クーロンの法則は電荷間に働く力を記述しますが、電場という概念を使うとより深く理解できます。
電場とは、空間の各点における電荷が受ける力の様子を表す物理量であり、電気力線で視覚化できるのです。
さらに、電場に関連する概念として電位(電気的ポテンシャル)があり、これは電荷を移動させるのに必要な仕事と結びついています。
本記事では、クーロンの法則と電場の関係、点電荷による電場の公式、電気力線の性質、電位の定義、電場と電位の関係などを詳しく解説いたしますので、ぜひ参考にしてくださいませ。
電場の定義と意味
それではまず電場の基本概念について解説していきます。
電場は、電荷の周りに形成される場(field)です。
電場とは何か
電場(electric field)は、空間の各点において単位正電荷が受ける力として定義されます。
記号E(ベクトル)で表され、単位はN/C(ニュートン毎クーロン)またはV/m(ボルト毎メートル)です。
電場の定義
E = F / q₀
E:電場(N/C)
F:試験電荷q₀が受ける力(N)
q₀:試験電荷(十分小さな正電荷)
試験電荷は、電場を乱さない程度に小さいと仮定されます。
電場の物理的意味
電場は、その場所に電荷を置いたとき、どのような力を受けるかを示す情報を持っています。
電場が分かれば、任意の電荷qが受ける力は F = qE で計算できるでしょう。
電荷qが電場Eから受ける力
F = qE
・qが正なら力は電場と同じ向き
・qが負なら力は電場と逆向き
・力の大きさは |F| = |q|E
この関係により、電場を知れば任意の電荷の運動を予測できます。
場の概念の重要性
電場という概念を導入することで、離れた電荷間の相互作用を「場を介した作用」として理解できます。
電荷は周囲に電場を作り、その電場が他の電荷に力を及ぼすという考え方です。
電場の概念は、電磁気学だけでなく現代物理学全体の基礎となっています。重力場、磁場なども同様の「場」の概念で記述され、場の量子論へと発展していきます。
点電荷による電場
続いては点電荷が作る電場について確認していきましょう。
クーロンの法則から、電場の公式を導くことができます。
点電荷による電場の公式
電荷Qから距離rの位置における電場の大きさは、クーロンの法則から導かれます。
試験電荷q₀が受ける力をq₀で割ることで電場が得られるのです。
点電荷Qによる電場
E = kQ / r²
E:電場の大きさ(N/C)
k:クーロン定数 ≈ 9.0 × 10⁹ N・m²/C²
Q:電荷(C)
r:電荷からの距離(m)
この公式も距離の2乗に反比例する逆2乗則に従います。
電場の向き
電場はベクトル量なので、大きさだけでなく向きも重要です。
正電荷が作る電場と負電荷が作る電場では、向きが逆になります。
正電荷(Q > 0)が作る電場
・電荷から放射状に外向き
・正電荷を置くと反発する方向
負電荷(Q < 0)が作る電場
・電荷に向かって放射状に内向き
・正電荷を置くと引き寄せられる方向
電場の向きは、常に正電荷が力を受ける向きとして定義されます。
クーロンの法則との関係
クーロンの法則と電場の関係を明確にしましょう。
電荷Qが距離rに作る電場に、電荷qを置いたときの力がクーロン力です。
電荷Qが作る電場 E = kQ / r²
この場所に電荷qを置くと
F = qE = q × (kQ / r²) = kQq / r²
これがクーロンの法則そのもの
つまり、電場はクーロンの法則を一般化した概念と言えます。
電気力線による電場の可視化
続いては電気力線について確認していきましょう。
電場を視覚的に表現する方法として、電気力線が用いられます。
電気力線の定義
電気力線(electric field line)は、電場の向きを示す仮想的な線です。
各点での電場の向きが、その点における電気力線の接線方向と一致するように描かれます。
電気力線の性質
・正電荷から出発し、負電荷で終わる
・途中で枝分かれしたり交わったりしない
・密度が高い場所ほど電場が強い
・電場の向きは力線の接線方向
電気力線を描くことで、複雑な電場の様子を直感的に理解できます。
点電荷による電気力線
点電荷が作る電気力線のパターンを見てみましょう。
正電荷と負電荷では、力線の向きが逆になります。
正の点電荷
・電荷から放射状に外向きの力線
・無限遠方まで伸びる
・球対称な分布
負の点電荷
・電荷に向かって放射状に内向きの力線
・無限遠方から来る
・球対称な分布
電気力線の本数は、電荷の大きさに比例するように描きます。
複数の電荷による電気力線
2つ以上の電荷がある場合、電気力線のパターンはより複雑になります。
重ね合わせの原理により、各点の電場は各電荷が作る電場のベクトル和です。
正電荷と負電荷のペア(電気双極子)
・正電荷から出た力線が負電荷に入る
・近くでは力線が密、遠くでは疎
2つの正電荷
・両方から外向きの力線
・中間では力線が避け合う
電気力線の様子から、電場の強さと向きを読み取ることができます。
電位の定義
続いては電位という概念について確認していきましょう。
電位は、電場に関連するスカラー量です。
電位とは何か
電位(electric potential)は、単位正電荷を無限遠から その点まで運ぶのに必要な仕事として定義されます。
記号はV(またはφ)で、単位はボルト(V)です。
電位の定義
V = W / q₀
V:電位(V、ボルト)
W:無限遠から電荷q₀を運ぶのに必要な仕事(J)
q₀:試験電荷(C)
電位はスカラー量なので、向きを持たず大きさのみで表されます。
点電荷による電位
点電荷Qから距離rの位置における電位は、次の公式で与えられます。
電場の公式を積分することで導かれるでしょう。
点電荷Qによる電位
V = kQ / r
V:電位(V)
k:クーロン定数
Q:電荷(C)
r:電荷からの距離(m)
電位は距離rに反比例し、電場(r²に反比例)よりも緩やかに減少します。
電位差(電圧)
2点間の電位の差を電位差または電圧と呼びます。
電圧は、電荷を一方の点からもう一方の点へ移動させるのに必要な仕事に関係します。
電位差(電圧)
ΔV = V₂ – V₁
単位正電荷を点1から点2へ移動させる仕事
W = qΔV
q:移動させる電荷(C)
日常で使う「電圧」は、この電位差のことです。
電位は絶対値よりも、2点間の差(電位差)が重要です。電位の基準点(通常は無限遠または接地点)を0Vと定めることで、各点の電位が決まります。
電場と電位の関係
続いては電場と電位の数学的関係について確認していきましょう。
電場は電位の空間的変化率として表されます。
電場は電位の勾配
電場は、電位の空間微分(勾配)に負号を付けたものとして定義されます。
1次元の場合、次のような関係があるでしょう。
1次元の場合
E = -dV/dx
E:電場の成分(V/m)
V:電位(V)
x:位置座標(m)
負号は、電場が電位の減少する向きを向くことを示す
電位が急激に変化する場所ほど、電場が強くなります。
等電位面と電気力線の関係
電位が等しい点を結んだ面を等電位面と呼びます。
電気力線と等電位面は、常に直交する関係にあるのです。
等電位面の性質
・電位が一定の面
・電気力線と直交する
・等電位面上を電荷が移動しても仕事は0
・等電位面が密な場所ほど電場が強い
点電荷の場合、等電位面は電荷を中心とする球面になります。
電位差と電場の関係
電場が一様な場合、電位差は電場の大きさと距離の積で表されます。
この関係は、平行板コンデンサなどで重要です。
一様電場での電位差
ΔV = E × d
ΔV:電位差(V)
E:電場の大きさ(V/m)
d:電場の向きに沿った距離(m)
変形すると E = ΔV / d
この式から、電場の単位がV/mで表されることが分かります。
| 物理量 | 記号 | 単位 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 電場 | E | N/C、V/m | ベクトル |
| 電位 | V | V(ボルト) | スカラー |
| 電位差(電圧) | ΔV | V(ボルト) | スカラー |
| 電荷 | q | C(クーロン) | スカラー |
| 静電気力 | F | N(ニュートン) | ベクトル |
電位エネルギーとポテンシャル
続いては電位エネルギーについて確認していきましょう。
電位に電荷を掛けることで、エネルギーが得られます。
静電ポテンシャルエネルギー
電場中に置かれた電荷は、位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)を持ちます。
これを静電ポテンシャルエネルギーまたは電位エネルギーと呼びます。
電位エネルギー
U = qV
U:電位エネルギー(J)
q:電荷(C)
V:その位置の電位(V)
電荷が正なら、正の電位の場所でエネルギーが高くなります。
2つの点電荷のポテンシャルエネルギー
2つの点電荷の系が持つ電位エネルギーは、次の式で表されます。
これをクーロンポテンシャルと呼びます。
2電荷間のポテンシャルエネルギー
U = k q₁q₂ / r
U:電位エネルギー(J)
q₁, q₂:電荷(C)
r:電荷間の距離(m)
同符号なら U > 0(斥力、エネルギー高い)
異符号なら U < 0(引力、エネルギー低い)
距離が無限大(r→∞)で、ポテンシャルエネルギーは0になります。
保存力としての静電気力
静電気力は保存力であり、仕事は経路によらず始点と終点のみで決まります。
このため、電位という概念を定義できるのです。
保存力の性質
・閉じた経路での仕事は0
・ポテンシャルエネルギーが定義できる
・力学的エネルギー保存則が成り立つ
重力も保存力であり、同様に重力ポテンシャルが定義されます。
まとめ
電場は空間の各点で単位正電荷が受ける力として定義され、点電荷Qによる電場は E = kQ/r² で表されます。
電場はベクトル量であり、正電荷から外向き、負電荷に内向きの向きを持ち、電気力線によって視覚化できるでしょう。
電気力線は正電荷から出発して負電荷で終わり、途中で交わることはなく、力線の密度が電場の強さを表します。
電位は単位正電荷を無限遠から運ぶのに必要な仕事として定義され、点電荷による電位は V = kQ/r で表されるスカラー量です。
電場と電位の関係は E = -dV/dx で表され、電場は電位の勾配(空間微分)の負号を付けたものとなっています。
等電位面と電気力線は常に直交し、電位差と電場の関係は一様電場の場合 ΔV = Ed で表されるのです。
電荷qが電位Vの位置に持つ電位エネルギーは U = qV であり、2つの点電荷間のポテンシャルエネルギーはクーロンポテンシャル U = kq₁q₂/r で与えられます。