「見送る」は、相手を駅や玄関まで案内する場面だけでなく、提案や判断を保留する場面にも使われる言葉です。
ビジネスメールでは意味を取り違えると、失礼な印象や意図しない誤解につながることがあります。
相手の行為を表すのか、自分側の対応を伝えるのかを整理し、状況に合う敬語を選ぶことが大切です。
「見送る」の敬語の一覧表

それではまず「見送る」の敬語の一覧表について解説していきます。
基本の敬語表現
「見送る」には一つの決まった敬語があるわけではなく、誰が見送るのか、どの意味で使うのかによって表現が変わります。
相手が人を見送る場合には尊敬語、自分が相手を見送る場合には謙譲語を使うと、関係性が自然に伝わります。
| 場面 | 敬語の種類 | 主な表現 | 使用例 |
|---|---|---|---|
| 相手が人を見送る | 尊敬語 | お見送りになる | 部長はお客様をお見送りになりました |
| 相手が判断を保留する | 尊敬語 | ご見送られる | 今回は導入をご見送られるとのことです |
| 自分が相手を見送る | 謙譲語 | お見送りいたします | 会場出口までお見送りいたします |
| 自社が計画を保留する | 丁重語 | 見送らせていただきます | 今回の実施は見送らせていただきます |
| 事実を丁寧に伝える | 丁寧語 | 見送ります | 当日は駅まで見送ります |
相手の行為には「お見送りになる」、自分の行為には「お見送りいたします」を使うのが基本です。
ただし、判断を保留する意味の「見送る」は、案内する意味とは言い換えを分けたほうが読み手に親切でしょう。
尊敬語と謙譲語の使い分け
尊敬語は、取引先や上司など、相手側の動作を高めて表現するための言葉です。
「社長がお客様をお見送りになる」のように、見送る人物が目上の相手である場合に用います。
一方で謙譲語は、自分や自社の動作をへりくだって伝える言葉です。
「私が受付までお見送りいたします」は、相手への配慮を示しながら行動を伝えられる表現になります。
「お見送りになります」は、自分の行為に使わないよう注意が必要です。
自分が行う場合は「お見送りいたします」または「お見送り申し上げます」が適しています。
保留や中止を表す場合の敬語
企画、採用、購入などを「見送る」と表すときは、実施しない、または時期を改める意味になります。
この場合は、否定の印象をやわらげる表現を添えることが重要です。
「今回は見送ります」だけでは理由が伝わらず、冷たい印象になる場合もあります。
「慎重に検討いたしましたが、今回は見送らせていただきます」のように、検討した経緯や今後の可能性を簡潔に補うとよいでしょう。
相手を案内する場面の敬語表現
続いては相手を案内する場面の敬語表現を確認していきます。
訪問者を見送る場合
来客を玄関、エレベーター、建物の出口まで案内する行為には、「お見送りいたします」が広く使えます。
丁寧でありながら過度にかしこまりすぎず、社内外を問わず使いやすい表現です。
「本日はお越しいただき、ありがとうございました。出口までお見送りいたします」と伝えれば、訪問への感謝も自然に表せます。
役員や重要顧客への対応では、「お見送り申し上げます」とすると、より改まった印象になります。
使用例
お帰りの際は、担当者が一階ロビーまでお見送りいたします。
どうぞこちらへお進みください。
目上の人が見送る場合
上司や取引先担当者の行為を述べるなら、「お見送りになる」が適切です。
「担当部長がお見送りになりますので、少々お待ちください」と伝えることで、相手への敬意を保てます。
「お見送りされます」は間違いではありませんが、受け身にも読めるため、会話では「お見送りになる」のほうが明快でしょう。
敬語は動作の主体を先に考えると、選び間違いを防げます。
同僚や社内の人に使う場合
同僚や親しい社内メンバーには、「見送ります」「お見送りします」でも問題ない場面があります。
ただし、他部署の管理職や役員が同席する場合には、丁寧な表現に整えると安心です。
社内メールでは「来客対応後、私が駅までお見送りいたします」と記載すると、対応予定がわかりやすくなります。
相手との距離感だけでなく、文書が記録として残る点も意識したいところです。
判断を保留する場面の言い換え表現
続いては判断を保留する場面の言い換え表現を確認していきます。
提案や企画を見送る場合
提案を断る際に「見送る」を使うと、完全な拒絶よりもやわらかく聞こえます。
しかし、理由も代替案もない文章では、相手が次に何をすべきか判断できません。
「現時点では予算との兼ね合いから、導入は見送らせていただきます」とすれば、判断の背景を簡潔に示せます。
再検討の余地がある場合は、「次年度の計画策定時に改めて検討いたします」と加えると建設的です。
| 伝えたい内容 | おすすめの表現 | 印象 |
|---|---|---|
| 今回は実施しない | 今回は見送らせていただきます | 丁寧でやわらかい印象 |
| 判断を先延ばしにする | 継続して検討いたします | 再検討の可能性を残せる表現 |
| 条件が整わない | 現段階では導入を控えさせていただきます | 事情を示しやすい表現 |
| 依頼を断る | 今回は辞退させていただきます | 明確に意思を伝える表現 |
採用や購入を見送る場合
採用選考や商品の購入では、「見送る」が持つ意味を具体化することが大切です。
採用担当者が候補者に連絡する場合は、「慎重に選考を進めた結果、今回は採用を見送らせていただくこととなりました」と書くと、事務的ながら配慮のある文面になります。
購入を見合わせる場合は、「社内で検討した結果、今回は購入を見送ることにいたしました」が自然です。
「見送る」は理由とセットで伝えることで、相手の納得感を高められます。
使いすぎを避けたい表現
「見送らせていただきます」は便利ですが、相手の許可を得て行う動作ではない場面にも多用されがちです。
自社の判断を明確に伝えるだけなら、「見送ることにいたしました」や「見合わせることといたしました」も自然です。
また、「見送らせていただく所存です」は硬く回りくどい印象になりやすいため、簡潔な表現を選ぶほうが伝わります。
読み手がすぐに結論を把握できる文面を心がけましょう。
断る連絡では、曖昧な敬語よりも、結論と理由を端的に伝える配慮が重要です。
再提案を望む場合は、検討可能な時期や条件を添えると関係を保ちやすくなります。
ビジネスメールでの使い方と例文
続いてはビジネスメールでの使い方と例文を確認していきます。
来客後に送るお礼メール
訪問後のお礼メールでは、見送りの事実だけを述べるより、面談への感謝や次の行動を中心に組み立てると効果的です。
「本日は弊社までお越しいただき、誠にありがとうございました。お帰りの際には十分なご案内ができず失礼いたしました」とすれば、丁寧な印象を与えられます。
自分が見送ったことを伝える必要がある場合には、「出口までお見送りいたしました」を使います。
相手への感謝を主役にすることが、自然なメール作成のポイントです。
件名 ご来訪のお礼
本日はご多用のところご来訪いただき、誠にありがとうございました。
短い時間ではございましたが、貴重なお話を伺うことができ、大変参考になりました。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
提案を見送るメール
提案を見送るメールでは、相手が時間をかけて準備した点への敬意を示す必要があります。
まず提案への感謝を伝え、その後に検討結果と理由を簡潔に記載しましょう。
「このたびは詳細なご提案をありがとうございました。社内で慎重に検討いたしましたが、現時点では導入時期の調整が難しく、今回は見送らせていただくこととなりました」とまとめると自然です。
将来の取引につなげたい場合は、「状況が整いましたら、改めてご相談させていただきます」と添える方法があります。
上司や取引先への報告メール
上司の対応を報告する場合には、尊敬語を正しく用います。
「本日、部長がお客様をエントランスまでお見送りになりました」と書けば、主語と敬意の対象が明確です。
取引先に対しては、「弊社担当がお見送りいたしますので、お帰りの際は受付までお声がけください」と案内できます。
社内報告と社外連絡では敬意の向きが異なるため、宛先を確認してから送信しましょう。
誤用を防ぐための注意点
続いては誤用を防ぐための注意点を確認していきます。
二重敬語への注意
「お見送りになられる」は、「お」と「になる」と「られる」が重なり、過剰な敬語に聞こえやすい表現です。
相手の行為には「お見送りになる」、自分の行為には「お見送りいたす」と分ければ十分です。
敬意を強めようとして言葉を重ねるよりも、正しい基本形を使うほうが信頼感につながります。
敬語は長くするほど丁寧になるわけではありません。
「ご見送る」の扱い
「ご見送る」は、一般的なビジネス文書では不自然に感じられることがあります。
名詞としては「お見送り」や「ご見学」のような形が使われますが、動詞の「見送る」には「お見送りする」「お見送りいたす」を選ぶほうが自然です。
判断を保留する意味では、「ご見送り」は使わず、「見送る」「見合わせる」「保留とする」など、文脈に合う語を使い分けます。
断定を避ける言葉選び
相手の提案を断るメールで、「不要です」「できません」とだけ書くと、内容が正しくても冷たく受け取られる可能性があります。
「今回は見送らせていただきます」「現時点では見合わせることといたしました」と表現すれば、必要な結論を保ちながら角を立てにくくできます。
ただし、何度も保留を繰り返す場合は、次に検討できる条件を伝えることが誠実な対応です。
避けたい表現
御社の提案は不要です。
言い換え例
ご提案内容を検討いたしましたが、現在の運用方針を踏まえ、今回は導入を見送ることにいたしました。
「見送る」の敬語のまとめ
「見送る」の敬語は、相手が行う動作なら「お見送りになる」、自分が行う動作なら「お見送りいたします」が基本です。
提案や採用、購入などを保留する意味では、「見送らせていただきます」だけに頼らず、「見合わせる」「継続して検討する」などを目的に応じて使い分けましょう。
誰の行為か、何を見送るのか、相手に何を伝えたいのかを確認すれば、適切な敬語を選びやすくなります。
相手を案内する場面では、敬意と気配りが伝わる「お見送りいたします」を使います。
判断を保留する場面では、結論に理由や今後の対応を添えることで、丁寧でわかりやすいビジネスメールになります。