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鉛直方向の運動とは?公式や解き方は?(高校物理:自由落下・投げ上げ・投げ下ろし:等加速度運動:重力加速度など)

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高校物理を学ぶ上で、鉛直方向の運動は最も基礎的でありながら重要な単元の一つです。ボールを上に投げたときの動き、高いところから物を落としたときの運動など、私たちの身の回りには鉛直方向の運動があふれています。

この単元では、自由落下、投げ上げ、投げ下ろしという3つの代表的な運動を扱います。これらはすべて等加速度運動の一種であり、重力加速度という一定の加速度が働く運動なのです。

初めて学ぶ方にとっては、公式が多くて混乱してしまうかもしれません。しかし、基本的な考え方を理解すれば、どの問題にも対応できるようになるでしょう。本記事では、鉛直方向の運動の基礎から応用まで、公式の使い方や問題の解き方を丁寧に解説していきます。

鉛直方向の運動は重力加速度が働く等加速度運動

それではまず、鉛直方向の運動の本質について解説していきます。

鉛直方向の運動とは、地球の重力が働く方向(上下方向)における物体の動きを指します。この運動の最大の特徴は、常に一定の加速度が働いているということです。

地球上のすべての物体には、地球の中心に向かって重力が働いています。この重力によって生じる加速度を重力加速度と呼び、記号gで表します。重力加速度の大きさは約9.8m/s²(または10m/s²として近似計算することも多い)であり、地表付近ではほぼ一定の値を取るのです。

重力加速度 g ≒ 9.8 m/s²(地表付近)

鉛直方向の運動では、常にこの一定の加速度が下向きに働く

等加速度運動とは、加速度が一定である運動のこと。つまり、鉛直方向の運動は典型的な等加速度運動の例なのです。水平方向に投げた物体の場合は空気抵抗を無視すれば水平方向には等速直線運動、鉛直方向には等加速度運動という複合的な動きになります。

この運動を理解する上で重要なのは、上向きを正とするか下向きを正とするか、座標系の取り方を明確にすることでしょう。一般的には上向きを正の方向として扱うことが多く、その場合、重力加速度は負の値(-g)として式に代入します。

鉛直方向の運動の3つの基本公式

続いては、鉛直方向の運動を解くための基本公式を確認していきます。

鉛直方向の運動は等加速度運動なので、等加速度運動の公式をそのまま適用できます。主に使用する公式は次の3つです。

【公式1】速度の公式

v = v₀ + at

v:時刻tにおける速度、v₀:初速度、a:加速度、t:経過時間

【公式2】変位の公式

y = v₀t + (1/2)at²

y:時刻tにおける変位(位置の変化)

【公式3】速度と変位の関係式

v² – v₀² = 2ay

時間tが与えられていない問題で特に有効

鉛直方向の運動では、加速度aの部分に重力加速度gを代入します。上向きを正とする場合、a = -gとなることに注意が必要です。下向きを正とする場合はa = gとなります。

これらの公式を使い分けるポイントは、問題文で何が与えられていて、何を求められているかを整理すること。たとえば時間が問われていない問題では公式3が便利ですし、最高到達点を求める問題では速度がゼロになる条件を使います。

公式 使用する場面 特徴
v = v₀ – gt ある時刻の速度を求めるとき 時間tが分かっている必要がある
y = v₀t – (1/2)gt² ある時刻の位置を求めるとき 時間の2次関数になる
v² – v₀² = -2gy 時間が不明な場合 速度と位置だけで計算できる

実際の問題では、これらの公式を状況に応じて組み合わせて使うことが求められます。一つの公式だけでは解けない問題も、複数の公式を連立させることで解決できるのです。

自由落下・投げ上げ・投げ下ろしの解き方

続いては、鉛直方向の運動の3つの典型的なパターンについて、それぞれの特徴と解き方を確認していきます。

自由落下の運動

自由落下とは、初速度ゼロで物体を落下させる運動のことです。つまり、静かに手を離して物を落とすイメージですね。

自由落下の特徴は、初速度v₀ = 0であること。この条件を公式に代入すると、式が大幅に簡単になります。

自由落下の公式(下向きを正とした場合)

速度:v = gt

落下距離:y = (1/2)gt²

速度と距離の関係:v² = 2gy

例えば、高さ45mのビルから物体を自由落下させた場合を考えてみましょう。地面に到達するまでの時間と、地面に衝突する直前の速度を求める問題です(g = 10m/s²とする)。

落下距離の公式から、45 = (1/2) × 10 × t²となり、これを解くとt = 3秒。速度の公式からv = 10 × 3 = 30m/sと求められます。または、v² = 2 × 10 × 45 = 900よりv = 30m/sと直接計算することもできるでしょう。

鉛直投げ上げの運動

鉛直投げ上げは、初速度v₀を与えて真上に物体を投げ上げる運動です。ボールを上に投げたときの動きがこれに該当します。

投げ上げの運動で重要なのは、物体が最高点に達したときの速度がゼロになるという点。この条件を使うことで、最高到達高さや最高点に達するまでの時間を求められます。

鉛直投げ上げの公式(上向きを正とした場合)

速度:v = v₀ – gt

高さ:y = v₀t – (1/2)gt²

速度と高さの関係:v² – v₀² = -2gy

最高到達点では速度v = 0なので、0 = v₀ – gtより、最高点に達する時間はt = v₀/gと求まります。また、最高到達高さは、v² – v₀² = -2gyにv = 0を代入して、y = v₀²/(2g)となるのです。

投げ上げ運動の面白い性質として、投げ上げた地点に戻ってくるまでの時間は、最高点に達する時間の2倍になります。また、投げ上げた地点を通過する速度の大きさは初速度と等しく、向きだけが逆になるのです。

鉛直投げ下ろしの運動

鉛直投げ下ろしは、初速度v₀を下向きに与えて物体を投げ下ろす運動のこと。高いところから物を勢いよく下に投げる状況ですね。

自由落下との違いは、初速度があるかないかという点だけ。運動の式は投げ上げと同じ形ですが、座標系の取り方に注意が必要でしょう。

鉛直投げ下ろしの公式(下向きを正とした場合)

速度:v = v₀ + gt

落下距離:y = v₀t + (1/2)gt²

速度と距離の関係:v² – v₀² = 2gy

例えば、初速度20m/sで物体を投げ下ろし、2秒後の速度と落下距離を求める問題を考えてみます(g = 10m/s²)。速度はv = 20 + 10 × 2 = 40m/s、落下距離はy = 20 × 2 + (1/2) × 10 × 2² = 40 + 20 = 60mとなります。

投げ下ろしの場合、初速度があるため自由落下よりも速く地面に到達します。同じ高さから落とす場合、投げ下ろした方が短い時間で、より大きな速度で地面に衝突するのです。

実践的な問題の解き方とコツ

続いては、実際の問題を解く際のポイントと、よくある間違いを確認していきます。

座標系の設定と符号の扱い

鉛直方向の運動で最も重要なのは、座標系を明確に設定し、それに従って符号を正しく扱うことでしょう。

一般的には上向きを正、下向きを負とする座標系を使います。この場合、重力加速度は下向きに働くのでa = -gとなります。初速度も、上向きなら正、下向きなら負の値を使うのです。

【座標系設定のルール】

上向きを正とする場合:重力加速度 a = -g、上向きの初速度は正、下向きの初速度は負

下向きを正とする場合:重力加速度 a = +g、上向きの初速度は負、下向きの初速度は正

問題を解く際は、図を描いて座標軸を明示することをお勧めします。そうすることで、符号のミスを防げるでしょう。また、答えが負の値になった場合は、それが座標系において何を意味するのかを考えることが大切です。

速度と速さの違いに注意

物理では、速度と速さは異なる概念として扱われます。速度はベクトル量(向きを持つ)、速さはスカラー量(大きさのみ)なのです。

投げ上げ運動で、物体が最高点を通過した後に元の位置に戻ってきたとき、速度は-v₀(初速度と逆向き)ですが、速さは|v₀|で初速度の速さと同じになります。問題文が「速度を求めよ」なのか「速さを求めよ」なのかをしっかり確認しましょう。

グラフ問題でも、速度のグラフではy軸を横切る(速度がゼロになる)点が最高点を表しますが、速さのグラフでは最高点でも下に凸のV字型になります。この違いを理解していないと、グラフの読み取り問題で間違えてしまうでしょう。

典型的な問題パターンと解法

鉛直方向の運動でよく出題される問題パターンをいくつか紹介します。

パターン1:往復運動の時間
物体を投げ上げてから、投げ上げた地点に戻ってくるまでの時間を求める問題。この場合、変位y = 0という条件を使います。y = v₀t – (1/2)gt² = 0より、t(v₀ – (1/2)gt) = 0となり、t = 0(投げ上げた瞬間)またはt = 2v₀/g(戻ってきた時刻)が得られるのです。

パターン2:2物体の運動
ある高さから物体Aを自由落下させ、同時に地上から物体Bを投げ上げるような問題。両物体が出会う時刻や位置を求めます。それぞれの位置の式を立て、位置が等しくなる条件から解くのがコツでしょう。

パターン3:連続する運動
物体を投げ上げて最高点に達した後、落下して地面に衝突するまでの全体の運動を扱う問題。運動を区間に分けて考え、それぞれの区間で適切な公式を適用します。

問題のタイプ 与えられる条件 使用する公式・考え方
最高到達点を求める 初速度v₀ 最高点でv = 0、y = v₀²/(2g)
地面到達時の速度 落下高さh、初速度v₀ v² – v₀² = 2gh
空中にある時間 初速度v₀ y = 0の条件、t = 2v₀/g
すれ違う時刻・位置 2物体の初期条件 位置が等しい条件から連立方程式

問題を解く際の基本的な手順は、(1)座標系を設定する、(2)与えられた条件を整理する、(3)求めるものに応じて適切な公式を選ぶ、(4)式を立てて計算する、(5)答えの妥当性を確認する、という流れになります。特に最後の確認作業を怠らないことが、ケアレスミスを防ぐコツでしょう。

まとめ

鉛直方向の運動は、重力加速度という一定の加速度が働く等加速度運動です。自由落下、投げ上げ、投げ下ろしという3つの基本パターンがありますが、すべて同じ等加速度運動の公式を使って解くことができます。

重要なポイントは、座標系を明確に設定し、重力加速度の符号を正しく扱うこと。上向きを正とする場合はa = -g、下向きを正とする場合はa = +gとなります。また、初速度や速度の符号も座標系に従って決めることが必要です。

3つの基本公式(v = v₀ + at、y = v₀t + (1/2)at²、v² – v₀² = 2ay)を使い分けることで、ほとんどの問題に対応できるでしょう。時間が与えられていない問題では第3の公式が特に有効です。投げ上げ運動では最高点で速度がゼロになることを利用し、往復運動では変位がゼロになる条件を使います。

問題を解く際は、図を描いて状況を整理し、与えられた条件と求めるものを明確にすることから始めましょう。公式の丸暗記ではなく、物理的な意味を理解しながら学習を進めることで、応用問題にも対応できる力が身につきます。

鉛直方向の運動は、力学の基礎として後の学習にも関わってくる重要な単元。しっかりと理解を深め、様々な問題に挑戦することで、物理的な思考力を養っていきましょう。