「考えております」は、ビジネスメールや会話で頻繁に使われる表現です。
丁寧な印象を与える一方で、相手や場面によっては尊敬語との取り違え、過度なへりくだり、曖昧な表現として受け取られることもあります。
適切な敬語を選べば、自分の意向を礼儀正しく伝えながら、仕事への前向きな姿勢も示せるでしょう。
ここでは「考えております」の正しい敬語分類、相手別の言い換え、ビジネスメールの例文、気を付けたいポイントをわかりやすく解説します。
「考えております」の敬語の一覧表

それではまず「考えております」の敬語の位置付けと、場面に応じた使い分けについて解説していきます。
「考えております」の敬語分類
「考えております」は、動詞の「考える」に丁寧語の「おります」が付いた表現です。
「おります」は「いる」の謙譲語として扱われる場合もありますが、「考えております」全体は自分側の継続した考えや意向を丁寧に表す語として使われます。
そのため、上司、取引先、顧客に対して、自分や自社の考えを伝える際に自然な表現です。
相手が考えていることを述べる場合には、「考えております」は使いません。
相手の行為には、尊敬語である「お考えです」「お考えになっています」などを選ぶ必要があります。
| 分類 | 基本表現 | 主な使用対象 | 使用例 |
|---|---|---|---|
| 尊敬語 | お考えです | 上司、顧客、取引先 | 部長はどのようにお考えですか。 |
| 尊敬語 | お考えになっています | 相手の継続した意向 | 貴社では新規導入をお考えになっていますか。 |
| 謙譲語 | 考えております | 自分、自社、自分側 | 弊社でも改善策を考えております。 |
| 丁寧語 | 考えています | 社内、比較的近い関係 | 次回の企画を考えています。 |
| 丁重な表現 | 検討しております | 判断前の案件 | 現在、導入を検討しております。 |
| 丁重な表現 | 予定しております | 決定に近い計画 | 来月の実施を予定しております。 |
「考えております」は謙譲語に近い丁寧な表現ですが、相手を直接高める尊敬語ではありません。
この違いを押さえておくと、メールの宛先を問わず安定した敬語表現が使えるようになります。
相手別の使い方の一覧
敬語は単語だけでなく、誰の考えを述べるのかによって選びます。
自分の考えを丁寧に示すときは「考えております」、相手の考えを尋ねるときは「お考えですか」が基本です。
| 相手や立場 | 伝えたい内容 | 適した表現 | 避けたい表現 |
|---|---|---|---|
| 社外の顧客 | 自社の対応方針 | 対応策を考えております。 | 対応策を考えていらっしゃいます。 |
| 取引先 | 相手の意向確認 | どのようにお考えでしょうか。 | どのように考えておりますか。 |
| 上司 | 上司の判断確認 | 部長はどのようにお考えですか。 | 部長は考えておりますか。 |
| 社内の同僚 | 自分の案の共有 | この案がよいと考えています。 | この案がよいと考えております。 |
| 自社を代表する場面 | 会社の方針 | 弊社では導入を考えております。 | 弊社では導入をお考えです。 |
| 複数の関係者 | 決定前の見解 | 現在、慎重に検討しております。 | すでに決定と考えております。 |
社内の気軽な連絡では「考えています」でも問題ありません。
ただし、役職者への報告や正式な議事録では、「考えております」や「検討しております」にすると文全体が整います。
最初に覚えたい結論
最も重要なのは、「考えております」は自分側に使い、「お考えです」は相手側に使うという点です。
敬語を選ぶときは、文章の主語を省略せず頭の中で確認すると、誤用を防ぎやすくなります。
自分や自社の意向には「考えております」を使います。
相手や相手企業の意向には「お考えです」「お考えになっています」を使います。
判断がまだ途中なら「検討しております」、実施が決まっているなら「予定しております」が適切です。
敬語の正しさは、相手を立てることよりも、主語に合った言葉を選ぶことから始まります。
「考えております」の基本的な使い方
続いては「考えております」を使う場面と、自然に伝わる文の作り方を確認していきます。
自分の意見を伝える場面
「考えております」は、自分の意見や今後の方針を控えめに伝えたいときに役立ちます。
断定が強くなりすぎないため、提案や相談を含むメールにもなじむ表現です。
たとえば「この方法が最適です」と言い切るより、「この方法が有効ではないかと考えております」とすると、相手が意見を出しやすくなります。
ただし、意思決定済みの内容に使うと、曖昧な印象になる場合があります。
提案の例
現在の課題を踏まえ、まずは小規模な試験運用から始めることが有効ではないかと考えております。
ご意見を伺ったうえで、詳細な進め方を整理できれば幸いです。
意見を述べるだけで終わらせず、判断の根拠や次の行動も添えると、説得力のあるビジネスメールになります。
自社の方針を伝える場面
会社としての考えやチームの方針を示すときにも、「考えております」は便利です。
「弊社では、品質管理を最優先に進めたいと考えております」のように使えば、押し付けがましくならずに基本姿勢を伝えられます。
一方で、契約内容や納期など、相手が明確な回答を必要としている事項では、意向だけを伝える表現では不十分です。
その場合は「対応いたします」「納品いたします」「実施予定です」といった具体的な言葉を選びましょう。
「考えております」は方針や意向に適した表現であり、確約の代わりにはなりません。
継続して検討している場面
「考えております」には、以前からその件について思案し続けているニュアンスがあります。
単にその場で思い付いた意見ではなく、一定の検討を経た考えとして伝えたいときに効果的です。
たとえば「以前より改善方法を考えております」と書けば、課題への意識が継続していることを示せます。
しかし、実際には検討していないのに慣用句として使うと、形式的な印象を与えるかもしれません。
検討の段階、期限、担当者を必要に応じて明記することが大切です。
ビジネスメールでの例文
続いてはビジネスメールにおける「考えております」の例文と、文脈に合わせた調整方法を確認していきます。
提案メールの例文
顧客や取引先に提案を送る場合は、相手の事情を尊重する一文を加えると丁寧です。
件名 業務改善に関するご提案
現在の運用状況を踏まえ、入力作業を一部自動化する方法が有効ではないかと考えております。
ご負担を抑えながら導入できるよう、複数の案を用意いたしました。
ご都合のよい際に、ご意見をお聞かせいただけますと幸いです。
「有効です」と断言するよりも、「有効ではないかと考えております」とすることで、提案の余地を残せます。
提案メールでは、相手が判断しやすい材料を添えることが、敬語以上に重要です。
お詫びと改善策を伝える例文
不具合や遅延が発生した場合は、謝罪の後に具体的な改善策を述べます。
「考えております」だけでは対応が未確定に見えるため、実施事項と分けて書くのがよいでしょう。
このたびはご不便をおかけし、誠に申し訳ございません。
再発防止として、確認工程を追加する対応を進めております。
あわせて、報告手順の見直しも考えております。
詳細がまとまり次第、改めてご報告いたします。
すでに着手している対応には「進めております」、今後検討する事項には「考えております」を使い分けます。
この区別により、現状と今後の予定が読み手に伝わりやすくなります。
依頼や相談をする例文
相手に協力を求めるときは、自分の考えを先に示してから、相手の意向を尋ねる流れが自然です。
一方的に決めた印象を避け、協議したい姿勢を伝えられます。
「弊社では来月の開催を考えておりますが、ご都合はいかがでしょうか」と書けば、予定を共有しつつ返答を求められます。
相手の考えを尋ねる箇所では、「お考え」「ご意向」「ご都合」を使うことがポイントです。
自分側の文章では「考えております」を使います。
相手に質問する文章では「どのようにお考えでしょうか」「ご意向をお聞かせください」と表現します。
一つのメール内でも、主語に応じて敬語を切り替える必要があります。
尊敬語・謙譲語・丁寧語の言い換え表現
続いては「考えております」に近い言い換え表現と、それぞれに適した状況を確認していきます。
相手に使う尊敬語
相手の考えを尋ねるときは、「お考えですか」が最も標準的です。
よりやわらかく尋ねるなら、「どのようにお考えでしょうか」「ご意向をお聞かせいただけますでしょうか」と表現できます。
「考えていらっしゃいますか」も文法上は誤りではありませんが、やや長く、くどく聞こえることがあります。
迷ったときは、簡潔で自然な「お考えです」を選ぶと安心です。
| 伝えたいこと | おすすめの表現 | 印象 |
|---|---|---|
| 相手の意見を尋ねる | どのようにお考えでしょうか。 | 丁寧で自然 |
| 相手の方針を尋ねる | 今後のご方針をお聞かせください。 | 具体的で明確 |
| 相手の判断を待つ | ご検討いただけますと幸いです。 | 控えめな依頼 |
| 相手の案を確認する | ご提案内容についてお考えを伺えますか。 | 会話でも使いやすい |
自分に使う謙譲表現
自分の意向をより改まって表すなら、「考えております」のほかに「検討しております」「存じます」を使えます。
ただし、「存じます」は「思う」の謙譲語であり、予測や認識を表す場合によく用いられます。
「有効であると存じます」は意見を丁重に述べる表現です。
実務的な選択肢を比較している段階なら、「検討しております」のほうが適しています。
思考の内容ではなく、検討の進行状況に合わせて言い換えを選ぶことが重要です。
丁寧語にとどめる場面
社内のチャット、親しい同僚との連絡、会議中の発言では、「考えています」が読みやすく親しみやすい表現になります。
常に最上級の敬語を使う必要はありません。
距離の近い相手に「考えております」を繰り返すと、かえって壁を感じさせる場合もあります。
組織の文化、相手との関係、連絡手段に応じて、適度な丁寧さを選びましょう。
「考えております」で注意したい敬語表現
続いては誤用になりやすい表現と、相手に誤解なく伝えるための注意点を確認していきます。
相手に「考えております」を使う誤り
「部長はどのように考えておりますか」は、上司の動作に自分側の表現を使っているため不自然です。
正しくは「部長はどのようにお考えですか」となります。
「おります」は自分をへりくだらせる働きがあるため、相手の行動に付けると敬意の方向が逆になってしまいます。
誤った例 お客様はどのように考えておりますか。
適切な例 お客様はどのようにお考えでしょうか。
主語が相手なら尊敬語、自分側なら謙譲語または丁寧語を選びます。
二重敬語や不自然な過剰表現
「お考えになられております」は、敬語を重ねすぎた印象になりやすい表現です。
「お考えです」または「お考えになっています」で十分に敬意を示せます。
また、「考えさせていただいております」も、相手から許可や恩恵を受ける場面でなければ過剰になりがちです。
丁寧さを高めるために言葉を足すより、自然な敬語を短く使うほうが伝わります。
曖昧な返答になるケース
納期、金額、可否などの回答が必要な場面では、「考えております」だけで返事を終えるべきではありません。
読み手は、実現するのか、いつ決まるのか、誰が対応するのかを知りたいからです。
「現在検討しております。九月十五日までに結論をご連絡いたします」のように、回答期限を添えましょう。
判断済みなら「承知しました」「対応いたします」と明確に伝えることが、信頼につながります。
丁寧な表現と明確な回答は別の要素です。
「考えております」の敬語のまとめ
「考えております」は、自分や自社の考え、方針、継続的な検討を丁寧に伝える表現です。
相手の意向を尋ねるときには、「お考えです」「お考えでしょうか」を使います。
また、検討中なら「検討しております」、実施が決まっているなら「予定しております」や「対応いたします」など、状況に合う言葉を選ぶことが大切です。
主語が誰かを確認し、敬語の方向を間違えないことが基本になります。
ビジネスメールでは、丁寧な表現に加え、理由、期限、次の対応を具体的に示しましょう。
相手が迷わず判断できる文章を意識すれば、「考えております」をより効果的に使えるはずです。