レベルから応用まで、実践的な計算技術を身につけましょう。
それでは、変位計算について順を追って見ていきましょう。
変位とは何か
それではまず変位とは何かについて解説していきます。
変位の定義
変位とは、物体の位置の変化をベクトルで表したものです。始点から終点への直線的な位置の変化を示し、向きと大きさの両方を持つ物理量になります。
数式で表すと、変位Δx = x₂ – x₁(x₂は終点の位置、x₁は始点の位置)となります。変位は単なる移動距離とは異なり、方向の情報も含むベクトル量であることが重要です。
1次元運動(直線運動)では、正の向きと負の向きを定めることで、変位を符号付きの数値として扱います。正の変位は正の向きへの移動、負の変位は負の向きへの移動を表すのです。
変位と距離の違い
変位と距離は似ているようで異なる概念です。変位はベクトル量、距離はスカラー量という根本的な違いがあります。
| 項目 | 変位 | 距離 |
|---|---|---|
| 定義 | 始点から終点への位置の変化 | 実際に移動した経路の長さ |
| 性質 | ベクトル量(向きあり) | スカラー量(向きなし) |
| 値 | 正・負・ゼロ | 常に正またはゼロ |
| 往復運動 | 元に戻ればゼロ | 移動した分だけ加算 |
| 単位 | m(メートル) | m(メートル) |
変位の表記方法
変位を表記する際には、記号や座標系の設定を明確にすることが重要です。混乱を避けるために統一された表記を使いましょう。
【変位の一般的な表記】
・変位:Δx、s、d など
・位置:x、r など
・初期位置:x₀、x₁ など
・最終位置:x、x₂ など
・変位の式:Δx = x – x₀ または s = x₂ – x₁
速度から変位を求める方法
続いては速度から変位を求める方法を確認していきます。
等速直線運動の場合
速度が一定の等速直線運動では、変位は速度と時間の積として簡単に求められます。最も基本的な変位計算です。
【等速直線運動の変位】
s = vt
s:変位[m]
v:速度[m/s](一定)
t:時間[s]
この公式は直感的に理解しやすいでしょう。例えば、時速60kmで2時間走れば120km進むという計算と同じ考え方です。
【計算例1】速度15 m/sで8秒間移動した物体の変位を求めよ。
【解答】
s = vt = 15 × 8 = 120 m
答え:120メートル
速度が変化する場合(平均速度を使う)
速度が変化する運動では、平均速度を使って変位を計算できます。平均速度v̄ = (v₁ + v₂)/2(v₁は初速度、v₂は終速度)を用いるのです。
【平均速度を使った変位】
s = v̄t = ((v₁ + v₂)/2)t
v̄:平均速度[m/s]
v₁:初速度[m/s]
v₂:終速度[m/s]
t:時間[s]
この公式は、等加速度運動の場合に特に有効です。加速度が一定なら、平均速度は初速度と終速度の算術平均になるでしょう。
【計算例2】初速度10 m/s、終速度30 m/sで5秒間運動した物体の変位を求めよ。
【解答】
平均速度:v̄ = (10 + 30)/2 = 20 m/s
変位:s = 20 × 5 = 100 m
答え:100メートル
積分を使った計算
より一般的には、速度を時間で積分することで変位が求められます。これは微積分を用いた厳密な方法です。
【積分による変位の計算】
s = ∫v dt
速度がv(t) = 3t² + 2tの場合
s = ∫(3t² + 2t)dt = t³ + t² + C
(Cは積分定数、初期条件から決定)
v-tグラフ(速度-時間グラフ)で考えると、グラフと時間軸で囲まれた面積が変位を表します。この幾何学的解釈も重要でしょう。
加速度から変位を求める方法
続いては加速度から変位を求める方法を確認していきます。
等加速度運動の基本公式
加速度が一定の等加速度運動では、3つの基本公式を使って変位を計算できます。状況に応じて適切な公式を選択するのです。
【等加速度運動の変位の公式】
公式①:s = v₀t + (1/2)at²
公式②:s = ((v₀ + v)/2)t
公式③:v² = v₀² + 2as → s = (v² – v₀²)/(2a)
s:変位[m]
v₀:初速度[m/s]
v:終速度[m/s]
a:加速度[m/s²]
t:時間[s]
公式①を使った計算
公式① s = v₀t + (1/2)at² は、初速度、加速度、時間がわかっているときに使用します。最も汎用性の高い公式です。
【計算例3】初速度5 m/s、加速度2 m/s²で10秒間運動した物体の変位を求めよ。
【解答】
s = v₀t + (1/2)at²
= 5 × 10 + (1/2) × 2 × 10²
= 50 + 100 = 150 m
答え:150メートル
この公式は2つの項から成り立っています。第1項v₀tは等速運動による変位、第2項(1/2)at²は加速による追加の変位を表すのです。
公式③を使った計算
公式③ s = (v² – v₀²)/(2a) は、時間がわからないが速度と加速度がわかっているときに便利です。
【計算例4】初速度0 m/sから終速度20 m/sまで加速度4 m/s²で加速した物体の変位を求めよ。
【解答】
s = (v² – v₀²)/(2a)
= (20² – 0²)/(2 × 4)
= 400/8 = 50 m
答え:50メートル
自由落下の変位計算
自由落下は等加速度運動の特殊な場合であり、初速度v₀ = 0、加速度a = gという条件を適用します。
【自由落下の変位】
h = (1/2)gt²
または v² = 2gh → h = v²/(2g)
h:落下距離[m]
g:重力加速度(約9.8 m/s²)
t:時間[s]
v:速度[m/s]
変位の大きさの求め方
続いては変位の大きさの求め方を確認していきます。
1次元運動での変位の大きさ
1次元運動(直線運動)では、変位は正または負の符号を持つ数値として表されます。変位の大きさは絶対値で表すのです。
【変位の大きさ】
変位の大きさ = |Δx| = |x₂ – x₁|
例:x₁ = 5m、x₂ = 2mの場合
変位:Δx = 2 – 5 = -3 m(負の向きへ3m)
変位の大きさ:|Δx| = |-3| = 3 m
2次元運動での変位の大きさ
2次元運動(平面運動)では、x成分とy成分からピタゴラスの定理を使って変位の大きさを求めます。
【2次元での変位の大きさ】
|s| = √(Δx² + Δy²)
Δx:x方向の変位
Δy:y方向の変位
【計算例5】物体が東に3m、北に4m移動した。変位の大きさと向きを求めよ。
【解答】
変位の大きさ:|s| = √(3² + 4²) = √25 = 5 m
向き:tan θ = 4/3 より θ ≒ 53°(東から北へ)
答え:大きさ5m、東から北へ約53°
ベクトル表記での変位
変位をベクトルとして表記する場合、成分表示や単位ベクトルを使った表現が用いられます。
【ベクトル表記の例】
成分表示:s⃗ = (sx, sy, sz)
単位ベクトル表示:s⃗ = sx i⃗ + sy j⃗ + sz k⃗
大きさ:|s⃗| = √(sx² + sy² + sz²)
実践的な計算問題
続いては実践的な計算問題を確認していきます。
等加速度運動の総合問題
複数のステップを経て変位を求める総合問題に挑戦しましょう。段階的に情報を整理して解くことが重要です。
【総合問題1】物体が初速度10 m/sで運動を始め、加速度-2 m/s²で減速している。
(1) 5秒後の速度
(2) 5秒後までの変位
(3) 停止するまでの時間と変位
【解答】
(1) v = v₀ + at = 10 + (-2) × 5 = 0 m/s
(2) s = v₀t + (1/2)at² = 10 × 5 + (1/2) × (-2) × 25
= 50 – 25 = 25 m
(3) 停止時v = 0なので、0 = 10 – 2t より t = 5秒
変位は(2)より25 m
往復運動の問題
往復運動では、変位と距離の違いに注意が必要です。往復すると変位はゼロに近づくことを理解しましょう。
【総合問題2】物体が原点から正の向きに速度20 m/sで5秒間進んだ後、負の向きに速度10 m/sで10秒間戻った。
(1) 往路の変位
(2) 復路の変位
(3) 全体の変位
(4) 移動した距離
【解答】
(1) s₁ = 20 × 5 = 100 m
(2) s₂ = -10 × 10 = -100 m(負の向き)
(3) 全体の変位:s = s₁ + s₂ = 100 + (-100) = 0 m
(4) 距離:100 + 100 = 200 m
実用的な応用問題
実際の状況を想定した応用問題で理解を深めましょう。
【応用問題】車が信号で停止状態から発進し、加速度2 m/s²で加速した後、速度20 m/sに達したところで等速運動に移行し、10秒後にブレーキをかけて加速度-4 m/s²で減速して停止した。全体の変位を求めよ。
【解答】
加速区間:v² = 2as より s₁ = 20²/(2×2) = 100 m
等速区間:s₂ = 20 × 10 = 200 m
減速区間:s₃ = (0² – 20²)/(2×(-4)) = 50 m
全体の変位:s = 100 + 200 + 50 = 350 m
答え:350メートル
よくある間違いと注意点
続いてはよくある間違いと注意点を確認していきます。
符号の間違い
変位計算で最も多いミスは、符号の扱いを間違えることです。座標系の正の向きを明確にし、一貫して使用しましょう。
【符号の注意点】
・加速度が負(減速)の場合、符号に注意
・変位が負の値になることもある(負の向きへの移動)
・公式の符号を正しく使う(特に±の扱い)
変位と距離の混同
変位と距離を混同しないように注意が必要です。特に往復運動では大きく異なります。
例:10m進んで10m戻った場合、変位は0mですが、移動距離は20mです。問題文で何を求められているかを正確に理解しましょう。
公式の適用条件
等加速度運動の公式は、加速度が一定の場合にのみ適用可能です。加速度が変化する運動では使えないことに注意しましょう。
| 運動の種類 | 使える公式 | 使えない公式 |
|---|---|---|
| 等速直線運動 | s = vt | 等加速度の公式 |
| 等加速度運動 | s = v₀t + (1/2)at²など | – |
| 加速度が変化 | 積分を使う | 等加速度の公式 |
まとめ
変位は位置の変化をベクトルで表したもので、速度からは s = vt(等速)や平均速度を使って、加速度からは s = v₀t + (1/2)at²などの等加速度運動の公式を使って計算します。
変位の大きさは1次元では絶対値、2次元以上ではピタゴラスの定理を使って求めます。変位と距離は異なる概念であり、往復運動では変位がゼロでも距離はゼロでないことに注意が必要です。
計算の際は符号の扱いに注意し、座標系を明確に設定することが重要です。公式は加速度が一定の場合にのみ適用でき、加速度が変化する場合は積分を使った計算が必要になります。