科学・計算関連

鉛直上向き・鉛直下向きとは?公式や正の方向の取り方も!(物理:重力加速度:座標軸の設定:符号の決め方など)

当サイトでは記事内に広告を含みます
技術ブログ特化メルマガはこちら

物理の問題を解く際、多くの学生が最初につまずくのが「座標系の設定」です。特に鉛直方向の運動を扱う問題では、上向きを正とするか下向きを正とするかによって、式の形が大きく変わってしまいます。

鉛直上向きと鉛直下向きという概念は、物理学における座標軸の設定に関わる基本的な考え方です。どちらを正の方向とするかは任意に決められるのですが、その選択によって運動方程式や速度・変位の符号が変化するため、正しく理解していないと計算ミスにつながるでしょう。

重力加速度gは地球上で常に鉛直下向きに働きます。この事実は変わりませんが、座標系の取り方によってgの符号が+gになったり-gになったりするのです。このような符号の扱いに慣れることが、物理の力学問題を正確に解く鍵となります。

また、自由落下や鉛直投げ上げといった典型的な運動では、座標軸の設定によって使う公式の形が変わります。同じ現象を異なる座標系で表現しても、最終的な答えは一致するという物理の美しさを理解することも重要でしょう。

本記事では、鉛直上向きと鉛直下向きの定義から始まり、座標軸の設定方法、正の方向の選び方、それぞれの場合の運動方程式と公式、さらには実際の問題での応用まで、体系的に解説していきます。この基礎をしっかり固めることで、力学の問題に自信を持って取り組めるようになるはずです。

鉛直上向き・鉛直下向きの定義と座標系の基本

それではまず鉛直上向きと鉛直下向きの意味と、座標系設定の基本原則について解説していきます。

鉛直上向きとは、重力の働く方向とは反対の方向、つまり地球の中心から離れる方向を指します。一方、鉛直下向きは重力が働く方向、地球の中心に向かう方向です。この二つの方向は、地球上のあらゆる場所で明確に定義されています。

鉛直上向き:重力と反対の方向(天に向かう方向)

鉛直下向き:重力の方向(地面に向かう方向)

物理の問題では、これらの方向のどちらかを「正の方向」として選ぶことで座標軸を設定します。この選択は問題を解く人が自由に決められるものであり、どちらを選んでも正しい答えが得られるでしょう。

座標軸の設定と正の方向の選択

座標軸を設定するということは、位置や速度、加速度などのベクトル量を数値で表すための基準を定めることです。鉛直方向の運動では、y軸やz軸を鉛直方向に取ることが一般的でしょう。

正の方向を鉛直上向きに取る場合、上に進むほど座標の値が大きくなります。地面を原点とすれば、高さ10mの位置はy = +10mと表されるのです。逆に、正の方向を鉛直下向きに取る場合、下に進むほど座標の値が大きくなります。

【座標軸設定の例】

上向き正の場合:y軸の正の向きが上

・地面:y = 0

・高さ10mの位置:y = +10m

・地下5mの位置:y = -5m

下向き正の場合:y軸の正の向きが下

・基準点:y = 0

・基準点から10m下:y = +10m

・基準点から5m上:y = -5m

どちらの設定を選ぶかは、問題の状況や求めたい量によって使い分けると便利です。鉛直投げ上げの問題では上向き正が直感的ですが、自由落下では下向き正の方が計算しやすい場合もあるでしょう。

重力加速度の符号の決まり方

重力加速度gは大きさが約9.8 m/s²で、常に鉛直下向きに働きます。この方向は座標系の取り方によらず不変ですが、座標系における符号は正の方向の選び方によって変わるのです。

鉛直上向きを正とした場合、重力加速度は正の方向とは逆向き(下向き)なので、加速度の値は-gとなります。一方、鉛直下向きを正とした場合、重力加速度は正の方向と同じ向き(下向き)なので、加速度の値は+gとなるでしょう。

【重力加速度の符号】

上向き正の座標系:a = -g(負の符号)

下向き正の座標系:a = +g(正の符号)

どちらの場合も、重力加速度の実際の向きは鉛直下向きで変わりません。

この符号の違いは、運動方程式や速度・変位の式に直接影響します。符号を間違えると答えが全く異なってしまうため、座標系を設定したら、必ず重力加速度の符号を確認する習慣をつけることが重要です。

ベクトルとスカラーの区別

物理量には、大きさだけを持つスカラー量と、大きさと向きを持つベクトル量があります。鉛直方向の運動を考える際、この区別を明確にすることが正確な理解につながるでしょう。

速度、加速度、変位はベクトル量です。そのため、座標軸を設定して正の方向を決めると、その方向を向くベクトルは正の値、逆向きは負の値で表されます。一方、速さ、距離、時間はスカラー量であり、常に正の値または零となるのです。

物理量 種類 符号の有無 座標系依存性
変位 ベクトル 正負あり 座標系に依存
速度 ベクトル 正負あり 座標系に依存
加速度 ベクトル 正負あり 座標系に依存
速さ スカラー 正のみ 座標系に無関係
距離 スカラー 正のみ 座標系に無関係

たとえば、「速度-5 m/s」というのは、正の方向とは逆向きに秒速5mで移動していることを意味します。速さはその大きさだけを取り出したもので、「速さ5 m/s」となるでしょう。この区別を曖昧にすると、問題を正しく解けません。

鉛直上向き正の場合の運動方程式と公式

続いては鉛直上向きを正の方向とした場合の運動方程式と、各種公式の形を確認していきます。

鉛直上向きを正とする座標系は、投げ上げ運動や高い位置からの運動を扱う際に直感的で分かりやすい設定です。多くの教科書でもこの座標系が標準的に使われています。

運動方程式と加速度の表現

鉛直上向きを正の方向とした場合、y軸の正の向きが上となります。このとき、重力加速度gは下向きに働くため、加速度aは負の値として表現されるのです。

質量mの物体に働く力は重力mgのみであり、この力は鉛直下向きです。運動方程式ma = Fにおいて、力Fは正の方向とは逆向きなので負の符号がつきます。

【鉛直上向き正の運動方程式】

ma = -mg

したがって、a = -g

加速度は常に-g(約-9.8 m/s²)となります。

この負の符号が、物体が下向きに加速されることを表しています。

初速度v₀で鉛直上向きに投げ上げた場合、時刻tでの速度vと変位yは次の公式で表されるでしょう。加速度がa = -gであることを忘れずに代入することが重要です。

速度と変位の公式

等加速度運動の基本公式に、a = -gを代入することで、鉛直上向き正の座標系における各種公式が導かれます。これらの公式は鉛直投げ上げや自由落下の解析に直接使える形となっているのです。

【鉛直上向き正の公式(y軸上向き、加速度a = -g)】

速度の公式:v = v₀ – gt

変位の公式:y = v₀t – (1/2)gt²

速度と変位の関係:v² – v₀² = -2gy

ここで、v₀は初速度、tは時間、yは変位を表します。

鉛直上向きに初速度20 m/sで投げ上げた場合を考えてみましょう。1秒後の速度はv = 20 – 9.8×1 = 10.2 m/sとなり、まだ上向きに運動しています。2秒後ではv = 20 – 9.8×2 = 0.4 m/sとなり、ほぼ最高点に達するでしょう。

最高点では速度がゼロになるため、v = 0を代入してv₀ – gt = 0より、最高点到達時刻t = v₀/gが求められます。このように、公式を適切に使うことで様々な物理量を計算できるのです。

鉛直投げ上げの具体例

実際の問題を通じて、鉛直上向き正の座標系での計算方法を確認しましょう。具体的な数値を使うことで、理解が深まるはずです。

【例題】

地上から初速度v₀ = 19.6 m/sで鉛直上向きに小球を投げ上げた。重力加速度をg = 9.8 m/s²として、以下を求めよ。

(1) 最高点に達する時刻

(2) 最高点の高さ

(3) 地上に戻ってくる時刻

座標系を設定します。地上をy = 0、鉛直上向きを正とするy軸を取りましょう。このとき、初速度v₀ = +19.6 m/s、加速度a = -9.8 m/s²となります。

【解答】

(1) 最高点では速度v = 0

v = v₀ – gt より 0 = 19.6 – 9.8t

t = 19.6/9.8 = 2.0秒

(2) 最高点の高さは、t = 2.0秒を変位の公式に代入

y = v₀t – (1/2)gt² = 19.6×2.0 – (1/2)×9.8×2.0²

y = 39.2 – 19.6 = 19.6 m

(3) 地上に戻るときy = 0

0 = v₀t – (1/2)gt² = t(v₀ – (1/2)gt)

t = 0(出発時)または t = 2v₀/g = 4.0秒

このように、鉛直上向き正の座標系では、上向きの量が正、下向きの量が負となることを常に意識して計算を進めます。符号のミスを防ぐため、各物理量の向きを図に描いて確認することも有効でしょう。

鉛直下向き正の場合の運動方程式と公式

続いては鉛直下向きを正の方向とした場合の運動方程式と公式について確認していきます。

鉛直下向きを正とする座標系は、自由落下や落下運動を主に扱う問題で便利です。重力加速度が正の値となるため、計算がシンプルになる場合があるでしょう。

運動方程式と加速度の表現

鉛直下向きを正の方向とした場合、y軸の正の向きが下となります。このとき、重力加速度gは下向きに働くため、正の方向と同じ向きとなり、加速度aは正の値として表現されるのです。

質量mの物体に働く重力mgは鉛直下向きであり、正の方向と一致します。したがって、運動方程式ma = Fにおいて、力Fは正の符号で表されるでしょう。

【鉛直下向き正の運動方程式】

ma = +mg

したがって、a = +g

加速度は常に+g(約+9.8 m/s²)となります。

この正の符号が、下向きに加速されることを表しています。

重力加速度が正の値で表されるため、式の形が単純になる利点があります。特に自由落下の問題では、初速度v₀ = 0、加速度a = +gとなり、計算がしやすくなるのです。

速度と変位の公式の違い

鉛直下向き正の座標系では、等加速度運動の公式にa = +gを代入します。すると、上向き正の場合とは符号が異なる公式が得られるでしょう。

【鉛直下向き正の公式(y軸下向き、加速度a = +g)】

速度の公式:v = v₀ + gt

変位の公式:y = v₀t + (1/2)gt²

速度と変位の関係:v² – v₀² = +2gy

符号が上向き正の場合と逆になっていることに注意しましょう。

高さhの位置から静かに物体を落とす自由落下の問題を考えます。落とした位置をy = 0、下向きを正とすると、初速度v₀ = 0、加速度a = +gです。時刻tでの速度と変位は次のようになるでしょう。

【自由落下の計算例】

速度:v = 0 + gt = gt(下向きに増加)

変位:y = 0 + (1/2)gt²(下方向への移動距離)

地面(y = h)に達する時刻:h = (1/2)gt²より t = √(2h/g)

地面到達時の速度:v = g√(2h/g) = √(2gh)

このように、下向き正の座標系では、下向きの運動がすべて正の値で表されるため、直感的に理解しやすい面があります。ただし、投げ上げ運動では上向きが負となるため注意が必要でしょう。

座標系による答えの一致

重要なのは、座標系の取り方によらず、物理的な結果は同じになるという点です。上向き正でも下向き正でも、最終的な速さや移動距離などのスカラー量は一致するのです。

たとえば、高さ19.6 mから物体を落としたとき、地面到達時の速さを求める問題を考えましょう。上向き正と下向き正の両方で計算してみます。

【上向き正の計算】

初期位置y₀ = 19.6 m、初速度v₀ = 0、加速度a = -9.8 m/s²

地面y = 0に到達したときの速度vを求める

v² – v₀² = 2a(y – y₀)

v² – 0 = 2×(-9.8)×(0 – 19.6) = 2×9.8×19.6

v² = 384.16より v = -19.6 m/s(下向きなので負)

速さは|v| = 19.6 m/s

【下向き正の計算】

初期位置y₀ = 0、初速度v₀ = 0、加速度a = +9.8 m/s²

位置y = 19.6 mに到達したときの速度vを求める

v² – v₀² = 2ay

v² – 0 = 2×9.8×19.6 = 384.16

v = +19.6 m/s(下向きなので正)

速さは|v| = 19.6 m/s

どちらの座標系でも速さは19.6 m/sで一致します。速度の符号は異なりますが、これは座標系の違いによるものであり、物体が下向きに秒速19.6mで運動しているという物理的事実は同じなのです。

符号の決め方と計算ミスを防ぐコツ

続いては実際の問題を解く際の符号の決め方と、計算ミスを防ぐための実践的なテクニックを確認していきます。

物理の問題で最も多いミスの一つが符号の間違いです。座標系を明確にし、各物理量の符号を正しく判断することが、正確な解答への近道でしょう。

座標系設定の手順と注意点

問題を解き始める際、まず座標系を設定することが重要です。この手順を確実に踏むことで、符号のミスを大幅に減らせるでしょう。

座標系設定の標準手順

1. 原点の位置を決める(地面、投げ上げ地点など)

2. 正の方向を決める(上向きまたは下向き)

3. 重力加速度の符号を確認する(上向き正なら-g、下向き正なら+g)

4. 初速度の符号を確認する(正の方向と同じなら正、逆なら負)

問題文に「上向きを正とする」などの指定がある場合は、それに従います。指定がない場合は、問題の状況に応じて使いやすい方を選べば良いのです。

たとえば鉛直投げ上げなら上向き正が自然ですが、落下運動なら下向き正の方が計算しやすいこともあります。どちらを選んでも答えは同じになるので、自分が理解しやすい方を選びましょう。

初速度と速度の符号判定

初速度や各時刻での速度の符号を正しく判定することは、正確な計算に不可欠です。ベクトルである速度は、向きによって符号が決まるのです。

上向き正の座標系では、上向きの速度は正、下向きの速度は負となります。鉛直投げ上げでは、上昇中は速度が正、下降中は速度が負でしょう。最高点では速度がゼロになります。

【速度の符号判定(上向き正の場合)】

・上向きに運動している:v > 0(正)

・静止している(最高点など):v = 0

・下向きに運動している:v < 0(負)

加速度は常にa = -g(負)で一定です。

下向き正の座標系では逆になります。下向きの速度が正、上向きの速度が負です。落下中の物体の速度は時間とともに増加し、すべて正の値として表されるでしょう。

物理量 上向き正の場合 下向き正の場合
重力加速度 a = -g a = +g
上向きの初速度 v₀ > 0(正) v₀ < 0(負)
下向きの初速度 v₀ < 0(負) v₀ > 0(正)
上昇中の速度 v > 0(正) v < 0(負)
下降中の速度 v < 0(負) v > 0(正)

計算ミスを防ぐチェックポイント

計算を終えた後、答えの妥当性を確認することも重要です。物理的な直感と照らし合わせて、明らかにおかしな結果になっていないかチェックしましょう。

たとえば、地上から投げ上げた物体の最高点の高さを求めて、負の値が出たら明らかに間違いです。時間が負になることもありえません。速さが光速を超えるような結果も、日常的な問題では不合理でしょう。

【答えの妥当性チェック項目】

・時間tは0以上か?(負の時間はない)

・速さ|v|は妥当な範囲か?(日常では数十m/s程度)

・高さや距離は正の値か?(物理的に意味のある値)

・最高点で速度はゼロになっているか?

・上昇時間と下降時間が等しいか?(対称性の確認)

また、同じ問題を異なる座標系で解いて、答えが一致するか確認する方法も有効です。上向き正で解いた後、下向き正で再計算すれば、速さなどのスカラー量は必ず一致するはずでしょう。

図を描くことも強くお勧めします。物体の運動の様子を矢印で示し、各時刻での位置や速度の向きを視覚化することで、符号の判断ミスを減らせるのです。

まとめ

鉛直上向き・鉛直下向きと座標系の設定について、詳しく解説してきました。重要なポイントを整理しましょう。

鉛直上向きとは重力とは反対の方向、鉛直下向きとは重力の方向を指します。物理の問題では、このどちらかを正の方向として座標軸を設定することで、運動を数式で表現できるのです。

座標系の選び方は自由であり、どちらを選んでも最終的な答えは一致します。ただし、選んだ座標系によって運動方程式や公式の符号が変わるため、注意が必要でしょう。鉛直上向きを正とすれば重力加速度はa = -g、鉛直下向きを正とすればa = +gとなります。

鉛直上向き正の座標系では、速度v = v₀ – gt、変位y = v₀t – (1/2)gt²という公式を使います。これは鉛直投げ上げの問題で標準的に使われる形式です。一方、鉛直下向き正の座標系では、v = v₀ + gt、y = v₀t + (1/2)gt²となり、自由落下の問題で便利でしょう。

符号の判定では、ベクトル量である速度や加速度は向きによって正負が決まります。上向き正なら上向きが正で下向きが負、下向き正ならその逆です。スカラー量である速さや距離は常に正の値となり、座標系に依存しません。

計算ミスを防ぐためには、問題を解く前に必ず座標系を設定し、重力加速度と初速度の符号を確認することが重要です。図を描いて運動の様子を視覚化し、答えの妥当性をチェックする習慣をつけましょう。

座標系の設定は物理問題を解く上での基礎中の基礎です。どちらの座標系を選んでも答えは同じになるという物理の美しさを理解し、状況に応じて使い分けられるようになることが、力学を習得する鍵となります。

同じ現象を異なる視点から記述しても本質は変わらないという考え方は、物理学全体に通じる重要な原理です。鉛直方向の運動を通じてこの原理を身につけることで、より高度な物理の学習への土台が築かれるでしょう。符号の扱いに習熟し、自信を持って力学の問題に取り組めるようになるはずです。