中学数学から高校数学まで、数学の学習において欠かせない重要な技術が「因数分解」です。しかし、初めて習うときには、なぜこんな計算をするのか、どうやって解けばよいのか、戸惑う生徒も多いのではないでしょうか。
因数分解とは、1つの式を複数の因数の積の形に変形することを指します。展開とは逆の操作であり、式を「分解」することで、方程式を解いたり、計算を簡単にしたりすることができるのです。
中学で習う基本的な因数分解から、高校で学ぶたすきがけや複雑な公式まで、因数分解には様々なパターンと解法があります。それぞれの公式を覚えるだけでなく、どの場面でどの方法を使うべきかを理解することが重要でしょう。
この記事では、因数分解の意味と基本的な考え方から、具体的な公式とやり方、そして実際の問題への応用まで、中学生から高校生まで理解できるようにわかりやすく解説していきます。展開との違い、たすきがけの方法、そして因数分解を使った方程式の解き方まで、数学が苦手な方も安心して学習できる内容となっています。
因数分解とは式を因数の積の形に変形すること
それではまず因数分解の基本的な意味について解説していきます。
因数分解とは、1つの多項式を複数の因数の積の形で表すことです。例えば、x² + 5x + 6 という式を (x + 2)(x + 3) という積の形に変形することが因数分解なのです。
因数とは、積を作る要素のことを指します。6 = 2 × 3 のとき、2と3は6の因数です。同様に、(x + 2)(x + 3) という積の形では、(x + 2) と (x + 3) が因数となります。
因数分解の本質は、「1つのまとまった式を、掛け算の形にばらすこと」です。複雑な式を単純な要素の積として表すことで、様々な計算や問題解決が容易になります。
【因数分解の例】
元の式:x² + 5x + 6
因数分解後:(x + 2)(x + 3)
元の式:x² – 9
因数分解後:(x + 3)(x – 3)
元の式:2x² + 6x
因数分解後:2x(x + 3)
因数分解には様々な目的があります。最も重要なのは、方程式を解くことでしょう。例えば、x² + 5x + 6 = 0 という方程式は、因数分解して (x + 2)(x + 3) = 0 とすることで、x = -2 または x = -3 という解が簡単に求められるのです。
また、分数式の約分や通分、複雑な計算の簡略化などにも因数分解が使われます。数学の様々な場面で基礎となる重要な技術といえるでしょう。
| 操作 | 変換の方向 | 例 |
|---|---|---|
| 展開 | 積 → 和 | (x + 2)(x + 3) → x² + 5x + 6 |
| 因数分解 | 和 → 積 | x² + 5x + 6 → (x + 2)(x + 3) |
因数分解と展開は互いに逆の操作です。展開は積を和の形に開くこと、因数分解は和を積の形にまとめることを意味します。この関係を理解しておくことで、因数分解の確認も簡単にできるのです。
因数分解ができたかどうかを確認するには、結果を展開して元の式に戻るかをチェックします。展開した結果が元の式と一致すれば、因数分解は正しく行われているということです。
因数分解の基本公式とパターン
続いては因数分解の基本公式とパターンを確認していきます。
共通因数をくくり出す方法
それではまず、最も基本的な因数分解の方法について解説していきます。
共通因数をくくり出すとは、各項に共通して含まれる因数を外に出すことです。これは因数分解の最も基本的なパターンであり、まず最初に確認すべき方法となります。
【共通因数のくくり出し】
2x + 6 = 2(x + 3)
共通因数:2
3x² + 6x = 3x(x + 2)
共通因数:3x
ax² + 2ax = ax(x + 2)
共通因数:ax
共通因数を見つけるコツは、各項の係数の最大公約数と、共通する文字の最小の指数を探すことです。係数が12と18なら最大公約数は6、x³とx²なら共通部分はx²となります。
共通因数のくくり出しは、他の因数分解の前処理としても重要です。複雑な式でも、まず共通因数をくくり出してから他の公式を使うことで、計算がスムーズに進むでしょう。
【複合的な例】
2x² + 10x + 12
= 2(x² + 5x + 6)
= 2(x + 2)(x + 3)
乗法公式を使った因数分解
次に、乗法公式を逆に使った因数分解について確認していきます。
展開の公式を逆向きに使うことで、特定のパターンの式を素早く因数分解できます。中学数学で習う基本的な公式は必ず覚えておきましょう。
| 公式名 | 展開 | 因数分解 |
|---|---|---|
| 和の平方 | (a + b)² = a² + 2ab + b² | a² + 2ab + b² = (a + b)² |
| 差の平方 | (a – b)² = a² – 2ab + b² | a² – 2ab + b² = (a – b)² |
| 平方の差 | (a + b)(a – b) = a² – b² | a² – b² = (a + b)(a – b) |
| 和と差の積 | (x + a)(x + b) = x² + (a+b)x + ab | x² + (a+b)x + ab = (x + a)(x + b) |
【公式を使った因数分解の例】
x² + 6x + 9 = (x + 3)²(和の平方)
x² – 10x + 25 = (x – 5)²(差の平方)
x² – 16 = (x + 4)(x – 4)(平方の差)
x² + 7x + 12 = (x + 3)(x + 4)(和と差の積)
公式を見分けるポイントは、式の形に注目することです。x²の係数が1で、定数項が完全平方数なら平方の公式を疑い、定数項がないか負の平方数なら平方の差を考えましょう。
x² + px + q 型の因数分解では、和がp、積がqになる2つの数を見つけることがポイントです。例えば、x² + 5x + 6 なら、2と3の和が5、積が6なので、(x + 2)(x + 3) となります。
たすきがけによる因数分解
最後に、高校数学で習うたすきがけの方法について見ていきましょう。
たすきがけとは、ax² + bx + c 型(a≠1)の式を因数分解する方法です。x²の係数が1でない場合に特に有効な手法となります。
【たすきがけの手順】
2x² + 7x + 3 を因数分解する
手順1:2を分解 → 2×1
手順2:3を分解 → 3×1 または 1×3
手順3:たすきがけで確認
2 3
1 1
クロスして足す:2×1 + 1×3 = 5(×不適)
2 1
1 3
クロスして足す:2×3 + 1×1 = 7(○適合)
答え:(2x + 1)(x + 3)
たすきがけでは、x²の係数と定数項をそれぞれ因数に分解し、クロスして掛けた和がxの係数と一致する組み合わせを探します。慣れるまでは試行錯誤が必要ですが、パターンを掴めば素早く解けるようになるでしょう。
【別の例】
3x² – 10x + 8 を因数分解
3 = 3×1、8 = 4×2 または 8×1
3 4
1 2
3×2 + 1×4 = 10(符号が逆)→ -10にするため(3x – 4)(x – 2)
確認:展開すると 3x² – 6x – 4x + 8 = 3x² – 10x + 8 ○
因数分解と展開の違いと使い分け
続いては因数分解と展開の違いと使い分けを確認していきます。
展開とは何か
それではまず、展開の意味について解説していきます。
展開とは、積の形で表された式を、和や差の形に開くことです。カッコを外して1つの多項式にする操作といえるでしょう。
【展開の例】
(x + 3)(x + 2) = x² + 2x + 3x + 6 = x² + 5x + 6
(2x – 1)(x + 4) = 2x² + 8x – x – 4 = 2x² + 7x – 4
(a + b)² = a² + 2ab + b²
展開では分配法則を使って、各項を掛け算していきます。FOIL法(First, Outer, Inner, Last)という覚え方もあり、順序立てて計算することでミスを減らせるのです。
展開は計算を進める方向の操作です。因数分解とは逆に、複雑な形に向かって式を変形していくイメージとなります。
因数分解と展開の関係性
次に、因数分解と展開の関係について確認していきます。
因数分解と展開は、互いに逆の操作であるという関係にあります。展開したものを因数分解すれば元に戻り、因数分解したものを展開しても元に戻るのです。
| 項目 | 展開 | 因数分解 |
|---|---|---|
| 変換方向 | 積 → 和 | 和 → 積 |
| 操作 | カッコを外す | カッコでまとめる |
| 複雑さ | 複雑になる | 単純になる |
| 用途 | 計算を進める | 方程式を解く、約分 |
【逆操作の確認】
因数分解:x² + 5x + 6 → (x + 2)(x + 3)
展開で確認:(x + 2)(x + 3) → x² + 5x + 6 ○
因数分解が正しくできたかを確認するには、結果を展開して元の式に戻ることをチェックしましょう。これが因数分解の正しさを保証する最も確実な方法です。
どちらを使うべきか判断する方法
最後に、展開と因数分解のどちらを使うべきかの判断について見ていきましょう。
展開と因数分解のどちらを使うかは、問題が求めているものや、計算の目的によって決まります。状況に応じた適切な判断が重要です。
【使い分けの基準】
展開を使う場面
・「展開せよ」と指示がある
・式を1つの多項式にまとめる必要がある
・係数を比較する問題
因数分解を使う場面
・「因数分解せよ」と指示がある
・方程式を解く問題
・分数式を約分する問題
・最大公約数や最小公倍数を求める問題
方程式 x² + 5x + 6 = 0 を解くときは、因数分解して (x + 2)(x + 3) = 0 とすることで、x = -2 または x = -3 という解が簡単に求められます。これは因数分解の最も重要な応用例でしょう。
逆に、(x + 1)(x – 2) と x(x + 3) の和を求めよという問題では、それぞれを展開してから足し算する必要があります。この場合は展開が適切な方法です。
因数分解を使った問題の解き方
続いては因数分解を使った実際の問題の解き方を確認していきます。
2次方程式を解く方法
それではまず、因数分解を使った2次方程式の解き方について解説していきます。
因数分解の最も重要な応用は、2次方程式を解くことです。ax² + bx + c = 0 という形の方程式は、因数分解することで簡単に解けるのです。
【2次方程式を解く手順】
x² + 5x + 6 = 0 を解く
手順1:因数分解する
(x + 2)(x + 3) = 0
手順2:積が0になる条件を使う
x + 2 = 0 または x + 3 = 0
手順3:それぞれ解く
x = -2 または x = -3
積が0になるのは、どちらかの因数が0のときだけです。この性質を使って、因数分解された形から解を求めることができます。これは「積が0ならば少なくとも1つの因数が0」という数学の基本原理に基づいているのです。
因数分解による方程式の解法は、解の公式よりも計算が簡単で、ミスも少ないという利点があります。因数分解できる方程式では、まず因数分解を試みましょう。
【別の例】
2x² – 5x – 3 = 0 を解く
たすきがけで因数分解
(2x + 1)(x – 3) = 0
2x + 1 = 0 または x – 3 = 0
x = -1/2 または x = 3
複雑な式の因数分解
次に、より複雑な式の因数分解について確認していきます。
実際の問題では、複数の公式を組み合わせて使う必要がある場合も多いでしょう。手順を踏んで、段階的に因数分解していくことが重要です。
【複合的な因数分解の例】
x⁴ – 16 を因数分解する
手順1:平方の差の公式を使う
x⁴ – 16 = (x²)² – 4² = (x² + 4)(x² – 4)
手順2:x² – 4 をさらに因数分解
x² – 4 = (x + 2)(x – 2)
答え:(x² + 4)(x + 2)(x – 2)
4項の式では、2項ずつまとめてから因数分解する方法も有効です。これを「組分け」といいます。
【組分けの例】
x² + 2x + xy + 2y を因数分解
= (x² + 2x) + (xy + 2y)
= x(x + 2) + y(x + 2)
= (x + 2)(x + y)
因数分解の応用問題
最後に、因数分解を使った応用問題について見ていきましょう。
因数分解は、方程式を解く以外にも、様々な数学の問題で活用されます。計算の工夫や証明問題など、幅広い応用があるのです。
【計算の工夫】
99² を計算する
99² = (100 – 1)² = 10000 – 200 + 1 = 9801
または
99 × 99 = 99 × (100 – 1) = 9900 – 99 = 9801
【約分への応用】
(x² – 4)/(x + 2) を簡単にする
= (x + 2)(x – 2)/(x + 2)
= x – 2 (x ≠ -2)
| 応用分野 | 使い方 | 具体例 |
|---|---|---|
| 方程式 | 因数分解して解を求める | x² – 5x + 6 = 0 |
| 約分 | 分子と分母を因数分解 | (x² – 1)/(x – 1) |
| 計算の工夫 | 因数分解で計算を簡単に | 101 × 99 |
| 証明問題 | 因数分解で性質を示す | n² – n は偶数 |
【証明への応用】
n² – n が偶数であることを証明する
n² – n = n(n – 1)
nとn-1は連続する整数だから、どちらか一方は偶数
よって、n(n – 1) は偶数
因数分解をマスターすることで、単に式を変形するだけでなく、数の性質を理解したり、複雑な計算を工夫したりすることができるようになります。様々な問題に取り組んで、因数分解の威力を実感しましょう。
まとめ
因数分解とは、1つの多項式を複数の因数の積の形に変形することです。展開とは逆の操作であり、和の形を積の形に変えることで、方程式を解いたり計算を簡単にしたりすることができます。
因数分解の基本的な方法には、共通因数をくくり出す方法、乗法公式を逆に使う方法、そしてたすきがけがあります。共通因数のくくり出しは最も基本的で、まず確認すべき方法です。乗法公式を使った因数分解では、平方の公式や平方の差の公式を覚えておくことが重要でしょう。
展開と因数分解は互いに逆の操作であり、展開は積を和に、因数分解は和を積に変換します。どちらを使うかは問題の指示や目的によって決まり、方程式を解く場合は因数分解、式を1つにまとめる場合は展開を使います。
因数分解の最も重要な応用は、2次方程式を解くことです。因数分解して積が0の形にすることで、各因数が0になる条件から解を求めることができます。また、約分や計算の工夫、証明問題など、幅広い場面で因数分解が活用されるのです。
因数分解は中学数学から高校数学まで続く重要な技術です。基本的な公式とパターンをしっかりマスターし、様々な問題を通じて使い方を身につけていきましょう。